3.悪役令嬢と授業ノート
ついに始まる授業!
マリアンヌはリリアーヌに無事嫌がらせをすることが出来るのであろうか!?
衝撃の自己紹介が終わり、リリアーヌへの殺意をより一層高めたマリアンヌ達は、しかし平凡に授業を受けていた。
「あの平民娘、一体どうしてくれましょう?」
「そうですわね、いくら魔法適性が高いとは言え、ああも見せびらかすというのは」
「そうそう、適性はあくまで適性、重要なのはどれだけ使いこなせるかですわ」
「ええ、そうですわね。私たち貴族は幼い頃から魔法に関する教育を受けていますが、平民娘には魔法の教師などいなかったでしょうしね」
「その通りですわ。そういえばあの平民娘、特待生とのことですわよ」
「ほう、なら、彼女の成績が下がれば特待生の資格も無くなり授業料免除も無くなりますわね」
「そうなれば、あの平民娘はとてもこの学園には通えないでしょう。平民で通えるのはある程度以上の富豪だけですからね」
「では、当面は彼女の成績を下げる方向で行きましょう。そして成績が下がり、特待生の資格が怪しくなってきたら次の段階へ」
「「はい」」
なお、今はもちろん授業中である。
だが教師達は彼女たちの影響力を考慮して気にしないようにしている。
そうして数日後。
魔法陣の講義が終わった後にマリアンヌ達は動くことにした。
「あらあらあら、こんなみすぼらしい物を教室に持ち込むなんて、一体何を考えているのかしら?」
そう言いながら、マリアンヌが汚らわしい物でも摘まむように持ち上げた物はお世辞にも綺麗とは言いがたいノートだった。
「あっ、あのっ・・・」
突然自分のノートを取り上げられたリリアーヌはノートへ手を伸ばそうとするが、しかしマリアンヌ達が睨み付けるとその動きは止まってしまった。
「ここは高貴な者たちが通う学園でしてよ?このようなみすぼらしい物は持ち込まないでいただきたいですわ」
「そうですわ、せっかくですから私たちで処分して差し上げましょう」
「それは良いアイデアですわね。では早速」
ビリビリビリッ
「炎よ」
ボウッ
「風よ」
ヒューゥ
「これで綺麗になりましたわね」
リリアーヌのノートは無残に破かれ、燃やされ、灰は丁寧にくずかごの中へと運ばれたのであった。
この一連の行為をリリアーヌは顔を真っ青にしながらただ見つめているだけであった。
「ふぅ、せいせいしましたわ。目に付く度に気になっておりましたので」
そうしてリリアーヌの青ざめた顔を見て少し満足したマリアンヌ達が、良い笑顔で立ち去ろうとした瞬間、
「あ、ああ、ありがとうございました!!!」
リリアーヌがいきなり立ち上がり、お辞儀をしながらお礼を言ってきたのであった。
「「「・・・え?」」」
ちょっと何を言っているのか意味が分からない。
そこはクヨクヨ落ち込むか、怒鳴り散らかすか、どちらかでしょう?
なのにこの平民娘ときたら!
あろうことかお礼を言い出したでは無いですか!
怒りや戸惑いが渦巻き反応が遅れたマリアンヌ達にリリアーヌはたたみかけてきた。
「このご恩は一生わすれましぇん!」
おい、今わざと噛んだだろ?
あと『おん』は恩ではなく怨のほうですよね?そうですよね?
口がうまく動かなかったので、せめて心の中で突っ込むマリアンヌ達であった。
もちろん、この後他のクラスメイトがマリアンヌ達の憂さ晴らしにあったのは言うまでも無い。
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