もるもっと。
「ねーねー、ねーねー、ユーキは髪染めたりしないの?」
「え、えっと、あの、校則で、ダメってあるから」
えー、そんなの誰も守ってないよー、とか笑うクラスメイト。気持ちは分からないでもない。
アタシもコレがお父さんじゃなきゃ、絶対 モルモットにしてる自信がある。
「やっぱさ、染めるなら金だよねー。このふわふわっ毛で金髪とか、貴族っぽくね?」
わかるー!そんな大合唱。
なんか子役でいたよね、いたいた!とか盛り上がるのを長めながら、あー、たしかに。
アタシも思わず納得する。
でもこれお父さんなんデスガ。
…逆にありか?
一瞬そんな事を考えたけど、貴族の姉とか、アタシのキャラじゃなさすぎる。
「か、カナさぁぁん」
半泣きでこっちをみつめてくるユーキに、諦めろ?と笑顔を向けた。
やーぁー、と埋もれていくユーキ。
がんばれアタシのお父さん。
それにしても、さっきの涙で潤んだ瞳は、成る程、たしかにちょっと、ヤバイくらいに凶悪だ。
チャイムがなって、ちぇー、と解散する女子の群れ。
もみくちゃにされてくらくら揺れるユーキの頭を眺めながら。
あぁ、でもこれはこれで。
楽しい学園生活とか、はじまるかもなー、なんてつらつらとを考えていた。