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その道具箱に詰めるのは  作者: リア狂
転移編
2/22

目覚め

 青い空を燦燦と照らす太陽、頬に触れる暖かなそよ風、背中に感じる傾いた地面、全身をくすぐる草花。


 間違いなく、俺は生きている。


 さっきの夢は何だったのか、とか、ここはいったいどこなんだ、とか、本当に生きているのか、とか、頭には次々疑問が浮かんでくる。ふと、さっきの夢を思い出し、少し勇気を出してから、


「ここ、どこだよ」


 声を発する。問題なく音は発せられ、耳に届いた。

 さっきのは夢・・でも、寝る前のことが思い出せない。なにしてたんだったかな・・

 起き上がって周囲を確認すると、どうやらここは山の中腹らしい。道理で背中に感じる地面が斜めってるわけだよ。

 服は学校の制服で、下は運動靴。こんな格好で寝るとも思えないし、事故にでもあったのかな?

 その思考に至っても、やはり恐怖や後悔の念は浮かんでこない。それどころか前世?のことの大半を忘れてしまったみたいで、困ったことにほとんど思い出せることはない。


「喉、乾いたな」


 炎天下というほどではないにしろ、日差しを直に浴びるここは割と暑い。とりあえず水を見つけて、喉の渇きを癒し、これからのこととかはそれから考えよう。

 特にアテもなく歩くわけだけれども、幸いそんなに高い山ではなさそうだし、下っていけば何とかなると思う。


 ーーーーー


 少し下っていくと、泉のようなところに出た。やはり行き当たりばったりでも案外なんとかなるものだ。

 とりあえず、手ですくってがぶがぶ行く。腹壊したらどうしようとかも、飲み始めてから思ったが、まあ何とかなると思う。

 水がうまいと感じたのはいつぶりだろうか。記憶がほぼないからわからないが。


 しばらくその泉のそばで思考を巡らせる。

 ここは、遠い異国か異世界かのどちらかじゃないだろうか。ここに来るまでに見た木の中に、明らかに見たことのないものがあった。あまり植物には詳しくないが、昼間から七色に葉っぱを染める木はさすがに日本にはないだろう。

 すると、転生だろうか。

 少しワクワクする。魔法とか、使ってみたい。

 いろいろ考えながら、ボーっとしていると、誰かが泉に近づいてきて、


「おや? こんなところに人がいるなんて・・どうされましたか?」


 話し掛けられた。

 明らかに日本語ではない。でも、意味が分かる。異世界というのは確定的みたいだ。


「あ、ええと・・道に迷ってしまって・・」

「!?」


 意味が分かるから伝わると思って、日本語で話してしまったのだが・・不味かっただろうか。

 少しひやひやしながら、男の人の言葉を待っていると、


「なるほど、日本人ですか。あなたも転生なされたんですか?」

「そうみたいですね・・『も』ということは、あなたも?」

「ええ。ああ、自己紹介がまだでしたね。私はユウト。向こうでの名前は、前川悠人です」


 流暢な日本語が返ってきた。

 どうやら、俺以外にも転生者がいるみたいで、少し安心した。


「俺は、秋田小里って言います。なんか、女っぽい名前ですけど、この通り男です」

「コザトさんですか。よろしくお願いします」

「こちらこそ。わからないことが多いので、いろいろ教えていただけるとありがたいです。」


 右も左もわからないなか、同郷の人がいるのはありがたい。迷惑でなければ、しばらくお世話になりたいと思う。


「立ち話もなんですから、うちに来てください。すぐ近くなので」


 ーーーーー


 ユウトさんの家は、泉から少し歩いたところにあった。森が開けており、ちょっとした広場のような感じだ。


「日本の家と比べれば、粗末なところですが」

「いえ、立派ですね。お一人で作られたんですか?」

「そんなまさか。知り合いの大工に手伝ってもらったんですよ」


 ユウトさんの家は、丸太を組み合わせたロッジのようで、かなりの大きさがあった。


「今、お茶をいれますね」

「ありがとうございます」


 内装も質素ではあるが、一つ一つの家具に手がかかっていることを感じさせる、暖かなものだった。


「なにもわからず、不安だったでしょう。どうぞ、なんでも質問してください。基本的には答えられると思いますよ」


 ユウトさんには申し訳ないけど、これから質問攻めを開始したいと思う。

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