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ふたりの未来


 衝撃の初体験を終え、二ヶ月が経った。

 信じられない行為を瀧本としてしまい、奏真はふたりの関係についていろいろ考えることが多くなった。 

 瀧本さんは好きだと言ってくれた。俺も瀧本さんが好き。もっと言えば大好き。大好物。ずっと一緒にいたい。大切な人。憧れてるし、尊敬もしている。その上でいたしてしまったということは、俺と瀧本さんはいわゆる恋人って関係になったってことなのかな? お互いにそういう好きにいつの間にかなっちゃっていたのかな?

 考えると、ムムムムムッと口が尖がってくる。正直、奏真は恋愛という関係がよくわかっていないのだ。

 友情と愛情? この差ってなんだろう? 決め手となる違いとかはあるんだろうか? 特別感や独占欲? はどちらでも存在しているし。

 奏真の顔がドンドン傾いていく。

 でも、明らかに一線は越えちゃった気がするんだよ。すっごくビックリ展開だったけど、瀧本さんに抱かれるのは全く嫌じゃなかった。それどころか気持よかったし、心地よかった。痛いし、苦しいし、驚愕ものなのに。もしかしたら俺はエッチするのが好きなのかもしれない。

 そこまで考えて、奏真は自分の感覚に違和感を持った。

 ヤられるのが好きだなんて。どう考えてもおかしい。普通ならヤる側なはずだし、やっぱり「ぞぞぞ」なことだよ。

 奏真は「ぞぞぞ」じゃなく、「ゾクゾク」してしまったのは、自分がおかしいからだと思った。グッと眉間にしわが寄る。

 夜な夜な壁越しに聞こえてくる母親の声。奏真はそれが嫌で嫌で仕方なかった。母親と島田の姿が脳裏に浮かび、毎晩イヤホンから流れる音楽で耳を塞ぎながらギュッと目を閉じていた。

 やっぱり、母ちゃんの子だからなのかな……。血は争えないってやつなのかもしれない。


「はぁ……」


 ズンと気持ちが落ち込む。どんよりした嫌な気分に覆われそうになって、頭を左右にブンブン振った。

 違う違う! そうじゃないだろ。アレが好きとかじゃなくて、頭を撫でられたり、抱きしめられたり、そういうのがすごく気持ちよかったんだ。アレしてる時はそういうのを瀧本さんはいっぱいしてくれる。それがいいんだろ。 

 その時の瀧本は奏真だけのもので、誰にも、なににも邪魔されることはない。それがすごく嬉しいのだという結論に着地した。


 それ以降、奏真は一気に気が楽になった。以前にも増して、二人だけの時は恋人同士みたいにくっつき、抱き合い、キスをしたり、その先の行為もずっと続けている。奏真は全力で甘え、瀧本はそれを許してくれる。すごく満たされ、とても居心地がいい。

 きっと女の子ってこんな気持ちなのかな? と奏真はふと感じた。付き合ったことがないから分からないが、ほんの少し直樹の彼女の気持ちも理解できた気がする。

 そう思うと、また新たな疑問が湧いてくる。

 俺は突っ込まれちゃったから、心まで女の子になっちゃったんじゃないかな? と。本当にこれでいいのか? と思うのだけれど、瀧本の顔を見るとそんな疑問もどうでもよくなってしまう。


 金曜日。学校から瀧本のアパートへ直行し、外泊ができる日だ。

 ここのところずっと奏真は週末を瀧本と過ごしている。母親もなにも言わない。奏真がやるべきことをきちんとやっていれば、奏真をヒマつぶしの道具にしている島田以外の大人は誰もとやかく言わない。そして島田がなにを言おうが、ちゃんと瀧本という居場所がある奏真にとっては関係なかった。


「あっちぃ~……」


 学校帰り、照りつける日差しの中をトボトボ歩き、コンビニへ寄る。

 食料やアイス、ついでにアレする時の必需品のゴムも買いアパートへ向かう。

 いつものように合鍵でドアを静かに開ければ、暗くてひんやりした部屋の中で爆睡する瀧本の姿がある。窓から入ってくる光がきつくなり、暑さ対策として遮光カーテンにしたのは大正解だった。窓の外側にはホームセンターでついでに買ったよしずも掛けてある。


 今年一年、しっかり金を貯めたら、トイレと風呂付きのアパートへ引っ越そうと言った瀧本の言葉を思い出す。「そしたら一緒に住んでもいいし」と言われ、奏真はとても嬉しかった。

 奏真自身、高校を卒業したら家を出ようと決めていた。だからギターを手に入れたあとも、バイトを続けたのだ。瀧本の言葉は飛び上がるほど奏真を喜ばせ、「じゃあ! 今すぐに!」とバイト代を貯めた通帳を渡し「足しにしてくれ」と言いたくなるほどだ。しかしそれはやめておいた。瀧本がちゃんと計画を立て決めたことだから、奏真はその時を待つことにした。

 その時が来たら渡す。そして一緒に住む部屋を探す。俺たちの家をね。


 爆睡中の瀧本の横にあぐらをかいて座った。

 薄暗い部屋で、瀧本の寝顔を見つめていると、気持ちが満たされるのを感じる。

 キス……しちゃおっかな……。

 してもきっと起きないだろうと、奏真はゆっくり顔を下げた。ふにっと唇が触れる。目を閉じ、触れた唇を挟むようにキスする。二回、三回と繰り返し、唇の表面をスリスリと擦りつけた。すると、瀧本の両腕がヌッと伸びてきて、奏真を引き寄せ抱き締めた。ギュウッと熱い腕が奏真を包む。ゆっくりした心音に混じり、眠そうな瀧本の声が響いた。


「……今、何時だ?」

「ただいま。ごめんね? 起こしちゃった。まだ四時だよ」

「そっか」

「一緒に寝る。六時まで俺もお昼寝するよ」


 瀧本は奏真を抱きしめたまま、無言でゴロンと寝返りを打った。奏真の目の前には瀧本のドアップ。奏真を見下ろしながら瀧本がぼそりと呟いた。


「もう、目ぇ……覚めたし」


 大きな手が制服の白シャツのボタンを一つ一つと外していく。


「へへ、ごめん」


 謝っても奏真に悪びれる素振りはない。嬉しそうに瀧本を見上げている。

 瀧本は奏真の身につけているものを全部剥くと、己も全裸になり奏真に覆いかぶさった。

 チュッと触れるだけの可愛いキスから始まり、深いキスへと進む。

 暗くてヒンヤリした部屋でじかに重ね合う肌はサラサラと気持ちが良い。そんな感覚の中でも、奏真の思考は働く。首、肩、胸……エアコンで引いてしまったとはいえ、汗をかいた事実は消えない。なのにしょっぱいだろう奏真の体を美味しそうに瀧本は舐めまわす。


「……や、やっぱシャワーしてくる」

「このままでいい」


 瀧本の言葉に熱が一気に登り、奏真はギュッと目を閉じた。キスし、舐められる箇所がどんどん恥ずかしい箇所へと進む。とてつもない焦りが込み上げ、やめてほしい気持ちと、求める気持ちが奏真を翻弄した。優しく丁寧に、容赦なく攻め続けられ、奏真はすぐに切羽詰まった状態になった。


「あ! あッ……はぁうっ!」


 己の意思とは関係なく、刺激に高められた勢いのまま噴射する。我に返った奏真はハッとし、瀧本を見下ろす。

 まさか……。

 やはり瀧本は含んだまま、なんてことない表情でいる。奏真はギュッとまばたきし、泣きたいような気持ちで瀧本を見た。

 なんで、飲んじゃうんだよ……。

 ありえないと思う行為をあたりまえのようにしてしまう瀧本にやるせない思いでいっぱいになる。奏真が「抱っこ」と手を伸ばすと瀧本は身を起こし、すぐに強く抱きしめてくれた。頭を優しく撫で、愛おしげに髪にキスする。

 顔を持ち上げて瀧本を見上げれば優しい眼差しが待っている。「大丈夫か?」と気遣う瀧本に「うん」と返し、そのまま顎を持ち上げ唇を重ねた。ごめんねと思いながら、そっと舌を忍ばせ触れる。青臭い味がした。奏真の眉が歪む。それでもと一生懸命キレイに拭い取ろうとすると、瀧本が慌てて引きはがす。奏真の唇は舌を出したまま取り残された。


「そんなことしなくていいから」

「なんで?」


 瀧本さんはしてくれたのに……。

 眉を下げる奏真の頭を瀧本はナデナデと撫で、ニカッと笑う。


「ここで……。気持ちよくさせてくれるだろ?」


 瀧本の指の先が奏真のお腹を差した。ゾクッとくる誘いに我慢できなくなって瀧本の首に腕を回した。


「うん。もちろん」


 瀧本は奏真の額にチュッとキスすると上半身を起こし、準備のため棚に手を伸ばす。それに気付いた奏真は「ねぇねぇ」と瀧本の太ももを軽く叩き、コタツの上にあるコンビニ袋を指差した。


「あれ取って」

「これか?」

「うん」


 奏真は袋を受け取るり、中から小さな箱を取り出し得意そうに瀧本へ見せつけた。


「究極の薄さ。だってさ」

「……買ってきたのか?」


 奏真がニッコリと笑うと瀧本は目を丸くしてビックリした。

 なんで? そんな驚くこと? 

 奏真が小さな箱を持ったまま首をかしげると、瀧本が苦笑いした。


「お前、……堂々としてんなぁ。サンキュ」


 奏真は気にも留めていなかったが、確かにシャイな瀧本にすればとんでもないことなのかもしれない。


「別に変な顔とかされなかったよ?」

「まぁ……ある意味、正しいことだしな」


 瀧本が話しながら箱を開け、自身に装着する。それから慎重にゆっくりと捻じ込んでいく。あつい熱に奏真の口からは早々に艶っぽい声が漏れる。


「奏真……」


 自分を見下ろす瀧本を見上げながら思う。

 こんなの買うくらい全然平気だ。瀧本さんとずっとこうしていられるなら、構っていてくれるなら安いもんだよ。

 瀧本さんとずっとこうしていたい。


「いい……か?」


 すぐにいつも奏真の様子を気にしてくる。今までも決して乱暴にされたことなんて無い。激情の赴くまま激しくもしない。瀧本はあくまでも奏真が慣れるまで、焦らしてるんじゃないかと思えるほど、優しく動かしてくる。


「ん、気持ちい」


 瀧本は覆いかぶさると、さらに深くゆっくりと突き上げ高めていく。


「んあっ! っは、あ、っき、だよ」

「んぁ?」


 せっかく「好きだよ」と言ったのに、聴き取ってもらえず奏真は頼りなく情けない表情をムッとさせた。動きを止めてしまった瀧本の身体を引き寄せ、そのまま「よいしょ」と身体を起こした。瀧本の腕が背中に回り、起きるのを手伝ってくれる。あぐらをかく足の上に跨ったまま、瀧本の肩に手を置き顔を傾けてチュッと唇にキスをした。

 瀧本さんが大好き。俺だって、してもらうばっかりじゃなくて、してあげたい。

 奏真は下唇を軽く噛み、覚悟を決めた。自ら動き上下させる。体勢的にキツかった。初めてする動きにスムーズには動けない。そのうえ、強い刺激がガンガン内部に響く。腰が抜けそうだと思いながらも奏真は衝撃に耐えながら動き続けた。


「っ……やばいな」


 興奮した瀧本の声。嬉しいけど、また遠慮して止められるかもしれない。奏真は追い打ちをかけるように、深く口付ける。瀧本の吐息も、声も、理性も全部飲み込んでやろうと思った。

 瀧本が両手で奏真の腰をグイと掴み、サポートする。けれど、それは奏真にさらなる大きな刺激を与えた。キスの息継ぎの合間に奏真の高い声が漏れる。

 瀧本は奏真を強く抱きしめたまま、コントロールを失ったようにその一点に向かって擦り付ける。奏真の鳴き声が激しくなる。


「そう、ま。……、くっ、はぁ、はぁ」


 一度果てた奏真も刺激に煽られとっくに復活していた。体内の熱が一気に集まっていく。内側からパンパンに膨れる感覚。


「んうぅ! たき、もとさっ! ……また!」


 瀧本はギュッと身体を強張らせる奏真を倒し、その口を塞いだ。


「ンッッ! ンーーーーッ! う、ンンツッッ!」


 ドクン! と瀧本が弾けたのと同時に奏真も吐き出した。口がやっと開放される。空気を吸い込むと同時に、肺が潰れるんじゃないかと思う程強く抱きしめられた。


「……く、るし」

「あ、ごめんごめん」


 はぁはぁと息を切らしながら、瀧本が腕を緩める。汗で光る額。暗さに慣れた目に瀧本が優しく自分を見つめているのが分かる。


「あんまエッチだから、加減忘れてヤっちゃったよ……大丈夫か?」

「っは、ケホっ!」


 返事の代わりに咳が飛び出す。


「あはは。ちょっと待ってろ」


 奏真と己の後始末をすると、瀧本は全裸のまま台所へ行き、水を持ってきた。

横たわったまま動けないでいる奏真に渡そうとして、その手を引っ込める。


「ん?」


 奏真がポカンと見上げると瀧本は持って来てくれたコップの水を飲もうとする。呆気にとられていると奏真の唇を塞いできた。

 唇を薄く開くと、少しずつ口内に水が流れてくる。

 飲ませてくれるんだ?

 奏真は目を瞑り、流れてくる水を零さないようにコクコクと飲んだ。


「……まだいるか?」


 奏真がコクリと頷くと、瀧本は二度三度と繰り返し注いでくれた。うまく飲みきれなかった水が口の脇から溢れ奏真の頬を伝う。目を開け、それを手の甲で拭うと、瀧本はやっと自分もゴクゴクと水を飲んだ。


「早く、風呂付きのアパートに引っ越さないとだな」

「うん」


 奏真は静かに返事をして、微笑んだ。


「夏はいいけどよぉ。さみーだろ? したあとにシャワー浴びに行くの」


 瀧本は指折り数え、何かを計算する。


「今七月だろ? 給料が末だろ? 八、九、十……十一月には風呂付きのアパートに引越ししたいなぁ……」

「じゃぁ、物件。探し始めなきゃね」


 奏真の言葉に瀧本がニカッと笑った。横にゴロンと寝転がり、奏真の肩を抱くとグイと引き寄せる。


「そうだなぁ。おめーすぐに風邪引きそうだもんなぁ。極寒になる前に探そうな」


 俺、そんな弱くもないけど……まぁいいや。いよいよ念願の夢が現実として動き出すんだから。

 奏真はウンウン頷き、瀧本へギューッと抱きついた。瀧本は肩を抱いていた手で、奏真の頭を何度も撫でた。




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