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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第1章 物語の始まり
5/33

1-(4) 夕食は楽しく

大和兄の「お話」の前。

腹が減っては戦はできぬと言う事でご飯の話です。

 大和兄が生徒会の仕事を終わらせたのは、6時過ぎのことだった。

 あらかじめ私が呼んでおいたリムジンに乗る。大和兄も今日は私の家で夕食だ。


 私の両親は私が8歳のときに亡くなっていて、その時から大和兄はよく私と一緒にご飯を食べている。当時の私は自分もその事故で右目の視力をなくしていたりして、結構切羽詰っていたのだ。だから普段は人とある程度距離をとろうとする大和兄も、私を心配して一緒にいてくれたのだろう。

 私にも大和兄にも誤算だったのは、そのサイクルが周りの人―――主に大和兄の両親―――にとって当たり前になりすぎてしまったがために、なかなか一緒の夕食を止められないことだ。

 うちの屋敷は大和兄の家(こっちもお屋敷)とお隣で、庭の塀の隙間から互いの家の庭に出入り自由なのだが、大和兄はよくこの隙間から我が家にやってきた。あの事故の後、大和兄の両親が毎日そこから大和兄を送り出していたりもしていた。


 私ももう高校生だし夕食ぐらい一人で大丈夫なのだが、おじさんおばさん―――大和兄の両親―――は、大きな屋敷に一人きりの私を本当によく気にかけてくれて、今も平日2日と土曜・日曜の週に4日ほどあの隙間から大和兄を送ってよこすのだ。

 ……まぁ、私もたまに感傷的になってしまった日とかに大和兄が側にいてくれるのはとても助かるので、2人の気持ちは嬉しいのだが。



 と、私がぐるぐる考え込んでいるうちに、車は我が家に着いたようだ。細かい彫刻の施された門をくぐって、途中にある噴水を通り過ぎ、洋館の前に止まる。

 大和兄の手を借りて車を降りると、玄関の扉が開いて一人のメイドが出てきた。足首まであるクラシカルなお仕着せがよく似合う彼女は、私のお世話係の夢路。この屋敷の使用人の中では唯一人の“人間”だ。


 「お帰りなさいませ、瑠那お嬢様」


 「ただいま夢路」


 夢路は私の返事に美しく礼をすると、大和兄に向かって丁寧に頭を下げた。


 「いらっしゃいませ、大和様」


 「お邪魔します、夢路さん」


 一通り挨拶が終わると、部屋に戻って私服に着替える。大和兄も別室で着替えているはずだ。あまりにも大和兄がこの家に入り浸るものだから、この家には大和兄の私服も常備されている。

 年末の大掃除のときに、大和兄が昔からお泊りのときに使っていた部屋を正式に大和兄の部屋として整えた。先ほど夢路に案内を頼んでおいたので、部屋に着いたら驚くだろう。

 まったく残念だ。ついていけば、大和兄の驚いた顔が見られたかもしれないのに。


 ぶつぶつと不満を口にしつつ服を着替えて食堂に行く。

 大和兄はすでに席についていた。


 「待たせた?」


 「いいや、全然」


 大きなテーブルに大和兄と向き合うように座り「いただきます」と声をそろえる。


 「そういえばさ、部屋、驚いたよ」


 「迷惑だった?よく遊びに来ているから、今まで作らなかった方がおかしかったんだけど……」


 今更だったか。

 ちょっと俯いて言うと、大和兄は笑顔で首を振った。


 「いや、嬉しかったよ。ありがとう」


 大和兄のお礼に、笑顔で頷いてから私たちは食事を始めた。

 いつもより少し明るい夕食だったと思う。

誤字・脱字・感想お待ちしております。


次回は、大和兄の「お話」。しかも、大和兄視点でお送りします。

まぁ、たいした話じゃないですよ?シスコンの過保護なお話です。


*明日の更新は難しいかもしれません。頑張りますけれども。期待しないで待っててください。

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