俺が求めてたもの
家に帰った母親は自室で服を脱ぐ。
「ああ、やっぱりな」
母さんがシャツを脱ぐと、俺はそのままするりと床に落ちたのだ。
母さんの胸があんな動きをすれば俺が壊れるのも無理はない。
ワイヤーの露出、だらんだらんのゴム、ひん曲がったホック。
ああ、俺死ぬんだな……
少しずつ意識が遠のいて行く。
「母さん、俺、母さんの事守れたかな……」
恐る恐る母さんを見上げる。
母さんは目じりに涙を溜めていた。
怖かったのかな。
そりゃあ、怖かっただろう。
例え何歳になってもあんなふうに無理やり暗い場所に引きずり込まれて怖くないわけがない。
「ありがとう」
母さんは床に落ちた俺を拾い上げ胸に抱く。
その感触が何故かとても懐かしくて、暖かくて、俺は胸が苦しくなった。
当然こんなふうに抱かれるのは幼少の頃以来だろう。
思春期になってからは親に冷たく当たるようになったと自覚しているし、迷惑かけてばかりで何も返せなかった。
やっと恩返しできたよ、母さん。
「さよなら、母さん」
今思えば母さんのブラジャーに転生するのは俺が望んでいた事なのかもしれない。
人を支えられるようになりたかった。
──俺は母さんの胸を支えるという形で願いを叶えた。
人に愛される魅力が欲しかった。
──俺は母さんに愛用され、父さんも営む度に俺を褒めてくれた。
優しく撫でてくれるような環境に生まれたかった。
──俺は父さんの大きな手で何度も撫でられた。
親孝行できるようになりたかった。
──俺は母さんを守ることが出来た。
命懸けで誰かを守りたかった。超能力が欲しかった。
──俺は母さんの胸を操って自分の命を代償に戦うことができた。
温かく包み込んで欲しかった。
──俺は最期の別れを母さんの胸の中で過ごすことができた。
──なんだ、俺の願い全部叶ってたじゃん。
────
「昨日午後7時頃、神〇川県〇〇市の路地裏で男性の変死体が見つかりました。腹部に損傷を受けており、コンクリートの壁にめり込む形で亡くなっており、警察は詳しい死因を調べているとのことです」
へぇ、あの男ってこんなネタみたいな死に方したんだぁ。
たった今俺、岬大智は天から下界を見下ろしている。
「岬大智様。今あなたには2つの選択肢があります」
「1つは転生してもう一度人生をやり直すこと。2つ目はこのまま天国へと旅立つことです」
なるほど。今回もその2つから選べるわけね……
「俺、転生したいです」
志半ばって感じだったしな。
正直まだまだ未練が残っている。
できるならやり直したい。
「わかりました。転生する際の希望などはありますか?」
「はい。俺は母さんのブラジャーに転生します」
ありがとうございました!
大人になって初めてわかる親の偉大さを作品にしました。
つい、深夜テンションで書いてしまった作品なので、明日は朝、自分がどう思うかが怖いですが、続きが読みたいなと思っていただけたら評価の方をして頂けると嬉しいです!
どうか皆様はこんなぼくを鼻で笑ってやってください。
あ、あとTwitter始めます!
@yamadano_taryo
です!お願いします!