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奪われる思考


 玉木は立ち上がり、テーブルの上のお香をキッチンカウンターへ移動させ火を点けた。一筋の白い煙が真っ直ぐに昇っていく。 

 戻ってきた玉木は、ソファに腰を下ろしながら言った。


「煙たかったら消すから言ってね」

「はい」


 神妙な表情の奏真に、玉木が静かに追い打ちをかける。


「なにも、心当たりない? なんて意地悪な質問はしないよ。さっきも言ったように、野原君から話は色々聞いてるからね?」

「はぁ……」


 そっか、玉木さんは全部知ってんだ。……全部? 全部って全部? キャンプでキスしたことも?

 奏真はいろいろと思い返し、自分のこと、直樹のこと、直樹の知ってる自分のことを整理した。


「でも、野原君を悪く思わないで欲しいんだよ。この話はここでストップする話だから。野原君の気持ちをラクにするために吐き出しているだけなんだ」

「……はぁ」


 奏真は妙に申し訳ない気持ちになった。奏真がのほほんと仲直りに満足している一方で、直樹は一人ぼっちで苦しみ続けていた。玉木はそう言っているのだ。


「水瀬君が悪いわけじゃないよ。そんな深刻に受け止める必要はない。誰かが誰かを想っていても、それが全て叶うわけじゃない。それが当たり前だし、彼も理解しているんだよ。ただ……」

「ただ、……。生殺し……ですよね、こんな状態……」


 玉木は俯く奏真の隣に座り直した。まだ貧弱さの残る小さな肩を抱き、優しく撫でる。


「それでも、君の隣にいたいんだよ。そしてそれを選んだのは野原君だ。だから、君が申し訳なく思うことはないんだよ? ただ、君への想いがどうしようもなく溜まってしまった時に、僕は野原君の話を聞く。ここで、彼は全て吐き出す。そして、また日常へ戻って行くんだ」

「…………」


 奏真は黙って頷くことしかできなかった。

 懐いてるなんて、とんでもない。全部自分のせいなのだ。玉木の言うことはわかるが、それでは解決にはならない。なにもしなくていいと言われても、放っておけるわけがない。

 どうしたらいいんだろ……。

 また答えの出ない思考の沼の中にずっぷりと浸かってしまう。

 宿題にしたまま放置し逃げていた問題だった。今度こそちゃんと向き合わなくてはならない。考えても考えても堂々巡り。いろんな気持ちが奏真をすり抜けていく。数学の問題の方がよっぽど簡単だと思えた。

 解けない難問に奏真の意識がボーッとしていく。

 肩を抱いていた玉木の手が外れ、その手は慰めるように優しく奏真の背中を撫でた。大きくて温かな手のひらがゆっくりと背中を上下に摩る。そのリズムと共に、奏真の頭の中に、だんだんともやがかかっていく。思考の果てにあったのは、ぬるいお湯に浸かっているようなタユタユとした感覚。玉木の手は奏真の頭を優しく撫でていた。心地いいはずなのに、体が妙に重く怠い。

 もやにすっぽり覆われ、直樹も、瀧本も、島田や、母親も、自分自身も見えなくなりすーっと消えていく。

 頭の中のふわふわが全身に浸透したように体がフラフラと揺れた。力が抜けているのか、体を上手く支えられない。自身の手の重さにすら耐え切れず、奏真は腰からソファにパタリと落ちた。

 体が不安定に揺れるのを玉木が受け止めている。


「大丈夫。……俺がいるよ? 何も心配しなくていい」


 耳元で囁く優しい音。


「力を抜いて、全部俺に預けてごらん?」


 すでに空っぽになってしまった頭の中に玉木の声だけが響く。奏真はコトッと玉木の胸に頭を倒した。身体が引き上げられる。

 立ってる感覚が曖昧で、奏真はほとんど身を委ねるようにもたれかかっていた。足に力が入らず、地面はスポンジのようだ。景色がグニャリと歪む。

 ……天井? 

 抱き上げられ、目を開く。ゆらゆらと天井が揺れ、ぼやけた視界の向こうに顎、喉仏が見える。奏真は数回瞬きして、あたたかい体温に目を閉じた。 

 ……瀧本さん。

 奏真はその体温に顔をすりよせた。

 すっぽり包まれていた体が解放される。地面はいつものせんべい布団じゃなかった。弾力のあるクッション。程よく沈む体。

 宙ぶらりんに緩めていたネクタイがしゅるしゅると音を立てシャツから抜けだしていく。シャツのボタンが一つずつ外され、手のひらが体を撫でシャツが剥がれていく。妙にもったいぶった脱がせ方。いつもとは違う。

 瀧本さんらしくないね。どうしたのかな? 

 服を一枚一枚ゆっくりと剥ぎ取られ、時間をたっぷりかけ奏真は全裸になった。空調が効いていて特に寒くもない。

 オレンジ色の丸く柔らかい照明。白く煙る天井。細く立ち昇る一筋の煙。奏真はスーッとその香りを吸い込んだ。さっきよりももっともっと甘い匂いがする。

 部屋の中のあちらこちらですごく小さな赤い光玉がチカチカと瞬いていた。


「……すごく、綺麗だよ」


 そっと囁く静かな声。柔らかい弾力が奏真の首筋に触れ、肌の表面がくすぐられる。奏真はまた軽く目を閉じた。ゆっくりと自ら首を開く。

 首筋やうなじを這い、耳を舐め、裏側を通り、また首筋を伝い、鎖骨へと下がる。


「っ……」


 ふふ、ほんと今日は変だね。

 いつもとは違う愛撫に奏真は身を委ねていた。

 キュッと強く吸われ肌がチクッとした。手首を握られ、片腕を頭の上に縫い留められる。


「……ほとんど生えてないんだな」


 肌に触れる呼吸。脇をくすぐる肉。


「ぁ」


 脇腹まで降り、ゆっくり這い上がり、震える身体を楽しむように行ったり来たりして、胸の辺りに移動する。寒くもないのにツンと立ち上がった所を避け、周りの薄い皮膚をなぞられる。


「うぅ……」


 焦らされてるせいか、奏真は己の息遣いが大きくなっているのを感じた。いつもと違う刺激に興奮している。そわそわと触れられ体の芯がプルプルと震えた。

 ポイントをあえて外す愛撫に焦らされる。いつものようにガツガツして欲しい。もどかしくて熱がどんどん下半身に向かっていく。

 ずっと放置だった胸の先っぽに突然与えられる刺激。


「……ひゃっ」

「ふふ……嬉しいな。そんなに敏感に反応してくるなんて……」


 焦らされた分だけ今度はねっちこく、からかうようにイタズラしてくる。奏真は溶けちゃいそうだと思った。

 一体なんで勉強したの? いつ?  俺の知らない間に?

 先端を啄いては、ねっとりと舐め回す。とてもいやらしい動き。


「……ふ……んぅ」


 くすぐったいような、少し痛いようなジンジンして、もっとして欲しいと小さな存在が精一杯に主張してるのを感じる。高まりは下半身へもとっくに向かっていた。熱が集まり、すっかり立ち上がっている。


 散々弄られ、あっちもこっちも赤く腫れ熟れる身体。唇はやっとへそへと移動した。下腹を撫でる指。その感触もまたいつものごつい指じゃない。繊細な感触が絡みつく。


「ん……」


 濡れた柔らかな肉に包まれる。さっきまでのゆっくりな愛撫とは違う。柔らかい壁の中でうねるように絡みつく。上下に動く刺激が奏真を攻めたて、さらに思考を奪う。


「ぅあ……は、ぁ……っはう」


 恥ずかしい水音が聞こえてくる。すっごく気持ちいい。


「……とっても美味しいよ」


「ぁ、あ、はっ……あぅ」


 奏真が膝を震わせると、グイッと両足が広げられた。身体を折り曲げるようにひっくり返される。

 苦しい……。


「こっちもとても綺麗だ」


 肌に当たる吐息を感じたと同時に、躊躇なく差し込まれる。その感触になんとも言えない快感んを感じた。ゆっくり動く刺激に奏真の不安定な腰がプルプルと震えた。


「うん。まだまだ使い込んでなくて、ピンク色だよ……肌の色素が薄いから余計に綺麗なんだね」


 静かにゆったり流れる声は恥ずかしくなるような事を言ってるのに、妙に落ち着いていて子守歌のように心地良く聞こえた。すっかりねだる入口に細く長い指が入り込む。最初はヒンヤリした感触がしたと思ったのに、どんどんと熱くなっていく内側。


「ぅ、っク……っあぁ」


「ああ……なるほどね。確かに……君は男を知ってるね」


 潜り込んだ先がクイッと感じる部分を押す。


「んあっ!」

「こんなにエッチな君が隣にいたら……野原君も辛いだろうね……」


――――直樹!


 その名前に奏真の目がパッと開く。突然目が覚めた視界は一気にクリアに、意識がグッとリアルになった。パチパチと瞬きし、キョロキョロと視線を動かし辺りを見る。見覚えのない寝室。己の腰を持ち上げてるのはもちろん瀧本じゃない。玉木だった。

 全身の血が一気に引き総毛立つ。

 な、な……んで……?


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