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その4:年分け

 結果として嫌な予感は大当たり!


 無事2年生になりました。

 そう、2年生。

 いろいろあっての2年生。


 王子殿下とカロン様とクルーベルさんが3年生。

 ハルベルさんとわたしが2年生。

 聖女不明。


 いやまぁわたしが魔晶石(教会の宝物(貸出))を割っちゃって、年分け一時中断からの有力な貴族は軒並み3年生になった所為なんですけど。

 

 流石にただの火魔法で割れるのは想定外。

 師匠は爆笑。周囲はドン引き。


 ここから聖女ってどうやって見分けたら?

 魔力的にそれっぽい人は3人いたけど。

 みんな高位貴族だったので魔晶石での判断が出来なくて。


 これで3年生だったらいきなり躓いている感が拭えない・・・。

 一緒に学んでいる方が絶対に仲良くなるの早そうだし。

 そもそもわたしは殿下に避けられてるし。

 

 知り合いの神官長補佐官様に叱られつつ、とりあえずさっきまでの反省を兼ねて現実逃避するしか・・・。



 

 とりあえず、嫌な予感は横に置いといて、やり方の確認をしなければ。

 どうにかする方法があるかもしれないし!


「えっと、カロン様。年分けって、あの壇上に運ばれてきたガラス玉?を、使うんですか?」

「青年の義で使われる物と同じ魔晶石ですけれど、ご存じなくて?」

「あれ魔晶石なんですね!大きくて空っぽで分かりませんでした」


 魔晶石は魔物の体内に出来る石。

 大体は何かしらの魔力が残ってて、砕いて使用したり、魔法陣を使う際の燃料的な使われ方をする。

 手の平サイズの魔晶石があれば、売っても燃料にしても数年は困らない、そんな石。


 まあ、大きな魔晶石は魔獣自体の体格も大きくなりがちで、隠れてる事が多いから中々手に入らないんだけど。

 しかも苦労して取ってきても、中の魔力が空になると普通は灰の様に崩れちゃうから、小柄な魔獣からでるクズ石で十分というか。大きい物は物々交換にも不向きで不便な事も多い。


 で、目の前に運ばれて来たのは頭くらいの大きさで無色透明。

 魔力が何も感じられないのに形を保っていてとても歪。


 師匠の家にあるやつより大きいから、ぜひ近くで見てみたい!!仕組みが気になる!!

 これ絶対、師匠が関わってる!!女の直感!!


「10歳での義を行うために教会へ行ったことはおありかしら?魔法適正の確認は国民の義務。あのク・・・魔法伯様でも流石にそのあたりは心得ているかと思うのですけれど」

 なぜか無の表情で質問されました。

「あ~っと。その頃はまだ会って無くて、教会の偉い人に会った事はあるんですけど、現地に行った事はないので一度でいいから侵入できたらな~って思ってます!」

「侵入は駄目です」

「大広間のガラス細工と地下の宝物殿を生で見たいんです!」

「宝物殿は一般公開されていません」

「そんな〜・・・」

 こっそり覗いた時から、いつかは見たいと思っていたのに。


「なんで非公開の宝物殿の位置を知っているんですか?」


 ジトリとした視線を受けて、ちょっとだけ考えてから話しを逸らす。

「国民の義務って事は、国中の人が触りに来るんですか?」

 世の中には知らない方がいい事もあるのです。


「流石に全ての国民があれに触れる訳ではありません」

 空気を察し、ため息1つで乗ってくれるカノン様はとても()()()()

 とある知人だったら数時間は追及される。


「あの魔晶石は教会本部にしかない特別なもので、各地に点在する支部では原則、魔道具を用いて魔力を測ります。ただ魔道具ですと、発動できるか否かといった魔力の有無くらいしか分かりません。その点、今回使用する魔晶石では、魔力のより正確な量や性質などを可視化して知ることができるのです」

「便利ですね」

「あれは、勇者が竜を討伐した際に心臓から出てきたと言われております」

「子供向けのおとぎ話で最近読みました!!」

 勉強が役立ってる!!


「魔力に恵まれたこの国でも1つしか存在しない大変貴重な物で、年に1度の年分けの度に教会本部から貸し出されます。そのため護衛も兼ねた神官が数名で運び込むのです。本当に、とても大切な宝物ですので、壊したり無くした、なんて事があったら損失の一言では済まされないでしょうね」

 何処か遠い目をしながら話す様子から、過去に何か有った事が伺えて・・・。

 視線の先を追ってから、今度はわたしが空気を読みます。


 多分、師匠が割ったのかなって。

 

 修繕魔法も使える大天才なので、箝口令でも敷かれてしまえば無かったのと一緒。

 わたしの存在も無いのと同義だったから、師匠と居るとよくある現象です。

 権力って凄い。


「今回は特別に、貴賓席に神官長補佐官様もお越しになっているんですよ。右横の3階席のところです」

 そう言われて見上げると、見知った人と目が合いました。

 白地に金の刺繍が入った神官服を纏い、長い帽子まで被って正装している神官長補佐官のルカさん。

 師匠の友達で、使用人さん達の次によく会う人です。

 いつも嫌そうに構ってくれる、近所の苦労性のお兄さんこと、とある知人。


 実は師匠より先に呪った事があって。

 呪いを逆手に取られたので、慌てて依頼主の方の記憶を混濁させたのは良い思い出。

 あの時おばばと食べたパンの味は今でも忘れられません。


「年分け自体は主席の王子殿下が見本を示し、以降は庶民から貴族へ、成績の良かった方から順に魔晶石に魔力を流す形で行われます」

 わたしは庶民で、成績は悪いから、つまり真ん中辺り?


「名前を呼ばれますから、順番の心配はせずとも大丈夫ですよ」

 ただの公開処刑では?

 聖女の名前が分かれば良し?


「流し方が分からなかったら触れるだけでも大丈夫です。光の強さや色、石の内部に具現化された物を参考に、教員が後ほど学年を決めます」

「全員3年生とかもあるんですか?」

「おおよその定員は決まっているので、全員は無理かと。昨年からの生徒も引き続き居りますし」

「昨年の人も一緒に調べるんですか?」

「事前に昇級試験は済んでいるのと、クラス分けがあるので、必ずしも一緒かどうかは不明です」

「クラス?」

「庶民と貴族を分けていた名残りで、学力別で2クラスに分けると聞いています」


 つまり、学力に難があるわたしは殿下と別のクラスになる確率も高い。

 となるとやっぱりどうしても、学年だけでも同じであるのが理想。


「始まりますよ」

 

 扇によって誘導された視線の先で、殿下が魔晶石に手を翳す。

 赤い光と共に、内に咲き誇る大輪の炎の花。

 歓声と拍手の中で行われる演説。


 殿下は、一度もカロン様の方を見ようとしなかった。

次回、補佐官様の説教。

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