第3章~炎上の後始末(第5部完)~最終章
値引きの交渉の為、携帯電話で話していた航弥君は戻ってくるなり、
「いやぁ~、部長は渋っていたけど何とかセール価格の3割引にしてもらったよ!」
「ただ、3000円以上買ってくれた場合だけどね」
と、上機嫌で話していると、
トイレから戻ってきた直之君が、テーブルの上のデパートのチラシを見て、
「あのね~、航弥君さ~」
「今どうしてもそれさ~、話さないとならない訳なん?」
「前に注意したよね~」
と、呆れた感じで言うと、今度は澪さんが更に付け加えました。
「私達は短い時間の中ではあるけど、ちゃんとした出会いを求めてここに来ているのよ!」
「あなた合コンの意味分かってる?」
すると、そこで航弥君の決定的な言葉が飛び出しました。
「澪さんさ~、出会いを求めてんならデパートのセール商品を2万円以上買ってくれたら、ちょっとは付き合ってあげてもいいぜ!」
「あっ、それでも1日だけだからな」
「俺には彼女がいるからな」
「そもそも、こっちは女には困ってなかったんだよ!」
さすがに、その言動に新美さんが怒りに震えながら、
「こんな最悪な合コン今までで初めて!!!」
と、叫ぶと、織重さんが澪さんに対して申し訳ない気持ちで、
「私が無理に合コンに誘ったせいで…、ご、ごめんなさい…」
と、言って、涙目で謝罪をすると澪さんは、
「悪いのは織重ちゃんじゃないから」
と、言って慰めてくれましたが、手が少し震えていました。
さすがに場違いな雰囲気を察したのか、航弥君はテーブルに5千円を、
「バーン!」
と、叩き付けて、
「こんなクソつまんねぇ合コンなんかに呼びやがって!」
と、吐き捨てて、足早で帰っていきました。
あまりに衝撃的だったので、暫く全員、
「しーん………」
と、静まり返っていました。
その後はというと、女性メンバー3人から直之君とぼくは、
「何であんな奴連れてきたの?」
「ゴメン…今回は完全に俺の人選ミスだったよ」
「これで澪さんが2度と合コン来なくなったら本当恨むよ!」
「本当にすいませんでした…」
「あ~あ、物凄い無駄な時間にしてくれたものね」
「今日は嫌な気持ちにしかならなかったじゃない!」
「これ、今日だけじゃなくて明日以降も引きずるよね」
…とか、散々説教される羽目になりました。
会費は7:3で男性側が多く払う予定でしたが、今回は完全に男性側の落ち度だったので、全額支払う事になりました。
1人4500円だったので、航弥君が置いていった5000円と、ぼくが2人分の9000円、幹事の直之君は13000円支払いました。
ぼくと直之君は、後ろから頭をひっぱたかれたかの様な感じのまま、とぼとぼと駅に向かって歩きました。
別れ際で直之君が言いました。
「いつも幹事をしてくれる秀明君や洋一君に代わって、今回俺が初めて幹事をやったんだけど、本当にダメだったな…」
「いやいや、よくやっていたと思うよ」
「クソッ!航弥があんな奴だとは思わなかったぜ…」
「合コンメンバーは少なくともフリーの人同士でやらないとね」
「そうだな、じゃないとまともな合コンにすらなりゃしない…」
「会費いっぱい払わしちゃったけど大丈夫?」
「うん…それは幹事だから仕方がないよ」
「だけど、今回はお金よりもタイプの女性がいたのが悔やまれるよ」
「分かった!織重さんですよね?」
「いや、俺と年が近くて落ち着いた人がいただろ」
「あ~、澪さんか~」
「俺も28才だし、いつまでもバカやってられねえからな…」
「あっ、でも澪さんと織重さんが働いているお店なら知っているよ」
「三ノ輪駅から徒歩数分にある大型スーパーの、下着、ナイティーコーナーだよ」
「マジで!よく聞き出せたな」
「ところで、ナイティーって何?」
「パジャマの事だよ」
「あれだったら、今度お客さんとして売り場に行ってみたらどうかな?」
「パジャマを買ってあげたら喜ぶんじゃない?」
「バカ!行ける訳ないだろ!」
「少しは空気を読めよ!」
「ゴメンゴメン!悪気はなかったからさ…」
直之君は、初幹事の合コンが失敗して悔しそうに帰って行きました。
あーあ、同性から合コンをぶち壊された上、直之君はヤケド(自分が傷つくような恋)しちゃってたんだ…。
澪さんも次の合コンには多分出ないでしょう。
年下の女性メンバーの中では、居づらそうにしていましたから。
ぼくは、直之君の姿が見えなくなってから電車に乗って帰りました。
合コンの場では、セールスや勧誘は皆に迷惑がかかるので、絶対に止めてもらいたいですね。
昔、合コンで男性メンバーの1人がずっとセールスの話をしていた為、注意したらキレて帰られ、女性メンバーから説教された時の思い出です。
第1部~第5部まで続いたお話はこれで終了です。
最後までお読み下さいまして、誠にありがとうございました。
きつねあるき
1部~5部に渡った、今回のお話はいかがだったでしょうか。
合コンで嫌な思いをするのは定番でいくつかあるので、想像が出来る範囲だったでしょうか。
それとも、時代背景が令和3年より25年位前なので意外な点もあったでしょうか。
会費に関しては、前金制が一番いいですね。
今では同意事項で厳しく制限されている、合コンでのセールス、勧誘も、昔はよくありました。
今は、合コンもいろいろと様変わりしていますね。
メイド喫茶で、女性メンバーが全員メイド服をレンタルして、合コン専用スペースで男性メンバーと合コンする、なんてのもありますね。(男性は普段着ですが)
話を戻しますが、合コンで明らかに集団行動を乱す人がいると、その後必ず悪い結果になりますね。
メンバーを選定する時も、過去によろしくない言動や行動をする人がいたら、メンバーから外す事も出来ますが、初対面だとどうしようもない事がありますからね…。
合コンの時、相手の話をよく聞いてくれる方は好感を持てますね。
短い自己紹介や、最初の方に話した会話を覚えている人って素敵ですね。
たまに、女性メンバーで、
「網タイツはいてきました~」
と、言って、ちらっと太ももを見せてくれる方がいますが、サービス精神旺盛ですよね。
一方、合コンの時にお相手の名前を途中で忘れてしまった時は、何か焦りますよね。
あと、お相手のメンバーの顔や体型が不満で、乾杯の前からふてくされている方は、早々に帰ってもらった方がベターでしょう。
合コンは一席だいたい2時間位だと思いますが、最初にスパートをかけ過ぎると、後半無言のまま微妙な空気で終わりますよね。
やはり、事前にネタを考えておかないと会話が続かないですね。
今後、皆様が参加する合コンで嫌な事が起こらないよう祈りつつ、この辺で終わりたいと思います。