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愛を盗む者、愛を知らぬ者  作者: 花の香り


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第1話:闇に生きる少女


夜の街は静かだった。

かすかに風が吹き、路地に散らばった木の葉が音を立てる。

セラは影のように歩き、貴族の屋敷から巻き上げた金で買い占めた薬草や高価な物を抱えていた。

貧しい村の人々に届けるためだ。盗むこと、それが彼女の生きる術だった。


「ふん……また夜更けか」

小さな息を吐き、倉庫の影に身を潜める。

だが、今夜は複数の敵が待ち構えていた。

刃が光り、戦いが始まる。セラは忍びのように動き、次々と敵をかわし、刺されかけたものから倉庫にある物を回収する。

力強くも冷静。だが心の奥では、復讐の炎が静かに燃えていた。


やがて戦いが終わると、近くの村へと足を運ぶ。

小さな家の前で少年が駆け寄ってきた。

「お姉ちゃん、どうしたの?」


セラは軽く肩をすくめ、淡々と言った。

「盗まれたものを取り返しただけさ」


少年は心配そうに見上げる。

「お姉ちゃん、街を出るの?」


「ここにいても迷惑をかけるだけだからな」

少年は俯き、少し悲しそうに言う。

「でもお姉ちゃん、怪我してる」


「大丈夫だ」

セラは淡々と答え、影のように立ち去る。

少年は最後に呼びかけた。

「お姉ちゃん、いつ会えるの!?」


セラは振り返らず、心の中で答える。

『お前が強くなってからだな』

「それと、人をホイホイ信じるな。俺みたいになるな」

少年は笑い、そして少し照れくさそうに言った。

「もっとかわいい女の子、見つけろよ」


セラは闇夜に紛れ、忍びのように去っていった。


しかし、倉庫では敵が目を覚まし、物がないことに気づく。

「どこだ……!」

慌てて家畜用の馬に乗り、追手が向かう。


セラは中央の国へ向かっていた。追われることを覚悟の上で、疲労と出血を押し殺し、走る。

だが誤算だった。体力が限界に近づき、意識が揺らぐ。


背後に気配を感じ、構える。

馬車のようなものが止まり、数人が降りてくる。

囲まれた──逃げ場はない。


必死に戦うが、敵の勢力は先ほどより強い。

刃が飛び、蹴りが入り、セラは倒れる。

兵士が刀を向けた瞬間、セラは意識を手放した。



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