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その道具箱に詰めるのは  作者: リア狂
動乱の王国編
21/22

森林探索

一昨日まで休むつもりが、昨日も更新をサボってしまい・・誠に申し訳なかったです。

今日からまた毎日更新に戻していきたいと思います。

あと、今日からしばらくはこっちに集中して、平和な毎日の方は休みたいと思います。

「コザトさん! 今です!」


 ユミナに言われるまでもなく、上体を仰け反らせたグリズリーに向かって縦斬りを入れる。風を纏ったそれは、容易に皮膚を斬り破り、肉を深く裂いた。


「お疲れさまです。やっぱり火力が全然違いますね」

「元々、俺とあなたでやろうとしたのが無理だったんだよー」


 手際よく解体を行い、戦利品を手に入れた俺は、森の奥の方へ目を向ける。

 まだ入ったばかりであるが、ユウトのいた森に匹敵するほどに深そうだった。


「ラカンドの主武器はクロスボウなのか?」

「まあ、剣も使えるけどねー」


 このチャラチャラした男は、戦闘中チクチクと矢で攻撃していた。

 ユミナは、このひ弱な見た目でピュアタンクであり、この男が火力になると見ていたのだが、弓ですらないクロスボウでは、十分なダメージを稼げなさそうだ。

 少しの引っ掛かりを覚えながらも、俺はさらに奥へ進もうと提案した。


 森を歩き始めてどれくらいたっただろうか。鬱蒼としたそこは、太陽の届かないところも多く、正確な時は分からないが、空腹度合いからして昼過ぎくらいだろう。


「そろそろ昼食にしませんか?」

「そうだねー。お腹すいたし」

「用意はあるのか?」

「お弁当買ってきました」


 周囲の警戒をしつつ、簡易拠点を作る。

 と言っても、レジャーシートのような布を中心として、いくらか罠を張る程度だが。


 ユミナの持ってきた弁当は、王都近くによく出没するトカゲ類の肉と、レタスに似た野菜に、濃い口のタレがかかった簡単なものだった。

 この世界の魔法使いは、水魔『クリーン・アップ』のお陰で、軽い食中毒くらいならどうということはないが、俺は魔力が少なすぎるせいでどうということはある。

 袋から取り出した鍋に肉と野菜を放り込み、水魔『クリエイト・ウォーター』のエンチャントがされた、水筒から水を開けて火を入れた。


「何故煮るんです?」

「食中毒対策だ」

「食あたりは大丈夫だと思うけどねー」


 やはり、このパーティーは妙だ。

 弁当をもって冒険に出る場合、冷やして持っていくか、再加熱をするのは冒険者にとって常識だ。

 ユミナはその常識を知らなすぎるし、ラカンドは冗談めかしている割には、本気で食中毒が起こらないことを確信しているようだった。


 一緒に入れた各種香辛料によって、トカゲ肉弁当は、カレーのような物に変身した。

 漂う香りに食欲を刺激され、主食の堅焼きパンを浸しながら食べる。火傷寸前の熱さに最低限冷ましたそれは、適当に作った割には旨く、淡白なトカゲ肉も良い味を出していた。


「それ、なんというんですか?」

「あー、カレーっていう料理だな」

「聞いたことがありませんね。ラカンドはどうですか?」

「俺も聞いたことないねー」

「まあ、そうだよな。俺の故郷の料理なんだ」


 向こうでは、そこそこ料理をしていた・・気がする。

 こっちの食材でどれだけ再現できるかは分からないが、出来合いのカレー以外にも、多少の物は作れるはずだ。


「コザトさんの故郷、少し気になりますね・・」

「王国じゃないよなー。たぶん帝国でもないだろー? じゃあ皇国か聖国なのか?」


 残念ながらそのどこでもないのだが、異世界出身であることを言っても信じてもらえないだろう。下手に怪しまれるよりは、ここは誤魔化すべきだ。


「ま、いいだろ。それよりこれ、食べるか?」

「いいんですか!?」

「・・まあ、今はそれでも良いけど・・俺ももらおうかなー」


 目を輝かせるユミナと、何やら思わせ振りなラカンドの口に、カレーのついたパンをねじ込んだ。


「あふ、あひゅ、あひゅいれす!」

「んー。旨いねー」


 愉快に熱がるユミナを見て、思わず笑みがこぼれる。

 思えば、ルリが意識を取り戻さなくなってから、普通に笑えたのは初めてかもしれない。


「笑わないでください! 私の方が年上ですよね、たぶん!」

「俺は16かな」

「私は17です! やっぱり私の方が上ですね!」

「たった1歳差じゃないか・・」


 だんだんと、この少女が分かってきたかもしれない。

 ムードメーカーの天賦の才能があるユミナによって、俺は次第に警戒を緩めていった。


 ーーーーー


 ひたすらに走り、厄災から逃げる。

 気温が下がってきたと感じたときに、いち早くこうしていればよかったと、後悔の念が頭をよぎるが、後の祭りだ。

 薬用にも使える、旨いキノコの採集場所についた俺たちは、感じた肌寒さを気のせいと論じ、採集を急いでしまった。

 その結果、この様だ。


 森の奥から現れたフロストワイバーンが、凍気のブレスを容赦なく放ってくる。

 当たれば足が止まり、立て続けに死まで繋がってしまうだろう。だからこそ、走る。

 しかし、破局は遠くないうちにやってくる。


「きゃっ!?」

()()()()!」


 元々盾役で、走ることに慣れていなかった彼女は、悪路に足をもつれさせ、敵の前で派手に転がってしまった。

 つられてラカンドが足を止め、ワイバーンに向き合う。


「チッ!」


 さすがに2人を置いてここに残るわけにはいかない。

 2人を守る理由はないが、初依頼でパーティーメンバーが全滅したとなれば、今後の活動に支障が出る。


 仕方なく身を翻し、襲ってくる凍気に向かってロングソードを立てる。

 魔道具の限界まで魔力をつぎ込んで発生させた暴風は、なんとかブレスを散らし、周囲の木々を凍らせるだけに済んだ。

 不思議なことに、眩暈のひとつもなかったが、気にしてはいられない。


「早く体勢を立て直せ! お前の盾に付与をかける!」

「は、はい!」

「ラカンドは数秒アレを抑えてくれ! できるだろ!」

「数秒ならね!」


 もたつきながらも起き上がったユミナの大盾に、風魔『リフレクション』をエンチャントする。

 当然魔力は枯渇し、吐血するが、もはや慣れたものだ。


「ごふっ・・はぁ、これで・・ブレスを反射できる・・」

「コザトさん!?」

「いいから行け! ラカンドが死ぬぞ!」


 色とりどりの光を帯ながら、木々伝いに3次元機動を行っているラカンドは、すでに限界が見え始めている。

 魔術の多重起動による疲労に、防ぎきれないブレスが追加されているのだから、当然だ。


「ハァ!」


 ラカンドが地面に戻ったタイミングに合わせて、ユミナは大盾をかざし、迫り来るブレスを拡散させる。本来の反射はできていないが、直撃を防げるだけで上々だ。


「なんとか・・耐えたよー」

「この盾、すごいです! でも、決定力がないと押しきられますよ!」

「・・ふぅ、分かってる。俺が殺る」


 ()()()に持っていかれなかった魔力を絞り出し、全身の装備に通す。

 直剣は豪風を纏い、レギンスは茜色に輝く。ブーツからは不可視の翼が生え、スケイルメイルは柔軟性を増した。


 そして、剣の豪風で、()()()()()()()()()()

 風に乗った鮮血は宙を舞うことなく、俺の体全体に網目のように広がり、包み込んだ。


「フゥ・・ハァァ!!」


 ユミナがブレスを防いだ隙に、大地を蹴る。

 一陣の風となった俺は、空から見下していた竜種と真正面から向き合った。


「叩き落としてやるよ、トカゲェ!!」

「グワァァ!」


 静かな森に俺とワイバーンの叫びが響き渡り、紅の滴を周囲に撒き散らす。

 風に乗った俺の高速連撃を、奴は頑丈な爪でいなし、反撃の牙を突き立ててくる。

 しかし、所詮は最弱の竜種。

 俺の剣は容易に皮膚を貫き、増幅された身体能力によって、それを深々と突き刺す。

 内側から風が肉を引き裂き、半ば破裂するようにして、フロストワイバーンはその命を散らした。


「まだ足りない! あのお方に血を捧げるのだ!」


 全身から魔力を滾らせ、俺は更に森の奥へと飛翔した。

 呆気にとられるユミナとラカンド、そして池のように流れ出て、その場に溜まったままの、飛竜のものではない大量の血液を残して。

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