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鉄砂 草稿
鉄砂 草稿
「あの阿呆は……あれは、親の漆光ので売れておるだけだな……全く持って、見るに耐えないね」
「いいや! わしはそうは思わんね。確かに奴の藝は、稚拙じゃよ! 稚拙ではあるが……何かこう……温かさというかね……うん、そう! 親父には無かった何をかを、鉄砂は持っておる。あやつに引き寄せられる魅力があるんじゃな! わしはそれに賭けておるんじゃ!」
「名人の家系に生まれて、それも壱粒種だ! 小さい頃からプロになろうって仕込まれて……いわばそれも珠鋼に直々に習ったすればね? 私だって、あれ位は出来る様になりますよ?」
「多くの直々に習った弟子がおったが、誰もそこそこで守りにはいって大勢しとらんがな……いくら小さな頃から、名人に習ったとしたってねぇ……この演目は、お前さんにはどう足掻いたって出来ゃあしないよ! これは鉄砂自信の積み上げて来た生き様があって、持って生まれた器が満たされておるからこそ何だからねぇ! あははははは……」
「……」
記者はその後……何も言う事無く、面白くなさげに去って行く……。
次の日の朝刊の片隅に……いかに先代が素晴らしかったかを褒め讃えた後に、鉄砂への辛辣な酷評が数行小さく書かれていた。




