表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/7

その2:標的の確認

 講堂での入学式は滞りなく終わりを迎えようとしている。のだけれども問題が発生です。

 

 これは非常事態と、隣に座っているカロン様にこっそりと話しかける。

「カロン様、大変です」

「どうかなさいました?」

「顔の判別が出来ません」

 そう、わたし、あまりに他人と接してこなかった所為で顔が覚えられそうにない事に、今気が付きました。

「どうしましょう~」

 またしても泣きそうである。




 流石に式の最中に喋り続けるのは、ということで入学式の終了を待ち、次の支度までの小休止。

 今の内に作戦会議です!

 唯一のお友達。お茶会以降も何度かお会いして居るカロン様だけが頼りなの!!


「カロン様、思っていたより学生の人数が多過ぎます」

 新入生だけでも師匠のお屋敷の使用人さんより多くて、女子よりちょっとだけ男子の方が多い。

 何よりみんな同じ紺地に臙脂(えんじ)の差し色が上品な制服を纏っている。

 ちなみにお屋敷で働く人は10年でなんとか覚えた。友人になってくれる人は居なかった。

「みんな目と鼻と口があります」

「重症ですね。落ち着いて、髪の色や魔力での識別も難しいですか?」

 カロン様に言われ改めて周囲を見てみる。

 と、確かに髪色は結構違うし、魔力は大小もあって割と判別できそうな?

「あ~っと・・・王子様はなんとか・・・えと、檀上の金髪の、水色の瞳で、火属性が強め??」

 一度お会いしているし、新入生の挨拶をする関係で壇上に居たから・・・多分合っているはず!

「その通りです。まずは1人、確実に覚えて下さい」

 なるほど、1人ずつ確実に・・・。


「あれ?ネクタイ白い??」


 学年はネクタイの色で識別だから3学年分覚えたのに。

 1年生から、青・黄・赤。女子はリボン。白は無いはず。


「まだ学年分け前ですから、私たちのリボンも白いでしょ?」

「そういえば。入学式で貰うのかなって思って、忘れてました。」

「もしや・・・シルヴィアさん、学年分けの事は覚えてまして?」

「学年分け??」

 そもそも学校に通ったことが無いので取り合えず入学出来て良かったなくらいに思っていたけれど、どれくらいの期間学ぶのかもよく知らない・・・。

 3年生まであるってことは、3年くらい??もっと??


「この学院は『魔法をどれだけ使いこなせるか』で入る学年が変わるんです。1年生は発動の安定まで、2年生は威力向上と応用の初歩まで、3年生は応用の威力向上までと、ざっくり説明するとこんな感じですね」

「なるほど?」

「留年は各学年2回まで、卒業可能な学年は1年生の終わりと3年生の終わりです。最短1年間で卒業できるのが特徴なんですよ」

「1年間?短くないですか??」

「魔法を発動できるという箔を付けたいだけなら、1年生の履修内容だけで十分ですから」

「あぁ、魔法が使えると就職に有利ですもんね!」

 この国で働く際、魔法が使えるとそれだけで給金が上がるとメイドさんに教わりました。

 街の人みんなに魔力があるのに、変な話だなって思ったので覚えてます。

 魔力がある≠魔法が使える、ってもったいないな~って。


「卒業証明として1年生は銀のブローチ、3年生は魔石のブローチが貰えます。貴族の令嬢などは就職しない方も多いので、あえて1年生で卒業する方もいますね」

「せっかくなら全部習って行けばよろしいのに」

「魔力の差は生まれ付きの物だと言われていますから、生徒のやる気の差を鑑みた措置だそうですよ」

 カロン様も思うところがあるのか、頬に手を当てて溜め息をつく。

「本当は国民が皆、魔法を使えるのが理想だと思うのですけれどね」

 あぁ、この方は国が富むことを望んでいるのだなと、とても眩しく思いました。


「気を取り直して、説明を続けますね。高位貴族ほど家庭教師に教わっていますから、3年生からの入学になる方が多いです」

「じゃあ、アルフレド殿下は3年生からですか?」

「おそらく。王家の為の警備に予算と人員を割くことになりますし、王族教育の時間も別途必要になりますから、在籍年数は少ないに越したことはありません」

「それでも学院に通うんですね。色々と面倒そうなのに」

 この学院は在校中は寮に入る決まりで、王族以外は別棟を使うらしいからそれだけでも多方面で手間な気がする。


「より具体的な殿下の特徴を伝えておきますと、殿下は目立つことは好きでないのにちょっと迂闊なところのある方でそこそこ悪目立ちしやすいです。勉強は努力型で自頭は良い方ですが柔軟性はあまり感じられません。女性の趣味は感情表現が豊かで凹凸のはっきりした体型の方。お陰様で城ですれ違うメイドからの視線が痛いんですよ。憐憫の視線が特に煩わしくて。あと常に護衛が付くので必ず2人以上で行動するはずですから学院内に居られるときは比較的探しやすいと思われますわ」

「・・・カロン様の私怨が邪魔で覚えにくいです」

「殿下と居る人間は標的です」

「分かりました」

 どうやら胸囲に関して埋まらない怨嗟の気配を感じますが、触らぬ神に祟りなしといいますし、女性の怨恨ほどこじれて面倒くさい物も無いので放置一択です。 

 というかわたしの胸囲もそんなにないので、アルフレド殿下を誑かすのは難易度が高いのでは??

 

「他に判別しやすそうな方ですと・・・。殿下と一緒に壇上に上がっている護衛騎なども覚えやすいかと」

次回、増える友達

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ