雪だるま
雪の深まる冬頃の、寒さでかじかむ手で雪だるまをこしらえて見ればそれはまあなんとも可愛らしいつぶらな目のまるまるとした塊が出来上がりました。などという前述はどうでもいい…どうでもよくもないのですが、これから話しますのは私の友人であるところのY君の話であるのです。
私の友人のY君は美術部2年の同級生。普段からインドアである彼は外に出るのは学校の通学時のほんの5分の徒歩、あとは絵の題材に使うであろう木々花々などの撮影、採集などくらいのものでした。そして、彼は日光に弱い体質から年がら年中長袖でありました。そのため彼の肌は日に晒されることもなく真っ白な、なんと言いましょうかそこらの日焼け止めを塗ったくった女子らとは全く比べ物にならないゆうなれば、海外の有名女優のそれなのです。そして、彼は前述しましたように生粋のインドアであったことも関係してか、ぶくぶくと脂の乗った肉塊を有していました。運動不足、完食の多さも関係していたでしょうね。そんな彼ですから、見た目は想像出来ましょう。まんまるとした雪だるまのようでした。こんな雪の日では彼の肉塊はすっぽりと背景に溶け込んで見えなくなってしまうのです。
そんな彼と私は、同じ美術部であることも関係して、よく遊ぶ仲でした。外で遊んだことは1度もありませんが。ですが、そんな私と彼との遊びでいつもはテレビゲームだの漫画だのを見る流れになるのですが、今日の彼は突然、雪だるまを作りたいなどと言いだしたのです。私は彼の急な提案に少し驚きはしたもののいつもより雪の積もっている今日は彼にとっても好奇心をくすぶるものだったのだろうと思い納得して彼と外に出てみたのでした。なんなら、いつもゲームや漫画だけの彼との遊びに私も少し飽きが来ていたのでいい気分転換になると思ったのです。雪だるまを作るのは何年ぶりだったでしょう。10歳頃に父親と一緒に大きな雪だるまを作ったのが1番新しい記憶でした。あの時は、これ以上ないだろうと思う大きさの雪だるまができていた気がするのですが、それも10歳の話です。今からすれば可愛いサイズのものだったかもしれません。そんなことを考えながら、雪用の手袋を持ってきていなかった私は素手で雪だるまの元になる雪玉をこねていたのですが、するとそこでY君。「違うんだK君。普通の雪だるまじゃなくて特大の雪だるまを作りたいんだ。だから僕を中心に雪をくっつけてってくれないかい?」Y君は、何を言っているのだろうと首を傾げる。もしかすると、雪だるまの元になる雪玉をこねていたために、ちっさな雪だるまを作ると思ったのでしょうか?と、訂正しようとしたところで続けてY君は、ほら僕人より丸いから僕にくっつけていけば大きな雪だるまになるでしょ?と言うのでした。どうやら聞き間違いではないようで、彼は満面の笑みでこちらを覗いてもう雪だるまになりやすいように膝を地面につけて膝立ちの雪だるまになりやすい姿勢をとっていました。私は、戸惑いましたが唯一の友の彼の満面の笑みを見ていると妙に断れない気がして彼の足から少しずつ雪をくっつけていきました。彼の豊満な体は艶やかで張りもあるため、なかなかさらさらで固めるのの難しい雪を受付けてくれないのではないかとおもったのですが、彼の体に思いのほか雪はどんどんと馴染んでいくのでした。それはまあ、女子らの塗る日焼け止めクリームのように彼の体にはどんどんと雪がくっつきみるみる大きな体がさらに大きくなってゆくのでした。私は都度都度彼の体を案じて寒くないかい?痛くないかい?やめてもいいんだよ?などと声をかけていましたがその度に彼は満面の笑みで大丈夫と一言返すだけでした。思えばこんな笑顔は家の中で遊んでる時には、学校で一緒に過ごしている時には彼は1度も見せてはくれなかった気がします。そんなことに苛立ったのか私は少しやけになり雪をつけるスピードあげてやや乱暴に大きな雪だるまを作っていました。そんな調子で首元まで雪をつけていくとそこで久しぶりににっこり笑い続けていた彼が口を開いて、雪だるまには目と鼻と口手もつけておくれよ。と言いました。私はその声が聞こえていたのかいないのかわかりませんがやけになっていたのも五分、10歳の夢中な心に取りつかれていたのも五分で手を止めずそのまま彼の顔まで雪で包み込んでしまったのです。そして、彼の言った通りと言うか雪だるまには無くてはならない目と鼻と口それから手をそこら辺の木の枝なんかを使って作ってみたのでした。するとそこには、自分の背丈と同じくらいの雪だるまが現れました。まんまると大きくつぶらな瞳でにっこりと笑う雪だるま。何故でしょう、自分で作ったのに看取りてしまうような妖美な感覚をその雪だるまに感じたところで私はふと我にかえりました。どうしましょう、そういえばこの雪だるまの中には私の大親友Y君が居たのです。それに気づくやいなやあわてて雪だるまの顔を手で引っ掻き彼の顔を探してみたのですが元々雪のように白い顔は雪に同化して全く見えません。仕方なく私は、彼も少なからずダメージを負うであろう手荒なキックを一蹴り雪だるまにかまして美しいまんまるなそれを壊してしまったのです。ところが、さすがにゆきと肉塊は分離するだろうとゆう算段だった私の目の前に広がる光景はなんとも不思議なものでした。なんと、そこには私の蹴りで散った雪以外に彼のそれと見えるものは何も転がっていなかったのでした。彼の体は雪のように。そういえば、この美しい雪だるまを手で引っ掻く時少しの躊躇をしながら入れた一掻きにかえるの潰れるような音が鳴り響いたのはほんとだったのでしょうか?