第5部~25才の時の合コン、第1章~全員に配られた名刺
このお話で最後になりますが、1997年(平成9年)ぼくが25才の時の事です。
ぼくが今まで行った合コンで、20代前半の年齢だと女性側のすっぽかしや逃げられる事もそこそこ有りましたが、25才を過ぎる頃になると女性側の出席率が格段に上昇して、かつ真剣にお相手を探している方も多くなってきました。
恐らく、30才迄に結婚したいと思う女性が多いからだと思います。
実際に30才前後で結婚される女性が多いですからね。
今までほとんどお付き合いをされてこなかった方も、25才位で結婚に向けて勝負に出てくるのでしょう。
結婚相手は、理想のお相手というより適齢期にお付き合いしていた方というのが一般的なのかもしれません。
あまり高望みしていると縁遠くなるので、どの辺りで区切りをつけるかが運命の分かれ道なのでしょう。
25才を過ぎると、ぼくにも合コンで優しく接してくれる女性が現れ始めました。
ただ、ぼくが25才を過ぎた時にも嫌だった合コンがありました。
その時の出来事が、今回のお話になります。
それでは、本題に入りたいと思います。
友達の直之君から、週末に池袋駅近くの居酒屋で開催する合コンに誘われました。
午後18時30分~2時間で、3対3の合コンでした。
「最近、なかなか男性メンバーが集まらないんで来てくれないかな?」
「その日は予定が無いから別にいいけど」
「そうか、助かったよ」
「わざわざ出掛けて行ってすっぽかしはないよね?」
「それはないよ、だって今回は向こうが乗り気なんだから」
「確かにね、25才を過ぎてからぼくの顔や体形が大きく変わった訳でもないのに、真面目に話を聞いて答えてくれる人が増えたのは感じていたよ」
「趣味も変わっていないのにな」
「20代前半の時、必死にもがいていたのが何だったんだろうね」
「まあ、見た目良くてもあんまり若いのは要注意なんだろうな」
「皆からちやほやされて、いい気になっている時期だからね」
「うちらもダラダラしてないで、決めるとしたらそろそろなんじゃないか?」
「そうだね、ただの飲み会にはしたくないよね」
「じゃあ、週末よろしくな」
と、言われ電話が切れました。
男性メンバーは、幹事の直之君、直之君と3才年下で最近知り合ったという航弥君とぼくでした。
25才位になると、皆さん仕事が忙しくなり、メンバーを揃えるのに一苦労するそうです。
今回の合コンは、女性メンバーからの希望で開かれたものでした。
女性メンバーは、幹事の新美さんと、新美さんの飲み友達の織重さん、織重さんの職場の先輩の澪さんでした。
直之君と新美さんは、最近の合コンで知り合ったそうです。
その合コンが盛り上がったので、今回の合コンに繋がったのです。
合コンが始まると、お決まりの自己紹介から始まりました。
順番は女性側幹事の新美さん、織重さん、澪さんと回ってきて男性側に移りました。
男性側幹事の直之君が自己紹介をしたまでは良かったのですが、次に自己紹介した航弥君が簡単に自己紹介すると、女性メンバー3人に名刺を配り始めました。
「航弥君気合入っているな~」
と、思っていると、今度は男性側にも名刺を配り始めました。
「んっ、おいおい…こっちは名刺を貰っても仕方がないんじゃないかな?」
…と、思っていると航弥君が、
「実は俺、デパートに勤めているんだけど、今セール中なんですよ!」
「今月の30日迄は普通だと2割引きだけど、この名刺を売り場で見せると3割引きにしてあげるよ」
…と、言うのです。
航弥君の合コンと全く関係ない話に、女性側3人は暫くしてから、
「えっ…」
…と、呟くと、今度は航弥君がしかめっ面をしながら、
「う~ん・・・この名刺を見せると3割引になる話はいいと思ったけどな~」
「よ~し、分かった!この名刺を売り場に見せた後に、神谷部長を指名してくれればセール価格から更に値引きしてあげるよ!」
と、言ってデパートのチラシを広げ始めました。
そこで、ぼくは堪えられなくなって言いました。
「あ、あの~、まだぼくの自己紹介が終わっていないんですけど…」
と、言うと、航弥君が不機嫌そうに、
「あっ、そう!そんなら自己紹介しちゃっていいですよ」
と、言うので、ぼくは簡単に自己紹介しましたが、それが終わるとすぐに航弥君はデパートのチラシを広げて、おすすめの商品の説明をしたのです。
新美さんが仕方なくセール話に付き合うと、航弥君は機嫌が直りました。
「織重さんも澪さんもご一緒にいかがでしょうか?」
「男性の方にも、とっておきの商品がありますよ」
「買って損はないですよ~」
と、滑舌良くセールの良さをアピールしました。