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道具持ちの冒険  作者: であぼろ
ほんへ
6/21

その1-2 プロローグ 下

旅の始まりから3年後ーー


海を越え、山を越え、極地から灼熱まで様々な地を巡った。それは充実したものであったし、いつしか彼はかけがえの無い存在になっていった。今まで助けられてばかりというのもあるが...


そして、当初定めた目的通り、かの魔王の居城まで辿り着き、追い詰める。奴の実体は霧散し、小さなコアが剥き出しになった。


叩けば砕ける弱々しい姿。あと一撃で全てが終わる状況には流石に武器を持つ手も震えた。


「うっ..⁉︎」


しかし、その時タローの様子が可笑しくなった。頭が痛いのか、抱え出したのだ。奴の攻撃かと睨んだが、俺とシオンには影響が無い。とうとう呻き出したので、大丈夫かと駆け寄ると、彼は俺の手を払いのけ、


魔王のコアを握った。


これが何を意味するのかはわからないが、


もしかしたら奴を有利にさせる行動ではないかと思えて仕方が無かった。


「...!」


何故こんな事を、などと考えているうちに、俺とシオンの足元には、「転移」の魔法陣が浮かび上がっていた。


「...ごめん」


これが最後に聞いた彼の言葉だった。




ーーーー




そして、訳の分からぬまま、最初の拠点である、「カーム」の街まで戻されてしまった。


予想だにしないタローの行動に、現実を頭で受け入れられなかった。しかし、街路の真ん中でうなだれてる訳にはいかず、取り敢えず二人は酒場に向かい、気分を落ち着かせる事にした。



両開きの扉を開けると、いつも通りの雰囲気だった。様々なテーブルでのジョッキとジョークが行き交う様を懐かしむが、そんな気分では無く、声のなるべく届かない端の席を指差し、着いた。


「ここも久しぶりだな...」

「そうですね」


元々は魔王討伐の祝賀会として、協力者等もここへと呼びつけ、タローも含めて面白おかしく騒ぐ予定だったのだが、それはもう少し先の話になるだろう。



「そんな事よりもです。アルスはこの後どうするつもりですか?」

「...そうだな」


重要なのはこれからの事だが、俺達はこれまでの冒険で希少なアイテムや使うに困らない程のカネを稼いできた。些細な下心から始まったものであるが、おこぼれは大量に貰ってきたので、これ以上、タローに付き合う道理は無いのかもしれない。


だからこそだ。


「もう一度、魔王城に行く」


「...正気ですか?」

「ああ、勿論正気よ」


即答すると、彼女はくすくすと笑った。


「ボクも一緒ですね」


「ならば話は早いが...」


かの居城は最上級モンスターが集う第二の地獄。大陸一番の冒険者でさえも泣いて逃げ出すレベルだ。俺達以外に入った奴は一切聞いた事ないけど。


勿論俺とシオンではまともに相手出来る奴などほぼいない。

これはただの自殺行為だ。しかし...


彼に何かあった以上、黙って突っ立ってられない。同じパーティメンバーとして助けなければならない。


これは他の奴には任せられないし、魔王城クラスを相手出来る奴なんて、大抵は一癖二癖あるので、カネだけで転んでくれるとは到底思えない。


だがこちらとてやられるつもりは無い。持ち得る資産を使い、カバンの中身を揃え、ダンジョン内を駆け回る。それに城内は一度見ているので、最短ルートを組む事が出来る。


「最悪の場合、アレが使えるからな」

「出来る限り使いたく無いですけど...」


よくある、ダンジョン内から自宅に転移出来る便利な呪文を彼女が覚えているのだが、使うとスッーー


「アルス」


するとシオンは冷静且つ凄い剣幕で睨みつけてきた。これ以上述べればブン殴られそうなので、説明は以上だ。ちなみにタローは、デメリット無しの転移魔法を覚えているので、今まではこれが日の目を見る事は無かった。


ようやく一杯のエールを飲み干すと、そろそろだともう一方のシオンが飲み終えるのを待つ事にした。


それを察してか彼女も急いでジョッキを傾けた。やがて空にすると、容器と代金を残して酒場を後にした。


「まずは買い物だな...」






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