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ショートショート4月~3回目

せいていのあ

作者: たかさば
掲載日:2022/04/15

 一匹のカエルが叫んでいた。


「この世界は、狭すぎる!!」


 その声を聞いた神様が、カエルを井戸の中から連れ出した。


「この世界は、広すぎる!!」


 その声を聞いた蛇が、カエルをひとのみにした。


 カエルは蛇の生きる糧となり、短い一生を終えた。



 一匹のかえるが叫んでいた。


「この世界は、狭すぎる!!」


 その声を聞いた神様が、かえるを井戸の中から連れ出した。


「この世界は、広すぎる!!」


 その声を聞いた人間が、かえるをつかまえた。


 かえるは人間の慰み物となり、長い一生を終えた。



 一匹の蛙が叫んでいた。


「この世界は、狭すぎる!!」


 その声を聞いた神様が、蛙を井戸の中から連れ出した。


「この世界は、広すぎる!!」


 その声を聞いた宇宙人が、蛙を捕獲した。


 蛙は宇宙人の研究材料となり、一生を終える手段を無くした。



「この世界は狭すぎる!」


 試験管の中で、カエルは叫んだ。


「この世界は広すぎる!」


 造られた地球の上で、かえるは叫んだ。


「この世界はおかしい!」


 偽物の井戸の中で、蛙は叫んだ。



 カエルがどれだけ叫んでも、地球の神様には届かない。

 かえるがどれだけ叫んでも、地球の神様には何も響かない。

 蛙がどれだけ叫んでも、地球の神様には助けて貰えない。


 カエルの叫びは宇宙にこだまする。

 かえるの叫びは宇宙で響き渡る。

 蛙の叫びは宇宙を湧き立たせる。


 カエルの叫びは、ただの音色。

 かえるの叫びは、ただの見世物。

 蛙の叫びは、ただの魂の断末魔。


 カエルは叫ぶ、「なんで自分だけがこんな目に」

 かえるは叫ぶ、「他のやつらは幸せに暮らしているのに」

 蛙は叫ぶ、「この運命を与えた神を一生恨んでやる」

 カエルは叫ぶ、「かわいい蛙と出会いたかった」

 かえるは叫ぶ、「楽に裕福に遊んで暮らしたかった」

 蛙は叫ぶ、「この運命を与えた神を一生恨んでやる」

 カエルは叫ぶ、「一番不幸なのは自分だ」

 かえるは叫ぶ、「幸せに生きてるやつらが恨めしい」

 蛙は叫ぶ、「この運命を与えた神を一生恨んでやる」


 生まれた場所に不満を漏らしたカエルの末路。

 新天地に不満を漏らしたかえるの末路。

 どこに行っても不満を漏らす蛙の末路。


 カエルの言葉を知らない宇宙人は、カエルの叩きつけた音をなんとも思わずに聞いている。

 かえるの感情を知ろうとしない宇宙人は、かえるの吐き出した音を心地よく聞いている。

 蛙の生まれた意味を知るはずもない宇宙人は、蛙の絞り出した音を喜んで聞いている。


 カエルの言葉を知る神様は、カエルの叩きつけた音をただ聞いている。

 かえるの感情を知る神様は、かえるの吐き出した音をただ聞いている。

 蛙の生まれた意味を知る神様は、蛙の絞り出した音をただ聞いている。


『この世界は、狭すぎる!!』


 神様が、声を、聞いた。


 神様は、一人の人間を、つまらないしがらみの中から、連れだした。


『この世界は

「誰か!助けてくれ!!」

「こんな世界はもう嫌だ!!」

「帰りたい、帰りたい、地球に帰りたい…」』


 人間の声に、宇宙の果てから届いた叫び声が重なった。


 狭い世界から連れ出された人間が、何をつぶやいたのかはわからない。


 うるさい叫び声が聞こえるせいで、人間たちは中途半端に生きている。


 ……うるさい叫び声が聞こえなくなった時、人間たちはどうなってしまうのだろうね?


 ぼそりとつぶやいた神様の声は、誰にも届くことはなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] カエルさんは、井の中にいますからね。ほんと、世界はね、広いですよー。ほんと。でも世間は狭かったりしますけどねー。
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