第 3 話 ──素質だけの少年
「ここが、探索者組合よ」
リナに案内され、翔太は巨大なガラス張りの建物を見上げた。
国家資源を扱う場所らしく、厳重な警備と魔法陣が張り巡らされている。
「緊張してる?」
「……まあ、少し」
「大丈夫。まずは登録と適性検査だけだから」
リナに背中を押され、翔太は建物の中へ入った。
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受付を済ませると、翔太は透明な球体の前に案内された。
「手を置いて、深呼吸してください」
翔太が手を置くと、球体が淡く光り始めた。
──ピィィィン……!
高い音が鳴り、球体が一瞬だけ強く輝いた。
受付の女性が驚いたように眉を上げる。
「……素質値、かなり高いですね。
魔力巡回の潜在能力はAランク相当です」
リナが目を丸くした。
「ちょっと、翔太……すごいじゃない!」
翔太は戸惑った。
「え、でも……僕、魔法なんて使ったことないし……」
受付の女性は苦笑した。
「安心してください。
これはあくまで "素質" です。
才能があっても、訓練しなければ魔法は使えません」
「そ、そうなんですね……」
翔太は胸をなでおろした。
(よかった……いきなり強いとか、そんなわけないよな)
だがリナは腕を組んで言った。
「素質が高いのは事実よ。
あとは努力次第ってこと」
翔太はうなずいた。
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適性検査を終えた翔太は、訓練場へ案内された。
「じゃあ、まずは基本の "魔力放出" をやってみましょう」
リナが手本を見せる。
手のひらから淡い光がふわりと広がった。
「こんな感じ。簡単でしょ?」
翔太も真似してみる。
「えっと……こう、かな……?」
──沈黙。
手のひらは、何も光らない。
「……あれ?」
「力を入れすぎ。もっとリラックスして」
翔太は深呼吸して再挑戦。
──沈黙。
「……で、出ない……」
リナは苦笑した。
「まあ、最初はそんなものよ。
素質が高いからって、いきなり使えるわけじゃないわ」
翔太は肩を落とした。
(素質があるって言われても……全然実感ないな)
そのとき。
「おい、新人」
低い声が響いた。
振り向くと、赤髪の青年が立っていた。
背中には巨大な剣。
訓練生たちがざわつく。
「あれ……"紅蓮のレオン" だ」
「Dランク最強の男……!」
レオンは翔太をじろりと見た。
「お前が噂の転移者か。
素質Aランクだって?」
翔太は困ったように笑った。
「素質だけで……魔法は全然使えませんけど」
レオンは鼻で笑った。
「素質なんざ関係ねぇ。
使えなきゃ意味がない」
翔太は胸が痛んだ。
だが、レオンは続けた。
「だが──素質があるなら伸びる可能性はある。
努力する気があるなら、俺が少し見てやる」
「えっ……?」
リナが驚く。
「レオン、あんたが新人を教えるなんて珍しいじゃない」
「気まぐれだ。
それに──」
レオンは翔太をまっすぐ見た。
「こいつ、目が死んでねぇ。
努力する奴の目をしてる」
翔太の胸に熱いものが込み上げた。
「……お願いします。僕、強くなりたいんです」
レオンはニッと笑った。
「よし。
ならまず──魔力放出の基礎から叩き込んでやる」
翔太の "凡人からの成長物語" が、ここから本格的に始まった。




