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2.悪役令嬢とホームルーム

入学式終了後、生徒達はそれぞれのクラスへ移動した。

クラス決めは成績順、故にそれは必然の出会いでもあった。


「あの平民娘と同じクラス・・・」


ピシッ

手に持っていた扇子から嫌な音が響いたが、マリアンヌは気にしなかった。


「というか王太子、A組に居ないのですか・・・」


さすがに次期王の成績が悪いのはヤバいのでは?

ちょっとこの国の将来に不安を抱いたマリアンヌであった。

ちなみに取り巻き2人は同じクラスである。


「まぁでも、この学園では勉強だけ出来ていても卒業は出来ませんからね」


「ええ、貴族なら誰でも幼少期から受けている魔法教育」


「この成績が良くなければあっさりクラス落ち、悪ければ卒業前に退学ですわ」


だから教壇で先生が何かを言っているが気にすることなく、勝手に陣取った教室の一番後ろで堂々とおしゃべりしていた。

それはさておき、このホームルームでは自己紹介の他にも魔法適性の検査がある。

貴族であれば幼少期に受ける適性検査だが、ごく稀に変化する者が居るため定期的に行われる。

平民はまず受けることが無く、学園への入学が決まった後や、官僚や騎士への配属が決まった際に受ける程度である。


魔法の適性は6つ。

基本となる火水土風と、光闇。

大抵の人は火水土風のうち1つに高い適性を持ち、他は平均以下となる。

偶に光闇に高い適性を持つ者が現れるが、高いと言っても火水土風ほどは高くならないし、光なら闇、闇なら光の反する属性の魔法適性が全くない。

またごく稀に非常に高い光適性を持つ者が現れると、その人は聖人、あるいは聖女と認定され、その国における修道会の名誉最高位を受ける。

逆にごく稀に現れる非常に高い闇適性を持つ者は、必ずと言って良いほど歴史に名を残す。

冷血女帝カトリーヌ、残虐王ザザブ、鉄血宰相モンゴーレはその筆頭で、その名の通り非常に優秀だが冷酷さもそれ以上だった。

そしてこのマリアンヌの魔法適性はというと、


「私はヘンリー公爵家のマリアンヌですわ。皆様、よろしくして差し上げますわ。そして私の魔法適性は」


そういってマリアンヌは目の前の水晶に手をかざすと、水晶からは黒い光が強くあふれてきた。


「見ての通り、強い闇属性でしてよ。いずれ、かの冷血女帝を超えるのが目標ですわ!」


そう言って、自分の席へと戻っていった。

途中でクラスメイトの「噂は本当だったのか」「冷血女帝の生まれ変わり、か」「目を付けられないようにしないと」という囀りを聞いて、マリアンヌは気分が良くなっていた。


「相変わらず強い闇適性ですわ!」


「本当に、マリアンヌ様にふさわしい適性ですわ!」


「もう、そんな本当のことを言わないでちょうだい。ふふふ」


取り巻きのヨイショも受け、ますます気分が高ぶるマリアンヌ。

そうして取り巻き達の自己紹介と魔法適性の検査も終わり、最後はあの平民娘の番になった。

平民娘が教壇に上がると、周囲のクラスメイトは皆厳しい目を平民娘に向けていた。

それも当然だろう。

勉学だけならごく稀に優秀な平民が現れるが、それが自分たちの同期となればプライドが酷く傷つく。

その鬱憤を晴らすかのごとく、皆の視線はどんどん厳しくなっていた。

そしてこうも思っているのだろう。


所詮は平民、魔法適性は火水土風の中の最高適性でさえ中位に届くかどうかだろう。


と。

総じて高位貴族ほど適性値は高くなり、下位貴族では偶に高位適性を持つ者が現れるが大抵は中位どまり。

平民に至っては、ごく稀に冒険者や傭兵として大活躍をする者は高位適性を持っているが、それ以外のほぼ全ての人は中位にすら届かない。

この学園では魔法の能力も非常に重要視されており、能力が低すぎる者、高くても使いこなせない者はもれなく途中退学となっている。

貴族であれば誰でも試験を通れば入学できるが、稀に能力が低すぎる者が居て途中退学となっている。

適性値が比較的高い貴族でさえ能力不足と判断される事があるこの学園。

はたして平民娘の適性値は?

低ければ低いほど良い。

そうなれば途中の授業では間違いなく格好のいじめ対象となるだろう。


「さて、彼女の適性はどの属性かしら」


「水なら私と同じ授業になることが多いので、ありがたいのですが」


「土なら私がご一緒できますわね、ふふふ」


緊張からかガチガチに固まったまま動かない彼女を見ながら会話を弾ませるマリアンヌ達。

すると平民娘がこっちを見た後、何か驚いた様子を見せ、次の瞬間


「わ、わ、わたしはリリアーヌと申しましゅ!よよよろしくお願いしましゅ・・・」


噛み噛みの自己紹介。

そして教壇に置いてある水晶に手をかざすと


「えっ、ええぇぇえええええ???」


教室中が闇で覆われた。








「・・・えっ??」


いち早く立ち直ったマリアンヌは思わず


「その水晶から離れなさい、この平民娘が!」


いらだちを声に出してしまった。

まさか、私以上の闇属性適性者とは!

というかあの平民娘、あんな言動をしておきながら私以上に極悪な性格だというの!?


そう。

光属性の高位適性者は聖人聖女と呼ばれ、闇属性の高位適性者は冷血残虐と呼ばれるほど、必ずその性格と属性が一致していた。

中位まではそれほど関係性が見られないが、高位になった途端、性格と魔法属性が関連していたのであった。

つまり、今あの平民娘はこの自己紹介にて、


私、言動はたんなるおっちょこちょいの平民娘にしか見えませんが、それはあなたたちの目が節穴だから。

本当の私がこんなにも真っ黒だって見抜けた人、どれだけいるのかしら!


と、私たち全員に挑戦状をたたきつけてきたのだ!


勉強でも魔法適性でも負けている貴族?

さらに人を見る目も無いのなら何が残るのでしょう!


闇が収まって現れたクラスメイトの顔つきから、彼らも私と同じ結論に至ったのでしょう。


「この平民娘が、こけにして・・・」


今までこんなにも胸の奥が熱くなったことは無い。

純粋な殺意。

それ以上に、何としてでもこの娘の絶望顔を見たい!


「「ひっ!」」


側に居たヘレナとソーニャが悲鳴を上げた。

おそらく今の私の顔が恐ろしかったのだろう。

そう、私の目標は冷血女帝カトリーヌを超えること。

その踏み台として、あの極悪平民娘を何としても・・・!


怒りが頂点に達していたマリアンヌは平民娘をにらみ続け、ヘレナとソーニャはそんなマリアンヌに気をとられていた。

だからリリアーヌが発した台詞に彼女たちが気がつかなかったことも仕方が無いのかもしれない。

そしてその台詞を聞いた他のクラスメイトが、奇異な目でマリアンヌ達をみた事にも気がつかなかった。


お読みいただきありがとうございます。

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