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その5:補佐官様の説教

年分け回想の続きからです。

 もしかして、殿下はカロン様がお嫌いなの?

 と悩んでいる内にわたしの番。


 ふと『3年生は応用』の言葉を思い出して、殿下の出した花みたいなやつなら真似できそうと張り切った結果・・・。


 会場内を覆う赤い閃光。

 綺麗に割れた魔晶石。

 溢れた出た魔力が龍のごとく舞うこれは。


「地獄絵図?」


 これはこれで応用魔法っぽいのでは?とのんきに構えていたら、教員席から師匠の笑い声が聞こえてきて、わたしは嬉しくなってしまった。




「ねえ君!ちゃんと反省してるの!?」


 まぁ、結果的に今こうして怒られているわけなんだけれども・・・。


「神官長補佐官様すみません!反省はしてますがお説教は聞いてません」

「あぁもう本当、無駄に素直なんだよな~」


 わたしが魔晶石を割った関係で会場は一時閉鎖。

 光が収まる頃には師匠がこっそり直してくれてたけど、教会的には駄目だったみたい。

 なので、こうして無事に別室送りになりました。


 結婚前の令嬢なのに床に正座で、眼前に立ってる神官様と2人きりとはこれ如何に??

 応接室だからソファーも机もあるのに。

 でも反省してる感は出る?

 でもでも知り合いといえども男性と2人きりはちょっと・・・。

 扉は開けてあるけど。


 頭を抱えるルカさんを見上げつつ、早く会話を切り上げたいので声を掛ける。

「でもほら、魔晶石は師匠が直してくれましたし。年分けは無事?に、終わった?じゃないですか」

「正確には()()()()()、な」

「万事解決!教会の沽券?とかもたぶん無事ですよ!」

「結果論で誤魔化そうとしない」

「わたし常識が無いから多めに見て下さい!懺悔します!!」

「却下。君、年々師匠の悪い所が似て来てるよね」

 師匠に似ている!?

「本当ですか!」

「喜ばない!!」

「何処が似てますか!?」


「顔面の良さと力でなんでもねじ伏せられると思ってる所と、なにより反省の色がみられない所だよ」


 大きな舌打ちと共に、凄く嫌そうに顔を背けなが面倒くさそうに吐き出された言葉。

 これ以上怒らせないように内心で感動しつつ、今回のお説教は短く済みそうで一安心。

 ルカさんは怒ってる間は基本目を逸らさず淡々と叱り続けてくるから厄介なのです。


 聖魔法の中でも防御系特化。

 それも師匠と似て魔力膨大な上に器用だから、翡翠色の瞳に魔力が宿ってる間は魔法防御が上がるだけじゃなくて、反射までしてきて本当面倒。


 とりあえず両手を胸の前に組んで、必殺。


「『ごめんなさい』」

 師匠直伝⭐︎上目遣いで首を傾げるポーズ。


「はぁ~。本当、厄介な事この上ない。なんで今更学院なんかに入学させるかな~」

「師匠の推薦で王様に言われたから?」


 王様の依頼と報酬の件が無かったら、わたしだって同意見。

 師匠と2人で居られる時間が削れるから、学校に通いたいとか思ったことも無かった。

 しかもここは寮生活必須だから、拾われてから初めての師匠離れ。

 カロン様とお友達になっていなかったら、明日にも心が萎れていたかも。


 同じ学院内に師匠が居ると分かったから今はご機嫌だけど!


 それにしても、ルカさんは補佐官の職に就いてからますます頭が固くなった。

 昔からなにかと迷惑かけまくりな自覚はあるけれども、ここ数年は特に口うるさい。


「ちなみに今回、俺が派遣された理由はなんだと思う」

「さぁ?なんでです??」

 やっと椅子に腰掛けたルカさんが指先で向かいの椅子を差す。

 これは説教終わりで座れの合図。


「君が何かやらかさないか見張る為だよ」

「やらかしませんよ?」

「魔晶石」

「お世話になります!」

「あと、さっきの謝罪も駄目」

「あれは師匠直伝です」

「クソ質が悪ぃ」

「ルカさんはお口が悪い」


 根は優しくてちょろい人なのに、元々孤児だったからか言動がたまに粗野。

 わたし的には取り繕った姿の方がむず痒いから丁度いいけど。


「まあ、諸々制御できるように頑張ってみたら?せっかく学生になるわけだし」

「師匠より教えるのが上手い人って居るんですかね?」

「あれは教えるのは下手な部類の天才型だから、他人と比べるのはどうかと思うぞ。君の連れてた婆さんですら、あれよりは上手いだろ」

「おばばは実践を積めば馬鹿でもそれなりになるって言ってましたよ」

「教育方針が似たり寄ったりだな」

「資料がある分、師匠の方が分かりやすかったかも?」


 そうしてしばらく雑談をしていると、扉の方から軽やかなノックの音が響きました。


「お話し中の所申し訳ありません。シルヴィアさんをお茶のお誘いに来たのですが、用件はお済でしょうか?」

「カロン様!終わってます!!」

「サクレット伯爵令嬢でしたか。謝罪はもう頂きましたので、席を外して頂いて構いませんよ」


 いつ聞いても、ルカさんの外向きの喋り方と表情にぞわぞわする。

 温厚そうな外見的には合ってるのかもしれないけど、普段との落差が酷い。

 にこにこの笑顔が違和感過ぎる。

 眉間の皺は標準装備してて欲しい。


「廊下まで面白そうな掛け合いが聞こえてきましてよ。お2人は仲がよろしいのかしら?」

「ルカさんはわたしの昔からの知人で、保護監督責任者その3、でしたっけ?」

「不本意ながら」

「その3・・・」

「たしか王様だったか教会の命令って言ってましたよね」

「当時の神官長からの指示です。異教徒の見張り、人柄の確認が目的の」

「そうでしたか。不躾な質問にお答え頂きありがとうございます」


 何となく緊張感のあるやり取り。

 もしかして、これは答えたら駄目なやつだった??


「ところで補佐官様。胃薬をお探しなら当商店に良い物がございますので、よろしければご利用ください」

「ありがとうございます。これでも体は丈夫ですので、お心だけ頂戴します」

「ルカさん的には頭の上の方が心配だったり?」

「誰の所為だと思っての彼女の発言かを詰められたくなかったらちょっと黙ってようか」

 ちゃかそうとして悪化した感。

 ルカさんの背後に鬼が見えます!


「もしお時間がおありなようでしたら、この後のお茶会もご一緒にいかがですか?他にも友人が2名ほど同席いたしますが」

「あいにく用事が入っておりまして」

「それは残念。でしたらまたの機会にぜひ。私的に、色々とご相談したい事もございますの」

 カロン様がルカさんに相談・・・?

「そうだ!せっかくなのでわたしもルカさんに質問したい事が!」

「今?」

「あのですね、男性から見て女性の魅力ってなんですか??」

 作戦を遂行するにあたり意見を集めようと思った次第。


「質問の意図は?」

「異性にとっての魅力とは何か、で悩んでまして。胸囲以外でお答えください」


「一旦、持ち帰りで」

 お説教の時よりも深い皺が眉間に刻まれてしまった。

次回、庶民の噂話。


の前に裏話、腐れ縁。


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