第1部~20才の時の合コン、第1章~不機嫌な1人の女性
皆様は、合コンではどんな思い出がありますか。
自己紹介の順番が回ってくると、緊張した事もあるのではないでしょうか?
合コンにおいて、気に入った方がいる場合とそうでない場合があると思いますが、後者の場合でもあからさまに皆が不快に思うような態度を取ってはいけませんね。
初対面同士の場合は会話が止まりがちになりますが、そこを盛り上げられるかどうかがキーポイントでしょう。
合コンではお互いの感情がぶつかり合うので、良い方に転がれば楽しいですが、そうでない時は残念な結果になりますね。
今回のお話は、合コンが成立、不成立した時、両方で嫌だった出来事を全5話に分けて書いていきます。
それでは、第1部よりお進み下さい。
このお話は、1992年(平成4年)ぼくが20才の時の事です。
ぼくは大学生で、アルバイトはしていたものの、あまりお金は持っていませんでした。
ぼくの友達も充分にお金を持っている人は少なかったです。
携帯電話の本体が高額だったので、まだ1人1台持っていませんでした。
この当時に合コンをする場合は、男性側か女性側の携帯電話を持っている方がセッティングしていました。
合コンは、3対3~5対5で行う事が多かったです。
携帯電話は本体はおろか通話料も高額だったので、普段友達との連絡は固定電話でしていました。
携帯電話を使用する時は、通話料の高さがネックで1分以内といった感じでした。
そんな折に、友達の秀明君から4対4の合コンのお誘いがありました。
合コンは、週末新宿にある居酒屋で、午後7時~2時間の予定でした。
当時、ぼくは携帯電話を持っておらず、携帯電話を持っている友達の洋一君と同行して待ち合わせ場所に向かう事になりました。
合コンの幹事は秀明君で、もう1人は秀明君の友達の直之君でした。
男性側で携帯電話を持っているのは、幹事の秀明君とぼくの友達の洋一君の2人だけでした。
ぼくは合コンの前日に固定電話で秀明君と話しました。
「明日来る女性メンバーとはどういう知り合いなの?」
「晴美さんって人とは理容学校の同期生だよ」
「1回飲みに行ったら、おかまバーに行ってみたいって言われて先週行ってきたんだよ」
「おかまバーってどこにあるの?」
「新宿2丁目だよ」
「もしかして興味ある?」
「いや、ぼくは止めておくよ…」
「あの界隈にある小さい公園には行かない方がいいよ」
「ベンチに座っていると、おじさんが隣に座って手を握ってくるんだよ」
「それでどうなるの?」
「その手を握り返したら交渉成立って事だよ」
「マジで!それは気を付けないとな…」
「大分話が逸れたけど、晴美さんの希望を叶えたから今度は合コンしようって言ったらOKしてくれたんだよ」
「でも、それでけっこうお金使っちゃったから、低予算でって事になったんだよ」
「その方がぼくも有難いよ」
「じゃあ、明日ね!」
ここで電話が切れました。
当日待ち合わせ場所に行くと、すぐに全員揃ったので予約した居酒屋に向かいました。
午後7時から合コンがスタートした訳ですが、最初に定番の自己紹介から始まりました。
幹事の秀明君→直之君→洋一君→ぼくときて、次に晴美さん→恵美さん→奈江さん→翔子さんと続いた訳ですが、それが終了すると各自フリートークになりました。
その時の女性側メンバーの関係性は、晴美さんの友達の恵美さん、恵美さんの親友の奈江さん、恵美さんと翔子さんは知り合って3ヵ月という間柄でした。
晴美さんと奈江さんは、この時初めて翔子さんに会ったようでした。
ちなみに、女性メンバーで携帯電話を持っていた方は、晴美さんと翔子さんの2人だけでした。
男女それぞれのメンバーが面白い話をして盛り上がっているのに、1人だけつまらなそうにしていた方がいました。
それは翔子さんでした。
その時、翔子さんは頻りに時間を気にしていました。
それに、会話も全く弾みませんでした。
会話の内容はこんな感じでした。
「翔子さんの趣味は何ですか?」
「趣味はありません…」
「翔子さんは休日何をしていますか?」
「何もしていません…」
「その髪型きれいですね」
「個人的にはあんまり気に入ってないです…」
「最近イタリアンに行ったりとかは?」
「いいえ、基本私は会社と家の往復です…」
という感じで、翔子さんとは全く会話が続きません。
何を聞いてもロクな返答がないので、話しかけにくい状態でした。
翔子さんとは、暫く誰も話せなくなっていました。
しかし、合コン開始から30分が経ったところで、翔子さんが沈黙を破ってこう言いました。
「あ、あの~、皆さん聞いて下さい!」
「何でしょうか?」
「私は門限があるので、午後9時前にはここを出ないとならないんですが…」
すると、幹事の秀明君がすかさず、
「今日の合コンは午後9時迄のコース料理だから9時にはここを出れますよ」
と、言うと翔子さんは、
「それよりも、早くここを出たいんですが…」
と、言うので秀明君は一瞬目を閉じた後に、
「それなら皆さん!今日の合コンは午後8時30分迄にしませんか?」
「翔子さん、8時30分迄なら大丈夫でしょう?」
と、言うと、翔子さんはホッとしたような感じで、嬉しそうに頷きました。