第2章~待ち合わせ場所で受信したメール
「どうも、皆早いですね」
「俺は20分前に来たよ」
「こっちは25分前には来たよ」
男性メンバーと落ち合えたところで、ぼくが下見に行っていた事を伝えると、幹事の洋一君は一足先に下見に行っていた事が分かりました。
会場までの道も把握したし、これで準備万端だと思いました。
あとは女性メンバーが来るだけでした。
待ち合わせ時間の10分前になると、洋一君の携帯電話にメールが来ました。
「男性の方は全員揃っていますか?」
「さっき、全員揃いましたよ」
「待ち合わせの場所は改札の外ですが、どの辺にいますか?」
「改札を出てすぐ左側の柱の近くにいますよ」
「そこから、みどりの窓口の前に移動出来ますか?」
「了解です、みどりの窓口の入口側ですか?」
「そこではなくて、改札の真向かいにあるパンフレットのラックがある場所でお待ち頂けますか?」
「了解です、ところで、女性メンバーはあとどれくらいで着きますか?」
「もうちょっとで着きますので、着いたら合流しますね」
「了解です、指定された所にいますね」
男性メンバーは、みどりの窓口の前に移動しました。
それから3分位経ってから、またメールが来ました。
「待ち合わせ場所では分かりやすいように、皆さん改札の方を向いていて下さいね」
「分かりました」
「あと、帽子をかぶっている人は取るように言って下さい」
「分かりました」
「あと、なるべく顔を前に向けて並んでいて下さいね」
「了解です、そうするので着いたらメール下さいね」
その時の並び順が、改札側から見て左側より、洋一君、直之君、ぼく、宏一君でした。
18:30分迄あと5分というところで、顔を正面に向けたまま隣の人と話すというのが、けっこうキツい事に気付きました。
「何の為にこんな事を…」
と、思いましたが、
「あと15分位で合コンでワインが飲める」
と、思って我慢しました。
そして、18:30分迄あと1分というところでメールが来ました。
「待ち合わせ場所にいる4人を近くで見ましたが、私達が交際したいと思える方がいなかったので、合コンするに値しないと判断したので帰ります」
そのメールを見た途端、幹事の洋一君の顔が青ざめました。
「おい!どうしたんだよ」
「そのメールを早く見せろよ!」
洋一君は、力なく皆にメールを見せると、
「おいおい、マジかよ!」
「この近くまで来ててすっぽかしかよ!」
「でも、俺らを近くで見ていた4人組なんていたか?」
「洋一君は4人の中で何人の顔を知っていたの?」
「いつも連絡を取り合っていた1人だけだよ」
「その人は何て名前なの?」
「瑞希さんって人だよ」
「で、その人を見かけていないの?」
「いたら分かるけど、他の3人だったら分からないよ」
「じゃあ、俺らの事を面が割れていない3人を使って、別々に偵察してたって事か」
「最大で3人だけど1人かもしれないけどね」
「だから帽子を取れだの、顔を正面に向けろとか言ってたのか…」
ちなみに、帽子をかぶっていたのはぼくでした。
待ち合わせ場所の周りにいた人々は、怪しいと言えば皆怪しく見えました。
男性メンバー全員、怒りと切なさとやるせなさが入り交じった状態でした。