一番好きなもの
部屋の端に畳んである布団にもたれると奏真を向き合う形に引き寄せる。奏真は瀧本をまたいで膝立ちする格好になった。
「入れて」
「……って、自分で入れろってこと?」
「手伝ってやっから」
瀧本はそう言うと腰を掴み、奏真の身体を下げ、そのままズブズブと埋めていく。
「わっ! わ、わっっ……」
「大丈夫。もう痛くないだろ?」
奏真はプルプル震えながら首を上下させたが、重力のままグッサリ貫かれギチギチで、より感覚が増している。体の力を抜こうとフゥフゥ息を吐く奏真の頬を、瀧本の大きな手が包んだ。
「これだと、顔がよく見えるな」
オスの表情で奏真を見つめる瀧本に、体内の芯がキュウと熱くなる。奏真は頬を染め、瀧本の視線から逃げるように目を伏せた。
「……みっ……見なくていい、し」
「見ながらがいいんだよ」
「いつものだって、見えるよ」
「ん? いつもの方が好きか?」
「そ!」
奏真の全身がカッと熱くなり勢いをなくす。再び視線を落とし拗ねるように言った。
「な、なんだっていいよ……」
「可愛い顔してんなぁ」
瀧本が正面から奏真を直視してボソと呟く。嬉しい言葉のはずなのになぜか悔しい。でも、なにも言い返せない。
瀧本はまた両手で奏真の腰を掴み、ゆっくりと促すように揺すった。リズミカルに浅く突き上げられる。気持いいポイントに触れるか、触れないかの焦らしに奏真の身体は否応無しに悶えてしまう。
「だいぶ、解れてきたよな?」
「だった……ら?」
「苦しくないだろ?」
腰を掴む瀧本の手に力が入り、グッと身体を引き上げられる。そして重力に任せ落ちる身体。
「あうっ!」
「イイか?」
奏真の返事も待たず、瀧本は何度もそれを繰り返す。
「は……うわあっ! あっ! は……ああっ!」
快感に奏真の上半身がグラグラ揺れる。姿勢を保っていられず、瀧本の首にしがみついた。
「きついか?」
瀧本自身も息を乱しながら、耳元で熱い息を吹きかけ確認してくる。
「目、回っわ! ん……あっ! っちゃ、う」
なんとか訴えると瀧本は動きを止めた。深く収めたまま奏真の背中を撫でる。奏真の息が整うと、瀧本は奏真の頭を抱きゆっくりと上体を床へ倒した。
「お前の好きないつものにしよう」
「……べつに、好きって、わけじゃない」
瀧本の視線と絶対的勝者の圧力に耐え切れず、奏真はぷいっと横を向きその視線から逃げた。
「あ、背中擦れちゃうな」
瀧本はズルリと奏真の身体から出て行くと、壁に寄せ折り畳んであった布団を広げた。
「お、ここ、風通しいいな。玄関開いてるからか。ここ来いよ」
え……。
今の今まで、玄関が開け放してあることをすっかり忘れていた。奏真の顔がまた一気に熱くなる。
バカみたいに喘いでた声も丸聞こえ?
恥ずかしさに頭がクラクラしている奏真を瀧本が笑った。
「あははは。大丈夫だろ。この時間にアパートに居る奴なんていねーよ。角部屋だから、誰も前を通らねーし」
いつも昼間寝てるくせに、なに言い切ってんだよ。同じように夜勤のヤツがいないって思わないの?
「そんなの、わかんないじゃん……」
「シャワーの時とえらい違いだなぁ」
煮え切れない奏真を瀧本はニヤニヤとしながらからかった。奏真を引き寄せ、二人で布団へ寝転がる。スーッと入ってくる風。確かに風を感じる。汗で濡れた肌に気持ちいい。
「それとこれじゃ違い過ぎるよ」
「よしよし。じゃあ、声、出さずにしような?」
「そんなのっ……」
のしかかるまま、また入ってくる。
「んぅっっ……」
声出すなって、玄関閉めてくれりゃいいじゃん!
そう言いたかったが、唇をグッと噛み締め奏真は快感に耐えた。
「あ、いいなぁ。その顔可愛いぞ」
瀧本は嬉しそうにゆっくりと動かした。
「ふ、ぁ……からか、うなっ……んグッ!」
奏真の抗議に、瀧本は大きな身体を倒し覆いかぶさる。奏真がずり上がっていかないように肩を抱き額を合わせると、荒い息を吐きながら言う。
「……からかってねーし。可愛いって言ってんだよ」
奏真はグッと唇を一文字に結び、瀧本の首に両腕を回した。
可愛いだって。男なのに、そんなこと言われて喜ぶのは、……俺くらいだろな。
矛盾を感じながら奏真は顎を持ち上げた。そっとキスしながら深いキスを仕掛ける。
瀧本さんになら、なにされたって嬉しいけどさ。
目を瞑りそう思った瞬間、キュッと強く吸われる。
「ぅっ!」
刺激を受けながら奏真もキスを続けた。全身で瀧本を感じる。
「ん、はあ、 ……っ、ぅ」
瀧本のスピードが加速していく。いくら唇を噛み締めていても、その衝撃に声が漏れ出てしまう。奏真は手のひらで己の口を塞いだ。その仕草に一層瀧本は、俄然やる気を出しリズミカルに打ち付けた。
「はぐっ! んあっ! ……っやあっ!」
激しい快感に玄関のことなど奏真の頭から消えてしまう。身体の芯から突き上げる鋭い快楽に振り回され、奏真は助けを求め瀧本へねだるように必死に手を伸ばした。
瀧本が上体を倒し、ギュウッと奏真を強く抱きしめた。奏真もギュウギュウとしがみつく。
「……イくか?」
「……ん!」
二人の腹に挟まれた熱が限界値を迎え弾けた。瀧本のも中で大きく震える。瀧本の太い腕が、苦しいほど強く奏真を締め付け閉じ込める。腕の中であがる息を吐き出しながら奏真は思った。
俺これが一番好き。
ひそかに幸せを噛みしめる。
体内でビクビク痙攣していた瀧本が静まり、やっと腕の力が抜けた。重そうに上げた瀧本の顔は汗まみれだった。手を回した大きな背中も汗でグッショリ濡れている。
瀧本は片腕で身体を支え、奏真の額の汗を指で優しく拭った。奏真も瀧本の頬に手を当て、汗ばんだ額に数回の口づけを繰り返し、最後に唇へキスする。
うん。俺、瀧本さんが一番好き。
瀧本は口を開き、奏真の口の中に舌を入れ、穏やかなのにやたらねちっこいキスを返す。瀧本の舌使いや、唾液をすする音に、奏真は体の芯を震わせた。負けじとやり返そうとして、すぐに諦める。
やっぱかなわないや。
体内に入ったままの瀧本のが硬さを取り戻していく。
「んあっ! わ、……たきっ……ふっか、うんん」
言い終わらないうちに、またゆっくりと突き上げられる。敏感になっている部分を擦られ、奏真の身体が大きく跳ねた。
「ひあっ!」
いつもなら仕事があるため一回で済むが、今日は休み。底なしの瀧本のやる気に奏真は気が遠くなった。瀧本が唇を触れ合わせたまま囁く。
「可愛いな……くそっ」
奏真のせいだと言わんばかりのセリフ。瀧本の目は興奮しきっていた。全身の毛穴からフェロモンを放ち、奏真に絶え間ない快感の嵐をおみまいする。奏真は為すすべもなく、なにがなんだかわからないまま瀧本に許しを請うた。
「ぅ、ぅはっ……ふぁ……も、ご……めんなさっ……はあぅっ」
「ダメだ……」
「……ふぇ?」
「可愛すぎんぞ。おら」
「んな、……ぁっはぅ! ……は、はぁ、ん! ……もお……」
ゴリラのように興奮しきっている瀧本はカチカチのを引き抜くと、奏真の身体を引っくり返して覆いかぶさった。体勢を変えまたズブブッと入ってくる。
「うわああぁっ!」
高い声が出て、大きな手が奏真の口を塞いだ。耳を甘噛みしながら瀧本がハァハァと荒い息の合間に言う。
「外に聞こえちゃうぞ?」
「っっん、はぁ、ァっ……んだ……って……あぅッ」
鈍い痛みと、熱のこもった息遣いが更に奏真の感度を高める。ゾクゾクと込み上げる快感に理性が散っていく。
俺だって動物だもん。嫌じゃない。もっと欲しいっ。
開き直った奏真は四つん這いで布団を握り、自ら震える腰を動かした。
「ンッッ、はっ……はぁ、あぅっ! っぅン!」
瀧本の手が顎を掴み奏真の顔を横へ向けた。背後からのキスで、更に奥へ食い込む。
「たきっ、……あ! ……さんっ、も……でそっ」
「イくぞ」
瀧本は奏真のを握り、同じリズムで動かしスピードを上げていく。
「やっ! ダメっだって! っあ! 擦っちゃ、わっあっ、や! うあぁぁぁ!」
一際強く腰がバチンと叩きつけられ、奏真は瀧本の手の中で弾けた。ビクン! とまた瀧本のが体内で痙攣する。
「――んっ!」
ドクンドクンと激しく重なる鼓動。暑い。ガクッと崩れ落ちる身体からズルリと瀧本が出て行く。
「うっ……」
布団の上で雑に転がった身体を、うしろから大事そうに瀧本が抱きしめ、その腕を奏真が両手で抱えた。濡れた体を通り抜ける風。その心地良さに、奏真はそっと目を閉じた。




