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第14話《ゲームと現実の狭間》

 ――通常、ゲームの世界と現実はきっちりとパラリアルになって、分かれている。どんなVR没入型でも、こっちの世界の感覚を持ち得ているし、例えHMDで視覚を塞ぎ、ヘッドで聴覚を鋭敏にし、マスクをしたとしても母親の作る魚料理は嗅ぎ取るし、足がむず痒くて意識が戻ったりもする。どんなに恋い焦がれても、ゲームの中で生きることは不可能だ。


 それが、どうだろう。まるでこの世界で生きているような感覚を憶える。実際の暁月優利は多分あのカプセルの中で寝ていると思うが。


 そういえば、足元が温かくて気持ちよかった。細いコードが無数に巻き付いて、脳を揺さぶられて、意識がこの世界に飛ばされた。


 ――やっぱり、ここは、virtual・reality。仮想現実どころじゃない。これは、現実と言ってもいい。


「ここ、VRの中ですか」

「そうだよ」

「俺、生身で異世界来たんですか」

「異世界じゃねーよ。ここはキャッスルフロンティアKK内のVRオフィスだ。ちょっと失礼」


 門奈計磨は優利の瞼を押し上げ、眼光を確認、口を開けさせて粘膜を確認、脈と足の筋肉を確認して、顔を上げた。

 すっくと立つと、門奈計磨は優利より背が高い。それもナイトフォースのアバターを着ているから、よけいに凛々しく見える。


「俺、まだ信じられないんですけど。ここはVRなんですね?」

「いや、現実だと思えば思える」

「どっちなんですか。物凄い衝撃与えておいて、俺の脳、飛び出してないですよね」

「あれは感覚を切断して繋ぎ直したからだ。普通は何か月も訓練をして、慣れてからちょっとずつVR酔いの対策をするが、きみには不要だな」


 いきなりVRに突っ込まれたことを思い出し、優利は「死ぬかと思った」とぼやいた。


「でも、死ななかっただろ? きみは電磁波数値が高いから。その分VRの視覚酔いもないのだろうな。通常の人間の滞在可能時間は三時間。そうでなければ、シーサイト業務は難しい」


 その、水族館のような名前はなんなんだろう。


「俺、あっちの世界に帰れるんですよね」「それは早く家に帰りたいと会社でだだを捏ねていることになる。PAIに聞かれたら、給料差し引かれて遺らないからな」


 何度も聞いても信じられず、優利は周辺を見回しては、門奈計磨に問いかけた。そのたびに門奈計磨は頷き返す。辛抱強いのかな、と思っていると、だんだん適当になってきたので、もうやめた。


 この目が、手が、全てが事実であると物語るから。


 色々聞きたいことはある。しかし、腕輪から微かに「勤務中」の文字が浮かんで見えるので、ここは会社なのだろう。と思っていたら、小さなMONAが飛び出した。


『新人くん、チュートリアル受けなきゃだめだよお』


「これ、ヴァーチュアス・ゴドレス・オンラインのキャラなんですか」


「いや、俺が作ったキャッスルフロンティアKKのボカロから出て来た女の子。過去にツインテールの女の子がはやったらしくてな、試しに作ったら社内で人気で。運営として、潜入捜査に使ってる。結構苦労して作ったんだぞ」


「ツインテールは正義です! どこに向かってるんですか?」


 門奈計磨は応えずに、一際大きな入口のドームに辿りついた。ところで、足を止めた。


「言い忘れていた。腕輪の左タッチ、それで風景が変わるから。押してみて」


 細い腕輪の左のタッチを推すと、立体型パネルが浮かび上がった。押す度に景色が変わるが、三つしかない。動物園らしき景観と、宇宙空間と、元の会社。

 宇宙空間で、ぼんやりと見えた塔を思い出した。


 が、今は何も見えない。


「着せ替えってアプリがあったのだが、その応用だ。VR技術のうちのひとつ。リアルタイム実写入力とホログラフィ電子手段。難しいことはともかく、チュートリアルを受けて来い、話はそれからだ」


お読み頂き、ありがとうございます。

気が向いたらブックマーク、評価★★★★★などもよろしくお願いいたします。

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