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かわがとろけてもうむけた 草稿


   かわがとろけてもうむけた 草稿


 あたしがいなくなったって……誰も悲しむ者何ていないさ。

 それが彼女の口癖だった。

 どうせ財産目当てなのさ。

 それも彼女の口癖だった。

 彼女は女流と名乗って、様々な活動をしていたらしい……。

 わたしの知りえる彼女は、ほんの壱欠片(ひとかけら)に過ぎないのだから……。

 彼女はよくメモを取っていた。

 手当たり次第に書き殴るのだ。

 

「紙と、何か書くものない……?」


 それも彼女の口癖の(ひと)つだ!

 彼女の言う、書くものとは……?

 ペンでも、鉛筆でも、マジックインキ……エトセトラ。

 彼女の頭に(なの)か……? 心に浮かんだ言葉(なの)か……? 映像(なの)か……? 風景(なの)か……?

 わたしは彼女では無いから、分かりませんけどね?

 文字の暗号として(なの)か……?

 具現化したい為だけ(なの)か……?

 後で思い出す為の、依代でも残すかのように……。

 只管メモを取っていた記憶が、わたしには鮮明に残っていますね!

 あははははは……そう言えば!

 鉛筆の付いて無いコンパスの針の方で、カリカリしてた事もありましたね!

 本人も後から、鉛筆でシャシャシャってしてましたけど……何書いたんだか分かんないわね、(なん)て言ってましたっけね……。

 今となっては……良い思い出ですよ……。


「こちらになります!」


  かわがとろけてもうむけた


 彼女の残した最後のメモです。

 机に(うずく)まり、眠るように突っ伏していた彼女の傍ら置かれていたそうです……。

 いえ……第壱(だいいち)発見者は、わたしでは御座いません。

 そこは、シークレットにさせて頂きます。

 このメモですか……?

 意味分かりませんよね……?

 彼女と付き合いの長い、わたしもですからね!

 どうして最後に彼女は、この言葉を書き記したんでしょうね……?

 彼女が旅立ってしまった、今となりましてはね……。

 知るすべはもう御座いません……と、しか……。

 でもね……彼女はこの走り書きのメモが最後になる(なん)て、思って無かったのかも知れませんよ?

 ふと……思いついたのを、サラサラっと書いただけで……それ程に重要なものではなく、思いつきの(ひと)つだったのでは無いかと……わたしの意見としては、そう思っていますよ!

 まだまだ、沢山のものを具現化したかったのだと思いますけれどね……。

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