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甘く危険な囁き



「ほお、新しいアパート? 本格的に同棲するつもりか……」


 通い慣れた部屋のリビング。もう緊張などとっくに忘れてしまった。

 自分の家のようにソファに寄りかかっていると、隣に座る玉木もソファに背を預け、感心したように言った。直樹はズーンと重力を感じた。


 同棲……そんな言葉聞くとますます落ち込んじゃうよ。


 直樹がムッとしたのが分かったのか、玉木は「まぁまぁ」と宥めるように直樹の肩を抱きポンポンと叩いた。


「俺、俺ね? 奏ちゃんが瀧本さんといて、幸せならいいんだ……。瀧本さんカッコイイし……しっかりしてるし……」

「うん。直樹はほんとうにいい子だな」


 肩を撫でていた玉木の手が、直樹の頭を撫でる。軽く酔っている直樹は玉木が名前を呼び捨てしていることにも気づいてなかった。

 優しく慰められると、涙腺が緩んじゃうんだよね。俺。この前も、玉木さんの前で泣いちゃったし……。

 わかっているはずなのに、止められない。なんとか堪えようと、涙の代わりに気持ちを吐き出した。


「でも、今日みたいにさ……二人が仲良しオーラだして歩いてるの見ちゃうと……すごく悲しくなっちゃうの」

「それは当たり前だよ。いくら応援するって決めたって、辛いもんは辛いさ」

「うん……胸がすごく苦しくなるんだ……」


 直樹が「はぁ……」とため息を零すと、玉木が髪を撫でながらポツリと言った。


「気晴らし……してみるか?」

「きばらし?」

「スッキリする方法を教えてやるよ」


 すっきり、したい。ずっとモヤモヤしてるこの気持ち。できることならスッキリと吹き飛ばしてしまいたい。


「ほんと?」


 玉木はいつもの笑顔で優しく頷き、顔を寄せる。そして、内緒話をするように囁いた。


「直樹の奏ちゃんがいつも、どんな風に愛されてるか、教えてやるよ」


 一番聞きたくないはずの言葉なのに、不思議と腹が立たなかった。玉木の声色のせいだろうか? 沈みきって重かったはずが、フワフワと浮遊するような気分。

 直樹は誘われるがまま玉木の寝室へ入りベッドへ横になった。伸し掛かる影は汗をかいた直樹の首筋に顔を埋め、「いい匂い」だと囁く。そのままチロチロとくすぐったい感覚に、ゾクゾクしながら玉木の腕をギュッと掴んだ。


「た、玉木さん……」

「ん? 怖い?」

「う、ううん。怖くないけど……でも……」

「大丈夫。リラックスして。直樹は目を閉じてるだけでいいから」


 玉木の低く囁く声は呪文のようだった。暗示にかかったみたいに瞼が重くなっていく。玉木の指や唇が直樹の体のあちこちに優しく触れるたびに、身体の中心がズキズキする。なのに、肝心な部分はいつまでも放置されたまま。

もどかしさに体がよじれる。


「た、玉木さ……ん。はぁ……や……」

「なにが嫌?」

「違う……さ、触って……熱いよ」


 意地悪されているのが分かって、直樹は玉木の手を掴むと目を閉じたまま自分のそこへ引っ張った。


「触ってほしいの?」

「うん。うん」

「可愛いな。直樹は可愛いよ」


 ズボンも下着も脱がされる。先端が空気に触れヒンヤリしていて、それがすごく恥ずかしい。優しい手つきに、とろけそうになる。高まる快感に酔っていると経験したことのない刺激に直樹は目を開いた。頭を持ち上げ、玉木を見る。


 うそ……俺のを……。


 動画で観たことがある。愛美にはやって貰いたいと思わなかったし、愛美もする気がなかった。

 衝撃的な光景と強すぎる刺激に直樹は一気に高まってしまう。


「うあ……玉木さんっ、……っ……ダメ、出ちゃうよ」

「出していいよ」



 ジュルジュルとすする音。玉木の口の中に別の生き物がいるみたいに動く柔らかい肉が、ツンツンと啄いたり、撫でたり、ゾリゾリと擦り付けられる。もう、訳が分からなかった。


「あ、あ……っっんっ!」


 ドクン! と腰が大きく痙攣し、直樹のは玉木の口内で思いっきり勢いよく弾けた。それなのに、玉木は顔を離すどころか、一滴残らず絞るみたいに頭を動かし、キュウッと吸い続ける。


「や、あぁぁ、んんっっ」


 強烈過ぎる痺れが直樹の身体を走り抜けグッタリしてると、玉木はようやく解放してくれた。ビクビクと痙攣したまま息も絶え絶えな直樹を見て、玉木がベッドへ座り頭を撫でる。


「……どうだった?」

「……すごすぎ……頭、クラクラするよぉ」

「ははは……そっか」


 直樹は薄目を開け、玉木を見上げた。

 あんなエッチなことしたのに、相変わらず爽やかな笑顔だ……。


「あの……玉木さん、ごめんね? 俺、出しちゃって……」


 恥ずかしいけれど、してもらったことは確かに強烈で、落ち込んでた気分も一気に吹き飛んだ。


「ん? いいよ。直樹の味、美味しかった」

「えーーー……うそ……飲んじゃったの?」

「好きな相手のなら、飲めるもんだよ」


 玉木の言葉に、直樹は目をパチクリさせた。


「え、好き?」

「うん。直樹は可愛い。俺はお前が好きだよ?」

「はぁ……そうなんだ」

「直樹は? 俺のこと嫌いか?」


 直樹はブンブンと首を振った。

 嫌いなわけない。こんなに親切で、優しいのに。


「俺も、玉木さん好きだよ? でも……飲むのはちょっと……」

「あははは!」

「それに、好きだけど、奏ちゃんを好きなのと違う……うまく言えないけど」


 玉木はニッコリ微笑むと、また直樹の髪を撫でた。


「いいんだよ。ただ、辛い時はここで吐き出せばいいんだ。俺で良ければいつでも相手はしてやれる」

「……でも……」

「それに、最後まで知りたいだろ?」

「なにを?」

「奏ちゃんがどうやって愛されてるか」

「……う、うん……」


 それは知りたかった。声しか聞いてない。どうやればあんな声が出るのか。俺がしてもあんな声が出るのか。奏ちゃん、すごく気持ち良さそうだったもん。


「……うん。俺、教えてほしい。玉木さん、教えてください」


 玉木は直樹の手をひっぱり、脱力した体を起こした。


「じゃあ、一緒にバスルームへ行こう。一から教えてやるよ」

「は、はい……」


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