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誰のせい?



「あぁー、まぁ……扇風機っすね……」


 奏真の声をプツプツと途切れさせ、頑張って羽根を回す扇風機。風で髪が勢いよく煽られる。

 エアコンが壊れ生存の危機を覚えたが、税込みで三千円とビックリする程安い扇風機が見つかった。展示品だったが、五枚羽で省エネらしい。ということで、段ボール箱を担いでアパートへもどってきた。

 多少音がうるさいが仕方ない。『強』にしているから多少どころではなく、だいぶ大きな音をたてているが、贅沢はいえないだろう。

 エコって意味では環境的にも経済的にも貢献しているし、この若干ぬるい風も体にいいと言えるかも?

 奏真が考えていると、瀧本がバニラアイスを口に入れたまま言った。


「おまえ、近すぎなんだよ。もっと下がれよー。俺に当たらねーだろー」

「えーだってぇー、アイス溶けちゃうでしょ。風当たっちゃうと。だから俺が防いであげてんですよ」

「だー。あちーなー。くそー。あー。そだ、シャワー浴びてこよう。水浴びりゃ涼しくなるだろう」

「それいいすねー。行きましょう」


 アイスを咥えた瀧本が立ち上がり、タオルを手に取る。

 奏真も扇風機を止め、部屋の隅っこに置いてあるタオルと自分の着替えを取ろうと四つん這いになり手を伸ばした瞬間、ゴトッと何か重い音がした。

 ん?

 床に落ちた携帯を見て、奏真は直樹からメールが来たことを思い出した。

 あー。そうだった。

 瀧本がアイスの棒をゴミ箱へ投げ捨てる。奏真の背中でサンダルに足を突っ込む音がした。


「…………」


 奏真は携帯を棚の上へ置き、着替えを持って立ち上がった。

 どのみちメールをもらってからだいぶ時間が経っちゃってるし、返事はまたあとでいいや。

 部屋を出ていく背中に続くと、瀧本が振り返った。


「すぐ戻るから待ってろって」

「ん?」

「二人で入ったらおかしいだろ?」

「そう? 誰も気にしないっしょ。男同士だし」

「いやいやいや。男同士の方がおかしいって。シャワー室狭いのに」

「でも、一気にやった方が経済的っすよ?」

「あー。まぁな。……いっか。まだこの時間なら他の人間も帰ってないか」

「ん。行こー行こー」


 瀧本をすり抜け、お先にとシャワールームへ向う。脱衣場でババッと服を脱ぎ、シャワー室に入って百円を投入するとすぐに瀧本も入ってきた。

 さすがに真水では冷た過ぎるので、温度を調節し二人交互に浴びて汗を流す。五分でシャワーはガシャンと止まった。


「あっという間だね」

「はースッキリした!」


 水浴びが終わたことを残念がる奏真とは逆に、瀧本は満足できたらしい。ガシガシとタオルで頭の水気を取り、ハーフパンツをノーパンで直履きする。


「いやー。夏はシャワーに限るな! うんうん」


 上半身裸のままタオルを首に掛けて脱衣所から出ていく瀧本を見て、奏真も上はいいやと、持ってきたパンツと短パンに足を通し、Tシャツとタオルを脇に抱え出ようとした。


「お前なー、ちゃんとシャツくらい着ろよ~」

「瀧本さんだって着てないじゃん。パンツすら履いてないクセに」

「わははは。はー……ちょっとさっきより風も涼しくなったんじゃないか?」

「まぁ……」


 笑ってごまかしたなと思いながら奏真はしぶしぶTシャツに袖を通した。

 部屋に戻ると時計の針は四時半を指していた。

 部屋の隅にある洗濯カゴへ汚れ物を入れていると、後ろからにゅっと冷たそうなペットボトルが伸びてきた。それを受け取り振り返る。瀧本はもう一本のペットボトルを手に扇風機のスイッチを入れた。ブォォォとまた大きな音を立てながら扇風機が首を回す。


「まぁ、ある意味、今日が休みで良かったな。扇風機も買えたし、玄関に網戸も付けたし」

「ですね。仕事の時に壊れてたら……まぁ、俺が買ってくりゃいい話しなんだけどね」


 扇風機の前であぐらをかいた瀧本の膝の上に、奏真は腰を下ろした。

 瀧本は肩に掛けていたタオルを外し、奏真の頭に乗せるとガシガシと髪の毛を拭きながら言った。


「だから、おめーはよー。前に座るなっつーの……」


 文句を言いながらも瀧本の左手は奏真のシャツの中に潜り込んできた。右手も短パンの中へ。後ろから羽交い締めのように、いきなりの二点攻め。


「なんすか。速攻っすか」

「うるせー」


 奏真のうなじに唇が触れ、皮膚の上をゆっくりと移動していく。

 耳の後ろにキスを繰り返しながら、弱い部分に触れてくる。奏真の右肩がクゥッと上がる。それを合図に瀧本もイタズラから本気モードへとシフトしていく。さっきの冷めたツッコミとは裏腹に奏真の表情も一気に切なげに歪む。


「おめーがわりーんだよ……」


 熱っぽい息が声と共に浴びせられた。


「……んで俺のせい?」

「一緒にシャワーなんか浴びたら、したくなるだろ?」


 奏真は振り返り、瀧本を見て小さく笑って答えた。


「別々にしてもするクセに」

「余計だよ。ばか」


 甘くなじる唇を奏真は首を伸ばし塞いだ。その唇から今度は甘いキスが贈られる。与えられる刺激とキスに奏真が酔いしれていると、さっき履いたばかりの短パンが脱がされる。


「ほら、どーせすぐ脱ぐのに……」

「お前の身体エッチぃから、外では絶対脱ぐなよ?」

「あれ? ヤキモチ? 銭湯行けないね?」

「一人じゃ禁止だな」


 真面目な顔して瀧本が頷く。

 ヤキモチ妬いてくれんだね。……ちょっと嬉しいかも。

 奏真は「ふふ」と笑いさらに瀧本を焚きつける。


「じゃぁ、同級生と行くよ」


 振り返り瀧本の頬へキスして微笑む。


「むむっ」


 瀧本の眉間に皺が寄る。奏真がニマニマしていると、膝の上から下ろされた。

 瞬時に不安が奏真を襲う。

 怒っちゃったかな? どうしよ……謝ろうかな?

 内心焦る奏真の背中を瀧本がグイと押す。奏真は畳の上に俯せになった。


「わ……」


 足に引っかかっていた短パンもむしり取られ、ガシッ! と尻を両手で鷲掴みにされた。何事かとビックリしていると、瀧本が思い切り「チューーーッ」と柔らかい肉を吸う。チクリと痛みを感じる程強い吸引。チュパッ! と唇を離すと、今度は腰に近い上部をキツく吸う。


「……ねぇ、なに……?」

「ふふふ……はっはっは」


 なぜか勝ち誇ったように瀧本が笑う。


「これで銭湯には行けまい!」

「へ?」


 奏真は上半身をひねり自分の尻を見た。キスされた辺りにうっ血した痕が残っている。

 これが俗に言うキスマークってヤツなのか。と奏真は妙な納得をした。


「あーあー」

「もっとつけてやる」


 瀧本はいたずらをする子供のような顔で、また尻に顔を近づけキツく吸う。


「もぉー……っ」


 瀧本は肉の柔らかい所を甘噛みして、舐めて、吸い付くを繰り返す。刺激に肌を震わせながら思った。

 このまま食べられちゃいそうだ。

 鈍い痛み、刺すような痛み、そして慰めるように舐められる。優しくゾクゾクする感覚に、奏真の息が徐々に上がっていく。そのうち吸い付く勢いが弱まり、瀧本は準備に専念しだした。


「ぁ……んぅ……」


 腰がグイと引き上げられ、尻だけ突き上げた変な格好になる。


「やっぱり行かせらんねぇ」


 瀧本はボソッと言い、ゆっくりと奏真の中へ捩じ込んだ。いつもと違う体勢は、刺激も強かった。えぐれるように入ってくる異物に奏真は苦しげに呻いた。


「ん……キツいか?」


 奏真は床にこめかみを付けてコクコクと頷いた。腰を掴んでた右手が腹に周り、包むように握られる。途端に奏真の声が艶を帯びる。


「……ん」

「いい。すげぇ、気持いい……」

「っ、はァ……こ、っち……のが、すき?」


 瀧本はズルリと引き抜くと、クッタリしている奏真をゆっくり起こした。



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