第2章~幹事から言われたルール
合コンの当日、30分前に待ち合わせ場所に行くと、ぼくが一番乗りでした。
男性側幹事の秀明君から、少し早めに待ち合わせ場所に来るように言われていたからでした。
ぼくが着いてから5分後に秀明君が来ました。
「よっ!早いな」
「何か早く着いちゃったんだけど、やる事がないからとりあえず来ちゃいましたよ」
「うんうん、分かる分かる」
「あと10分位、そこの家電屋で暇つぶししてからまた来てもいい?」
「ちょっと待ってよ、今回の合コンは男女共に幹事がいるのは聞いてるでしょ」
「なんとなくね…」
「その場合、幹事1人だけの時とルールが違うんだけど知ってる?」
「さあ…知らないかな」
「じゃあ手短に説明するからね」
「うん、分かったよ」
「合コンの自己紹介が終わって、メンバーと好みがかぶった場合は、幹事に優先権があるって事だよ」
「へ~、そうなんだ」
「それが男性だけでなくて、女性の幹事も同じなんだよ」
「それはどうやってメンバーに情報を流すの?」
「定番だと、正面左側から1番、2番…と数えていくんでその番号を伝えるんだよ」
「ふ~ん、じゃあ幹事が4番目の人を気に入った場合、どうやって合図するの?」
「それがさ、前の合コンではテーブルの下で指を立てて伝えたら、皆で下ばっか見て怪しまれたんだよな…」
「じゃあ、今回はどうするの?」
「自己紹介が終わったら何本か指を立てて頭を掻くから、その本数で判断してよ」
「分かったよ、じゃあその番号以外の人とは普通に合コンが出来るって訳だね」
「そうそう、この事は他のメンバーにはメールで伝えてあるから」
女性側幹事も好みを伝えるのに何らかの合図を出してくるのだろうけど、まずは秀明君が頭を搔くところを見逃さないのが先決だと思いました。
待ち合わせ時間の5分前になると、全員集まりました。
秀明君と女性側幹事の方が少し話をしていましたが、
「あの、ここから3分位歩いた所にある居酒屋に行きますんで」
と、秀明君が言うと、皆は無言で付いて行きました。
居酒屋の広めの席に通されると、少しホッとしました。
すぐさま、飲み放題メニューのお酒とフードを注文して、お酒が全員に行き渡ったところで乾杯をしました。
お酒を少し飲んだところで自己紹介になりました。
自己紹介は席の並び順で男性側から、秀明君、直之君、ぼく、達矢君、徹平君という順番で回していきました。
次は、女性側幹事の奈津美さん、佳恵さん、美々子さん、小明さん、梨子さんの順番でした。
奈津美さんと佳恵さんと美々子さんが同じアルバイトの仲間で、小明さんと梨子さんは高校の時の同級生、奈津美さんと小明さんと梨子さんがライブに行く仲間でした。
梨子さんが最後の自己紹介をしている時、すぐ後に秀明君からの合図がある筈でした。
なので、秀明君の手ばっかりに意識がいってしまって、梨子さんの話した内容はほとんど頭に入ってきませんでした。