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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第1章 物語の始まり
7/33

1-(6) カラスに大変身!

 次の日、私は登校せず部屋に篭る事にした。もちろん、ヒロイン達を傍観するために。

 心苦しいが、これに関しては大和兄にも犠牲になってもらおう。3度の飯より、人の恋愛模様を見る方が私は好きなのだ。

 確か、このゲームのヒロインはかなりの美少女。しかも優しく頭もいい。

 もしヒロインのハッピーエンドが大和兄だったら、“妹”として私も仲良くしてもらおう。



 というより、私昨日結局ヒロインに会えなかったんだよね。私の足じゃ階の違うヒロインの教室に行くのに時間が掛かるし、ちょうど次の授業が移動教室だったらしくて。教室に誰もいなかったし。

 でも、今日ぬいぐるみを通して覗き見すれば、ヒロインと攻略対象の出会いイベントが見れるはずなのだ。私の記憶ではヒロインが初めて攻略対象に会うのは、入学3日目の今日なのだから。


 私は朝食を終え部屋に戻ると、私室のタペストリーをまくって、その奥にある扉から秘密部屋に入る。

 部屋の中は、中央に一人がけのソファーと丸テーブルが設置してあり、ソファーを囲むように巨大な魔方陣が刻まれている。ここが主に、私がぬいぐるみにコンタクトをとる部屋だ。


 私はソファーに深く腰掛けるとオットマンの上に足を乗せる。背もたれに体重を預ければ、準備完了だ。

 コンタクトを取るためには、呪文(スペル)(とな)えて魔方陣を発動させる必要がある。熟練者になれば無詠唱もできるが、私はよっぽど音を立てたくないときや急ぎで無い限り、詠唱している。ぬいぐるみに感覚を同調させるときは、(パス)を繋ぐ必要があり、この道を通って自身の感覚を合わせていくのだ。

 ちなみに呪文(スペル)だが、各個人が好きに作れる。いわばイメージの為のものなので、本人がイメージできれば何でも良いのだ。私は、主に英語で、たまに他の国の言葉を使う。

 しばし考え込んで(パス)を繋ぐぬいぐるみを決める。

 そして、下の魔法陣に魔力を流し、呟くように口にした。


 「《I wish to my soul. Our Kin, and to my servant, Derive My Heart. 》」


 変化は急激に現れた。床に描かれた魔方陣が、眩い光を放ちながら発動する。自分の力が引っ張られるのを感じつつ、私は抗わずに目を閉じた。




 ◆ ◇ ◆ ◇



 目を開けると、辺りは薄暗かった。ロッカーの中のぬいぐるみへ(パス)を繋げたはずだから、ここはロッカーだ。首をめぐらすと真向かいに鏡がある。ロッカーの扉に付いているものだろう。首を伸ばしてしげしげと眺めると、鏡の向こうには同じ動作をするカラスのぬいぐるみ。漆黒のシャープなフォルムが、私のお気に入りだ。まん丸の瞳が可愛い。

 しかしだ、カラスのぬいぐるみが空を飛ぶのはなんかおかしい。そんなことしたら、傍観を決め込む以前に注目を浴びてしまう。ふむ、とカラス姿でうなった後、外に聞こえないよう小さな声で詠唱する。


 「《Image, crow.》」


 小さな光とともに、ぬいぐるみの胸元に小規模な魔方陣が浮かぶ。それは一瞬で消え去り、後には完璧なカラスの姿になったぬいぐるみ(わたし)が残った。

 鏡で全身を確認して異常が無いと分かると、私はゆっくりロッカーから顔を出して辺りをうかがう。誰もいないことを上下左右見回して、音を立てないように床に下りた。

 その場で数回羽ばたいて勢いよく床を蹴ると、翼が空気を掴んで体が浮く。状態を確かめるように何回か円を描いた後、ロッカーを閉めて窓の外に飛び出した。



 

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