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その1:入学式

 無事?に迎えた裏口入学の日。

 わたしことシルヴィアは凄く心が沈んでいた。


 まず、裏口入学するにあたり、王様に呼び出されて、王妃様のスパルタ教育を受けて、第2王子と面通しをしたのが辛かった。

 呼び出しは分かる。

 計画を駄目にしそうだったのだから分かる。


 でも教育係が王妃様だとか、魅了しなきゃいけない相手と事前に会うとか、凄く気まずい。

 しかも王子様の婚約者である伯爵令嬢も居て、さらに気まず過ぎて逃げたかった。無理だった。


 本人達にも計画は極秘だって、事前に王様から言われてたからお茶会も無言で。

 元スラム出身の元呪術師と知られてから王子様は居なくなるし。

 気付いたら師匠が居て「アレは不合格」とか言って伯爵令嬢にだけ計画ばらし始めて、伯爵令嬢も「こっちの方が儲けそうですね」とか王子殿下捨てる発言しだして、もう、本当に何がなんだか・・・。

 極秘とは??




 で、入学式。

 ここは魔法専修学院。

 今は講堂へ移動するところ。


 この学院は、主に国内の16歳くらいから19歳くらいまでの子供が通っている。

 貴族以外でも魔力さえあれば誰でも入れる間口の広さと、たまに他国の留学生が来るらしいのが特徴の学校である。


 ただし22歳で入学するとか、スラム育ちとか、元呪術師かつ裏口入学は開校初との事。

 こんなに子供が居る環境も初めてで、現在ちょっと吐きそう。

 

 そもそもわたしは学校に通えると考えたことが無い。

 スラムはみんな息をひそめて生きていたし。

 拾われてからはいつもお屋敷の図書室かお庭で、師匠とふたりで勉強していた。

 外に出る許可を貰ったのも18歳の時、成人の為にお城に挨拶へ行ったのがきっかけで、それ以降もほぼ引きこもり。

 

 つまり、うるさい。

 

 視界いっぱいの人、人、人。

 子供らしい高い声、何か分からないけど甘い匂いやなんかが沢山。

 視覚も聴覚も臭覚も、限界で倒れそう。


「シルヴィアさん、大丈夫ですか?」

 一緒に居てくれるのは第2王子の婚約者であるカロン・サクレット伯爵令嬢。今回の協力者である。

 綺麗に結いこまれた栗色の髪に、くりくりとしたオレンジの瞳が可愛らしいご令嬢。


 彼女の協力報酬は、王子殿下との円満婚約破棄と王家御用達商家への格上げらしい。

 そもそも成り上がり貴族の家系で、王子殿下の後ろ盾になる代わりにご実家の爵位を上げる契約だったそう。

 本人が言うには根っからの商人気質で、損得で動くから情は二の次とか。


 つまり現時点では第二王子との婚約は損で、情はちょっと有る・・・って事?


「カロンさま、すみません。人に、酔ったみたいで」

「そのようですね。酔い止めをどうぞ」

「ありがとうございます」

 この国の薬は粉薬が主流、飲むために魔法で水を出そうとして、師匠との約束を思い出した。


『いいかいシル、学園では火魔法と魅了魔法だけ使用する事』

『なんでですか?』

『僕の瞳の色、好きでしょ?』

『す、すすっ・・・すっ!!』

『赤いから火魔法と、後は今回課題の魅了魔法。他は身の危険があるまで当面の使用は禁止』

『す・・・』

『頑張ってね~』


 そうだった、水魔法は使用禁止だった。

「はい、お水です」

「っあ、ありがとうございます!!」

 目の前に差し出された小さな筒には、綺麗な水が入っている。

「これは最近市場に出始めた水筒で小型かつ零れにくい最新型!味の変化を抑えるべく内部はクリスタルを削り出して強度を持たせるべく外装を木工細工と鉄飾りで作っていまして蓋の細かい細工が職人芸の極みな所為もあってまだ量産の目途が立っていないんです。現状、完成品の数も少なく金額が高いのですが、機能的には庶民向け、できれば外で働く人に向けての販路を拡大していきたいので、量産に向けた試行錯誤を繰り返している一品です!!これは売れる事間違いなし!!我が商会の今一押しの品、もしよろしければシルヴィア様の分もご用意いたしましょうか?」

 流石商人!押しが強い!!

「えと、お財布の余裕が・・・」

「もちろん勉強させていただきます。友人ですもの!!」


「ゆう、じん・・・」


 初めての・・・友人!!


「良かったね、シル。初めての友人、おめでとう!」

「師匠!?」

 正装した師匠がなぜここに!?

「あら、ユスフ魔法伯様ごきげんよう。保護者は講堂とは別建屋での参観のはずですよ」

「シルの友人だしハルヴォルトで良いよ、カロン嬢。僕、今年は特別講師なんだ。よろしくね」

「まあ、国1番の大魔法使いにご教授頂けるなんてとても光栄ですわ。ところで、なんであなた様のお弟子様は固まってますの?」

「来るって言ってなかったからね~」

 師匠、今朝は確かいつも通りで、なんで、なんでわたしは今、後ろから抱きしめられているの??

 背中、背中に熱が!!?

「!!?」

「可愛い弟子でしょ??」

「シルヴィアさん、苦労なさってるのね」

「ところで、カロン嬢の婚約者殿は今は何処に?」

「講堂に居られます。新入生代表を務められますから」

「勉強はできるのか」

「お弟子様とは真逆ですね」

「シルは古語なら一番だと思うよ」

「偏った教育ですこと」


 目の前の腕を剥がして振り返ると妖精と見まごう程の美丈夫。つまりやっぱり師匠!!

「・・・なんで師匠がここに??」

 わたし、何も聞いてない。

「特別講師を請け負ったんだ。監視の一環としてね」

「顔色が戻ってきましたね」

「そういえば、まだ、薬飲んでないのに」

 さっきより、うるさくない。

「結界を張ってあげたんだ」

「「いつの間に?」」

「内緒」

 口元に指を寄せる仕草がとても色っぽい。今日も師匠は格好いい~!!


「さ、講堂へ標的の顔を拝みに行こうか」

「言い方!」

「誑かす相手の確認と行こうか?」

「言い方!!」

「お二人とも、いつもこんなやり取りしてますの?」

 せっかくできた友人の視線が痛い!!

 でも楽しい!!これが青春!!

 おばば、わたし今凄く幸せだよ~。今度お墓参り行くね!


「そうだ、カロン嬢。可愛い弟子の入学祝に、さっきの水筒と同じものを購入したいんだけど」

「まあ!!ありがとうございます!!今後ともぜひ御贔屓に」

「こちらこそ、シルを頼むよ友人殿」

「承知しました」


 なんか・・・。

「二人の距離、近いような?」

 気のせい??

次回、標的の確認。

の前に裏話、お茶会。

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