表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その道具箱に詰めるのは  作者: リア狂
転移編
10/22

初依頼

 登録を済ませ、冒険者としてのスタートを切った俺は、次の日から早速依頼を受けに来ていた。


「新人の方ですから、町の中での雑務や、薬草などの採集が主な依頼ですね」


 町の中での仕事と言うと、荷物運びや修理だろうか。用心棒なんかもあるかもしれない。町の中なので、安全だから、ニュービーの俺に薦めているのだろう。

 しかし俺は、薬草採集にすることにした。


「じゃあ、薬草採集で」

「町の外は危険ですが、大丈夫ですか?」

「こう見えても、この街には1人旅で来たので、護身程度はできるつもりです」

「それなら良いのですが、実力を過信してはいけませんよ」

「肝に命じておきます」


 ククル草という植物の葉と、できれば果実を採集する、という依頼を俺は受ける。

 草の特徴はギルドに置かれていた辞典で調べたし、平原に出現する魔物程度なら、俺でも対処できる。

 あわよくば魔石のドロップを狙いつつ、ギルドの依頼をこなすことにした。


 まずは装備を整える。今の俺は、ユウト謹製のロングソードとバックラー以外になにも持っていない。

 さすがに防具は必要だし、適当に持ってきた頭陀袋より、街でしっかりしたリュックでも買いたいものだ。

 街を出る前に、俺は市場へ向かう。

 昨日の宿代は、20リッタ、つまり銀貨2枚だったので、手持ちは残り銀貨13枚だ。

 あまりたくさんは買えないが、最悪リュックさえあればいい。


「いらっしゃい! そこの兄ちゃん、お得な冒険者セット、今なら80リッタだよ! 買ってかないかい!」

「革の胸当てはどうだ! あんたの装備じゃ防御が心もとないぜ! 100リッタだ!」


 市場に入った途端、方々から声が掛かる。

 この街は多くの冒険者が拠点にしているだけあって、こういう店も豊富だ。

 俺は冒険者セットという言葉が気になって、それを売っているおばさんの元へ向かった。


「おばさん、冒険者セットってなんですか?」

「冒険者セットってのはね、近接戦の邪魔にならないくらいのサイズのリュックサックに、ロープだの松明だの、旅に必要なものがぎっしり詰まったお得な商品だよ!」

「いいですね、80リッタですか。買おうかな」

「おう、毎度あり、といいたいところだけど、あんたにはその頭陀袋があるんじゃないのかい?」

「適当に持ってきただけで、そんな大層なものじゃないから変えようと思ってたんですが」


 事実、外装は麻でしっかりしているとは言えないし、大きさも小さめだ。

 だからこの機会に変えようと思っていたのだが。


「悪いことは言わないよ。そいつは大事にした方がいい。ほれ、バラ売りもするから、リュックは買わなくていいだろう?」

「なぜです?」

「職業柄、そういう製品には詳しいんだけどね、それ、魔道具なんじゃないのかい?」

「あー、確かにそうかもしれません」


 ユウトの家にあったものだ。その可能性は高い。


「たぶんだけどね、そのなりでも容量はかなりのもんのはずだよ。気づいてなかったのかい?」

「気づいてませんでした」

「騙されて盗られるんじゃないよ。はい、60リッタだよ」


 俺はおばさんから買ったロープなどを頭陀袋にいれて、市場を後にした。

 たしかに膨れることもなかったし、高い性能の魔道具なのかもしれない。

 優しいおばさんに教えてもらえてよかったと思う。


 ーーーーー


 町の外に出た俺は、ククル草を探すため、近くの丘陵地帯に向かっていた。なんでも、小高い丘の上にククル草は群生するらしい。


 しばらく歩いた俺は、自分の能力不足を実感していた。


「クゥッ! 甘くみていたか!」


 開けた草原であるから、近づいてくる敵など、簡単に見つけられるとたかをくくっていた俺は、狼と猪の中間のような魔物、ボーアの群れに襲われていた。

 1頭1頭は、ウルフと同程度の強さしか持たず、突進しか能のない弱い魔物なのだが、なにかに率いられていると見える。

 奇襲を受けてしまった今回は、十分な脅威だ。


「シッ!」


 横凪ぎの一閃と共に、風の刃を飛ばすが、警戒されていたのか、倒せたのは1頭のみだ。

 初撃で3頭倒したのはいいが、それ以降はずっとこの調子だ。そもそも、奴等の突進と、どこからともなく飛んでくる炎の吐息のせいで、ろくに剣を振る余裕もない。


「このボーアの群れ、ヘルハウンドに率いられているのか?しかし・・」


 本来ヘルハウンドは、遺跡に生息する魔物だ。こんな草原に出てくるはずがないが、炎の吐息を使える、かつ草むらに隠れられるくらいの大きさとなると、ヘルハウンドか、あとは精霊以外にはない。

 このままでは少々危ない。今はなんとか捌けているが、集中力がいつまで持つかわからない。

 ボーアはまだ10匹近く残っているし、このままではジリ貧だ。


「仕方ない。使いたくはなかったが、ここで死ぬよりはマシだ!」


 決意を固めた俺は、機を待つ。

 こちらに休む間も与えず、絶えず突っ込んでくるボーアを捌きつつ、牽制に風の刃を放つ。

 数十秒そんな攻防が続いて、炎の吐息が来た。


「来た! 『迫り来る仇を跳ね返せ、リフレクション』!」


 俺はそれに合わせて、風魔術の1つ、リフレクションを唱える。俺程度の魔力では、これ単体の効果は限定的だが、ユウトのバックラーが合わされば、実力以上の効果を発揮する。


 魔道具たるバックラーの補助を受けたリフレクションによって、炎の吐息は見事反射され、ボーアを悉く焼き付くす。残念ながらヘルハウンドには炎耐性があるが、吐息に隠れるように同時に放った、風の刃が無事切り裂いた。


 ヘルハウンドとボーアの群れを倒した俺は、魔力枯渇によって、その場に倒れ伏した。


「はぁ、はぁ、危なかった・・」


 体を猛烈な喪失感と倦怠感が襲い、意識を手放しそうになる。しかし俺も、この感覚には慣れてきた。クリエイトウォーターに失敗したあとも、懲りずに魔術行使を繰り返していたからだ。

 なんとか体を動かし、その場から離れる。素材はもったいないが、肉目当てに集まってくる魔物たちに襲われれば、今の俺はひとたまりもない。


 初めての依頼は、なんとも先行き不安な展開となっていた。

戦闘シーンが下手くそです。

なにかアドバイスください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ