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ヒロインちゃんと学園入学

お父様、お母様


私は無事学園に入学することが出来ました。

小さい頃からいろいろなことを教えてくれたおかげです。

学園でも頑張って勉強していきます。

奨学金をもらうために成績を維持しないといけないため、あまりお家には帰れないと思います。

あと、入学試験での結果が良かったので代表挨拶に選ばれました。

非常に簡単だった1問以外は苦労したけれど、おかげできちんと解けていたみたいです。

帰ったらまた冒険譚聞かせてください。

体には気をつけてください。


リリアーヌ





「ふぅ」


ようやく書き上げた手紙を両親の元へと送り、急いで明日の入学式の準備を始める。

お父様は冒険者でそれなりだったらしく、依頼途中で出会ったお母様と恋に落ちて結婚。

そのお母様、何でも伯爵家の令嬢だったらしく、もめにもめたらしい。

けど、最後はお父様曰く「物理で解決した」とのこと。

よく分からないけれど、今は平穏だからまぁいっか。


でも、私が新入生代表挨拶かぁ。

どう考えても場違い感が凄い。

一体誰ですか?

成績優秀者が代表挨拶すると決めた人は!

ともかく、学園指定の制服はきちんとそろっているから、後はスピーチ内容だけ。

うぅ、なんて言おう・・・

引っ込み思案なところがあるから、地元ではまず人前に立つことが無かったのに。


「うわーん、何も思いつかないよぅ」


しょうが無い。

出たとこ勝負!

きっと本番になったら何か浮かぶでしょう!








そして翌日。


学園の入り口にある門の前に立った私。


「うそ・・・、こんなに大きいの・・・?」


思わずつぶやいて立ち止まってしまった。

ふと周りを見渡すと、指定の制服にもかかわらず、生地が違ったりアクセサリーなど付けていたり。

一目で金持ちだ!って分かる人たちばかり。

あれ?

これって、完全に私浮いてるよね・・・?


前々から時折私の頭に浮かんでは消していた思い。

でも、こうして実際の場に立ってみると思い知る。

私みたいな人間が来ては行けない場所だったのだ、と。

現に立ち呆けている私に対して、他の人たちは侮蔑の目を向けることはあっても近づくことは決して無い。

「住んでいる世界が違う」

そういう意味なのだろう。


どんどん私の中の恐怖心が膨らんでくる。

めまいと吐き気も強くなってきた。

逃げたい。

ここから一刻も早く逃げたい。

だめだ、もうここには居られない!


そして限界に達した私が来た道を戻ろうとした、その時、


「おやおや、臭い匂いがすると思えばこんな所に平民が。一体何を考えてこんな所にいるのかしら?」


明らかに高位貴族と分かる令嬢が私に声を掛けてきた。


何を考えているの?

学びに来たのでしょう?

平民というハンデがありながら、こんなところで立ち止まっている暇はあるの?


「え、あ、ああぁ・・・」


周りの貴族への配慮から言葉遣いは厳しいけれど、その言葉に込められた意味は伝わった。

そうだ、私はここで勉強して卒業し、父のような冒険者を支える仕事に就くんだ!


「そうよ、みすぼらしい格好のあ」


「ありがとうござしゅ!」


令嬢が何かを言おうとしていたけれど、勢い余って言ってしまった・・・

でも、この思いはどうしても伝えたい!


「このご恩は忘れません!私、リリアーヌと言います!ありがとうございました!!!」


私は大きくお辞儀をし、そして代表挨拶打ち合わせのために入学式会場へ走って行った。

お母様の件で高位貴族に対しては苦手だったけど、彼女のような人もいるんだ。

そうして勇気をもらった私は、この気持ちを代表挨拶で伝えることを決意した。







そして入学式が始まった。


緊張でガチガチになっているため、壇上で話している学園長の内容はさっぱり入ってこない。

そして学園長が壇から離れた後、近くに居た係の人から移動するよう促された。


そして壇上に立つと。


目の前には高価な衣装に身を包んだ美男美女がこっちを向いています!

その目は「何でこんなやつが???」と訴えてきます!

私も同じ意見です!

なのに、何度辞退しても許してくれなかったんです!


周りの視線に怯えたためか、先ほどまでなりを潜めていた怯えが私の中で再び大きくなってきた。

そ、そうだ、あいさつ、挨拶をしないと!


「は、は、ははははじじじめめめめめままましゅ・・・あぅ」


盛大にかんだ!

かんでしまいました!

周りの視線が一層きつくなりました!

あ、あああ、どうしよう、頭が真っ白になって・・・


「はぁあああああ????」


ふと、先ほどの令嬢の声が聞こえました。

それほど大きな声ではありませんが、門での遣り取りもあったためか私にはよく聞こえました。

そして彼女は私を強い視線で睨み付けてきました。

その目は言っています。

この私が助けてやったのだ、もっと自信を持て、と。

そうだった。

さっき助けてもらったばかりなのに。


彼女の視線とアナウンスのおかげで私はようやく落ち着きました。

少なくとも私は彼らより入学試験の点数は上なのだ。

全くかなわない訳では無いのだ。

そして、かの令嬢のように私たち平民にも気を遣えるような人も居るのだろう。

だから、私は。


「先ほどは失礼いたしました。新入生代表挨拶を務めさせていただきます、リリアーヌと申します。平民と言うことで不快に思う方は多々いらっしゃることと存じます。ですが皆が皆そうでは無い、と言うことを学園の門の前でとある方に教えていただきました。この学園での学びの活動を通じ、少しでも皆様からの印象が変わるよう、精一杯頑張っていきたいと思います。諸先生方、先輩方、そして同期の皆様。どうぞよろしくお願い申し上げます」


あの令嬢のような人が増えるよう、まずは学園内での平民評価を上げるんだ!



本日のヒロインちゃん

お手紙書く→学園の門前でマリアンヌとお友達になる→入学式会場で進行役に挨拶文を書いてもらう


少しでも笑っていただけたら幸いです。

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