8.
長らくお待たせいました。
セレス、お前はメアリーを散々いじめた、
食堂では、メアリーを歩いている時にお前が足を引っ掛けて転かしたり、荷物を隠し池に捨てていたりと、散々な目にあっているのだろ。」
これでもかというように元婚約者様は、私を見下しました。
「それはすべてあなた達の想像でしょう。私はいじめなどしたことはございませんし、メアリー様とは今日が初対面なのですが」
私は首を振り「やれやれ」と言いたい気持ちを抑えながらも、返事をする。
「うるさい!黙れ俺がそうだと言ったらそうなんだ。この俺に逆らうな」
鼻息あらくしている元婚約者様、
「俺はお前のしたことを許すことができない。よって」
そこで元婚約者様は一息つくと、落ち着きを取り戻し、
「セレス、わたしは其方との婚約破棄をここで宣言しよう、
そして新たにダメール男爵令嬢メアリーとの婚約を宣言する」
元婚約者様が別の女性を大事そうに肩を抱いている姿、
やっと終わる、そう思うと私は笑顔が止まらなくなりそうです。
「婚約者様、申し訳ございませんが、
私との婚約はもうすでに解消されております。
このことはもう陛下もご存じですので詳しくは陛下よりお伺い下さい。
ーー元婚約者様・・・」
私の言葉に階段の上にいらっしゃる方々は目が点になっていらっしゃいます。
「・・・わ、俺はそんなこと一切聞いていない。
そんなことあるはずない。
俺とお前の婚約は国が決めたことなんだぞ、そんな簡単に解消されていていいものなのか、」
誰もが思うことでしょう
だけど、元婚約者様は顔を真っ赤にさせて身体をフルフルと震えていました。
「ですが、このように書面にも残されております。私としてはローデリアス様の婚約は数ヶ月前に破棄されております。」
姿勢を正し未だ階段上にいる元婚約者様を見据えはっきりと言いました。
「なら、この数日わたしへの嫌がらせは誰がやっていたんですか?
セレスさんがやったとしか考えようがないんですが」
私と元婚約者様の会話に割って入ってくる、失礼な方、メアリー様です。
「そこのご令嬢、今あなたに発言の許可は誰も与えていないが、どういった立場でいるのか、教えてもらいたいね。」
兄様が私と元婚約者様の会話にわって入ったメアリー様を止めたが、メアリー様はそんなことお構いなしです。
「わたしはローデリアスの、その、こ、恋人として言ってるんです。
発言するのに誰かの許可が必要なんですか。」
メアリー様は少し照れ臭くそうにしておっしゃいますが、頭の痛くなる発言をしていらっしゃる、ここには身分の高い方々がするなからず招待されています。
「あなたが誰の恋人と言うことは、この場では一切関係ありません。
ここが学園で開かれたパーティーなのも関係ありません。
将来あなた方が取るべき態度を我々はこの場で見ています。
このパーティーは学園の生徒が将来を見据える場所であると同時に我々大人もあなた方生徒を選抜する場でもあることをお忘れないように、
もう、手遅れかもしれませんが」
兄様がそこまで言い終わると静まり返っていた会場の扉の開く音が大きく響いた。
『国王陛下、ならび王妃陛下のご来場です。』
場内のアナウンスによって私達に集まっていた視線は一斉にそちらへと変わったのです。