第23話
人間を魔族が襲っていた時代なんてのは、数千年前から崩壊し始めていたらしい。
そして、それを決定的にしたのが、ユフィエルの父である、グレアデル………本名を錦戸 花羽だった。
元々異世界人だったグレアデルは、人間サイドの差別や圧政に嫌気がさしてこちらに来たと言う。
「つまり………」
俺と寧々は、あまりに衝撃的な事実に、思わず息を呑んだ。
だんだん、俺の中の異世界転生が崩れていく。
異世界に行って、モンスターや魔族と戦って、人間を救う筈が、今やその人間が敵である。
しかも、俺の嫌いな不必要な差別主義者。
「むみゅ、きゅうあ」(訳 今や魔性というのは、人間を指す言葉となっているのだ。禍々しい悪の根源己が種としていた以前の魔族と同じ。いまはこちらが悪なのだ)
「そんな………!!」
「………」(訳………)
どうしてこうなった。
このままではダメだ。
向こうには慎之介がいる、クラスの連中もいる。
何としても戦わせてはいけない。
「みゅみゅ、みぃい」(訳 さらに、弱小化した魔王軍には大した戦力がない………みな、魔族奴隷になされしまっているのだ)
魔王軍は、かなり危機に陥っていた。