魔法少女でイイノ? 外伝3 対魔導少女皐文
対魔導少女皐文
夏のある日僕達は公園で遊んでいた。珠樹は4時ぐらいに、
「お母さんとおやつ作るからまたね! 明日、学校に持っていくから」
と手を振りながら帰っていった。僕、皐文と代美は残念だったけど、でもその後も、
「もうちょっと遊ぼうか」
「うん~、そうだね~。珠樹ちゃんには悪いけどもうちょっとだけ遊ぼ~」
残って遊ぶことになった。
「君たちはなにして遊んでるの? 私も入れて」
と声が聞こえ振り向くと僕たちと同年代ぐらいの子が声をかけて来ていた。
「うん、いいよ! 今キャッチボール中だから、じゃあ僕からえ~っと?」
「神成、紀光 神成です」
「よろしくね、僕は日向 皐文だよ。皐文でいいよ!」
「あたしは~伊佐 代美だよ。代美ってよんで~」
「よろしく」
と神成は軽く頭を下げた。それに習い僕たちも頭を下げ、
「よろしくね!」
「よろしく~」
「で、代美が僕に投げるから、僕は神成に投げる、その後神成は代美に投げるんだ。いい?」
「分かった」
「じゃあいくよ~」
代美が投げる。いつも通りの剛速球、結構痛いんだよね……。
「だから代美のボール速いって! なんでそんなに速いんだよ!」
「え~これでも10分の1だよ~?」
「「え?」」
流石に僕も今の発言にはおどろきを隠せなかった。10分の1なんだ……。
「じゃあ次行くよ。そういえばこの辺で見ないけどどこの家なんだい?」
そう言いつつ僕はボールを神成に投げる。すごくやんわりと投げたつもりだったが、グローブに当たって地面に落ちた。
「私はあそこに見えるお屋敷に住んでるの。家からなかなか出れないから……だから今日はすごく楽しい」
「え?」
何この子閉じ込められているのかな? 代美も多分僕と同じ顔してるや。僕は考えるのをやめ、
「次、私投げるね、ところで代美さんはなんでそんなに怪力なの?」
と神成は代美に聞きつつ、ボールをふんわりと投げる。代美はうまくキャッチ、できず、落としてしまい、ぽてぽてと追いかける。代美はキャッチ苦手なんだよね。やっと追いつきそこから僕に向かって投げてきた。またもや剛速球。
「あたし~? 修行してるからかな~」
だから速いって! 手が痛いよ!
「修行?」
「うん、あたしのお父さんは神主なんだ~。でなんだか知らないけど立派な巫女になるために修行しなさいって」
「成る程?」
そこで、僕は何か気配を感じ、黙って公園の前を見る。そこには黒服の大人の人が二人立っていた。何事だろう? そう考えたが、こっちを見ると一人がいきなり走ってきて神成に詰め寄り捕まえようとする。そしてもう一人は代美の腕をつかもうとした。しかし代美は咄嗟に回避し、ジャンプ、首筋にチョップしその男を倒してしまった。もう一人の方は胸もとから銃を取り出したが、僕はボールを投げ、顔面デッドボール。気絶した。
「ねえ何これ! ちょっと代美どいう事だろう?」
「え~っと正当防衛したってことしか分からいよ~」
「じゃあ、神成はなんで捕まりかけたの?」
「家に帰らされるところだった。私はあそこに帰りたくない」
「じゃ、じゃあ逃げないと、警察……は家出じゃダメだよね、ど、どうすれば?」
「とりあえず神社まで行くよ~」
と三人で走り出した。けど代美も神成も遅い! 特に、知っていたけど、代美はとても遅い! もっと隠れて向かうべきだった。そう悩んだ時には、黒服に見つかり、包囲されていた。
「どうする? どうする!」
「どうもしようがない、しょうがないから家に帰る。また遊ぼう。遊べたらね」
そう涙を流しながら言うと黒服の人たちに神成は交渉を開始してその後に僕たちは解放され、逃がされた。
長い夜の始まり
家に帰ってもあの子のことばっかり考えていると、おばあちゃんが来て、
「何、悩んでるんや?」
「今日友達になった子が家が嫌だって言ってて、どうすればよかったのかな? って悩んでいたんだ」
「どこの家の子やの?」
「あそこにある大きな屋敷」
「ああ、時々子供の悲鳴が聴こえてくるとこやね。けどあんたにはどうしようもないやろ? 悩むだけ損やで。っとまでは言いたないけど、あんたに出来る範囲で悩みや」
「けど! もう会えないような言い方してたよ……。あと閉じ込められているかのような言い方もしてた! だから何とかしてあげたいんだけど、どうすれば……」
「……わかったわ。じゃああれ渡そうか」
何だろう? おばあちゃんが、僕を地下に連れて行った。そこには一本の鉄っぽい棒があった。
「これ触ってみ?」
「うん」
僕が触ると、それは形を変えて忍び刀になった。
「ありゃりゃ、なんかちゃう結果になってしもうたな。これはな、力抜き棒と言って触ったら力抜けて、少し落ち着くんや。落ち着いてもらおうと思ったんやけどなぁ」
驚くことに、僕はその刀の使い方を何故か頭の中に入ってきて、
「モードチェンジ、コンパクト」
と言って、小さい刀のアクセサリーに変えた。
「おお、これは凄いな。ってどこ行くん?」
「ちょっと代美のところに行ってくるよ」
と返事を聞かずに地下室を飛び出し、自分の部屋で苦無を太もものホルダーに収納し、外にでた。
伊佐家のしきたり
「やっぱりお前は言いだしたら聞かんな、いいよ、お前も私の子だ。ひとつの世界救っておいで!」
とあたし、伊佐代美は言われたの。
「でも、世界は救わないよ~。救うのは友達だよ」
「いや世界だよ。それはその子が見る世界を救うことになるんだよ。一人一人が自分の世界を持つ、それは自身の感知できる世界だ。自身の届く世界だ。その、家から出られない子の世界は今は閉ざされている。それは本来あってはならない。それを代美はその子の世界を広げてあげるために頑張るんだ。解ったね」
「うん! 解らないけど分かったよ~」
「うーん、代美はそういうのは、苦手だよね」
あれ、机の上に置いているスマホが何度も揺れている。
「電話かな~。出てもいい?」
「ああ、いいよ」
あたしはスマホを操作し、あ皐文ちゃんからだ~、と思いルンルンと電話に出る。
『あ、代美、今代美の家に向かっているんだけど、僕たちであの子を救えないかな? って思って』
「うん、いいよ~一緒に行こう~」
『うん!』
電話が切れた。するとお父さんは、
「一般人を巻き込むのか?」
「え?」
「それは許さんぞ」
「ど、どうして~?」
「当たり前だろ、そんな危険なことに友達を巻き込むな。どうしてその子を巻き込みたい?」
「だって、あたし達があの子を助けてあげたいんだよ~。それに理由なんて要るの~?」
「どうしても、その子を巻き込むのか?」
「そうだよ~。皐文ちゃんも一緒に悔しい思いしたんだもん~」
「ふむ、どうしてもと言うのならこの箱を開けてもらいなさい。わかったかな?」
と1つの箱が渡された。その箱はあたしでも開けられなかった箱だった。私の方が皐文ちゃんより力持ちだ、だから、
「そんなの無理だよ~」
「それならお前だけで行くんだ。解ったかい?」
「ううう、じゃあやってもらうよ~!」
と言うとあたしは箱と弓と矢の入った矢筒を持って門に走っていった。皐文ちゃんには開けれないだろうけど、でも何とかお父さんに認めてもらう策を一緒に考えるために。
箱
「で、この箱なんだね?」
僕皐文は代美に言われて、手に取った箱を見つめて言った。
「うん、そうなんだ~。けどお父さんひどいよ~。あたしもこの箱開けれなかったのに~」
私は箱に手をかける。開かない箱と聞いているから、とりあえず、蓋の固さを調べるために、手をかけて、少し引っ張ってみる。
「あっ」
「え?」
思いのほかすぐ開いてぱかんとしてしまった。代美もぽかんとしている。そこに代美のお父さんが来て、
「開いたか。それを一旦地面においてくれ」
僕はオジサンの言うとおり地面に置いた。すると、中から6色の光が飛び出して、すべて違う方向に飛んでいった。するとオジサンが、
「あれは、属性の精霊といってだな、その属性を持つもののところに現れて手助けをしてくれるそうだ。そしてこの箱にはある一定の人間にしか開けられない魔術が施されているんだ」
「つまり僕は勇者なんだね!」
「? ああ、確かに勇者にしか抜けない剣が出てくるゲームもあったな。まあそういうものだ」
やった! 勇者だ! と私は心の中で喜ぶ。少しして、代美はやっと我に返って、言った。
「じゃあ、神成ちゃん助けに行こうよ!」
「そうだね、行こう!」
僕たちは走り出したそして後ろで、
「な、これ術が解けている? どうしてだ? アレは開けただけでは解けないはず……」
とオジサンが言っていたけど僕たちは無視をして屋敷に向かった。
屋敷に侵入
屋敷の前に来た僕たちは、先ずインターフォンを鳴らす。すると、
『はいどちら様ですか』
と、男性の声が聞こえて来たので、
「僕たち、神成ちゃんの友達です。会いに来ました」
と伝える。しかし、
『あの子に友達なんていません。帰って下さい』
と切られてしまった。やっぱりこうなるよね。ってことはどうしても家から出したくないってことだよね? そう考え、僕は、
「やっぱり忍び込むかい? 僕はこういうの得意だよ」
「あたしは苦手だよぅ~」
その言葉に僕はならば、僕一人で乗り込むか、それとも、頑張ってついて来てもらうか、少し悩み、玄関を見る。これ、中から開ければいいんじゃ?
「じゃあ、僕が玄関のカギ開けるから少し待ってて」
「う~ん、いいのかな~?」
と少し気が乗らない様子の代美、しかし僕は、それを無視して入り込めそうな場所を探し始めた。
「けどそれしかなさそうだし~。うん、分かったよ~。皐文ちゃん~お願い~」
「了解だよ。中が騒々しくなったら、弓を構えて待っていてね」
と僕は今見つけた窓に向かって跳び、近くの壁に張り付き、誰もその部屋にいないことを確認して、慎重に窓の鍵があるところを、太もものホルダーにある苦無を出して、音のしないように切り抜く。そしてそこから鍵を開けて、誰もいないことを再度確認して、侵入した。音を立てないように、ドアを開け、玄関のある部屋に向かう。転落防止柵から、下をのぞくと、お昼頃に見かけた黒服の人達が、警備をしている。どうやら、玄関前に代美がいるから、警戒されているのかもしれない。ならば、僕は柱の出っ張りを渡り、玄関に近づく。その途中に花瓶が揺れて、警備している人の上に落ちる。僕は運のいい方だ。ガラポン抽選会は三等賞以上が当たり前、(同じ時に回した人はハズレを引いていたが)ババ抜きはババを引いたら、すぐ次の人に渡る。(基本自分から引いて)僕はポーカーフェイスがうまいわけではないけど……。何かと僕はうまくいくそう思っている。その花瓶はひっくり返り、その人の頭がすっぽり入ってしまった。警備員の黒服の人たちは慌てて頭の花瓶を外そうとしている。その隙に僕は玄関のドアを……、
「おい子供がいるぞ!」
見つかった。けど僕は玄関の扉を開ける。黒服の人たちが迫ってきたが、僕がしゃがみ、
「今だよ!」
と叫ぶと代美が矢を放った。けど、これで人が死んだら……、そう考えている。そうなると代美にすべて責任が乗るのかな? それはダメだ! そう考えて、黒服の人たちを見ると、ほとんどの人は銃を持っている方の腕に矢が刺さっており、あまりの痛さで銃を落としていた。ただ一人を除いて。
「兄貴! 大丈夫ですかい!」
「ああ、大丈夫だ。獲物を落としてないのは島津、お前だけか。それにあの玄関の嬢ちゃん、あれは伊佐の所の嬢ちゃんじゃないか」
「と言うと?」
島津と呼ばれた無傷の男の人は、兄貴と呼ばれた人に刺さった矢を抜いて、止血、ほかの人たちを下がらせながら聞く」
「あいつの娘は弓と霊術の神童と呼ばれているからな」
「え、それだけでこの人数に、矢を全部当てれますかい?」
「解らんが、そういう事ができるから神童なのだろうな」
「もしかして弓があの嬢ちゃんの周りに浮いていたのは幻覚じゃなかったんじゃ……」
「こうなったら、俺も退いて、けがを治すしかねえ、お前が頼りだ、頼んだぞ」
「ヘイ! 兄貴!」
僕たちはそれを見送る。そして、島津と呼ばれた男の人は、左手で持っていた刀を鞘から抜き、
「お前ら! この落とし前どうつけるんじゃ!」
その言葉は僕を怯えさせるには十分だった。怖い、それがその声の感想だ。僕は恐怖で、動きを止めてしまう。そのまま島津は僕に向かって間合いを詰め、斬りかかろうとする。
「皐文ちゃん~動いて~!」
その言葉でやっと体が言う事をきくようになり、何とか左に転がる。やっと恐怖が少しマシになった。
「ありがとう、代美。大丈夫だよ、何とかして見せるよ!」
と返す。僕は立ち上がり、今まで小さくなっていた刀を構える。すると刀は元のサイズに戻り、黒服の男を睨んだ。
「どいて! 僕たちは神成を助けたいだけなんだ!」
「それならなんで、ちゃんと話し合わん!」
「それをあなたが言う?」
「ふん! それもそうだな」
僕より背は40cm以上も高いし、力も僕よりあるだろう。なら……。黒服の男は刀を振り上げ、僕は頭の上に刀を構え、振り下ろされた刀を滑らせるようにいなして、接近する、膝で急所を蹴った。しかし男は動きを止めることはなく、僕を蹴り飛ばした。
「くはっ!」
蹴られたところが痛む。けど立ち上がらないと! そう思い顔を上げるすると、黒服の男も蹲り、その場から動いていなかった。
「皐文ちゃん~大丈夫~?」
僕は何とか体を起き上がらせて、
「イテテ、うん、大丈夫だよ」
「よかったよ~」
と手を差し伸べてくれたのでそれに甘え、引っ張って立たせてもらった。
「おじさん~、あたしの友達に刃を向けて~蹴り飛ばしたってことはどんな目に遭っても文句言えないよね~」
代美がかなり頭にきているようだった。僕は慌てて代美が弓を構えようとしている前に出て、
「代美! 何しようとしてるんだい?」
「このおじさん、やっちゃおうかな~って」
「駄目だよ!」
代美に殺人をさせるわけにはいかない! その一心で止める。
「でもここでやっつけておかないと~、応援呼ばれちゃうよ~」
「だって、人を殺すなんて!」
「お前さん、人を殺す覚悟も無くここに来たのか? なら、今すぐ帰りな!」
と黒服の男も、僕が甘いみたいに言いだした。
「おじさんもなんでここでそんなこと言うんだい? 死にたいの?」
「死ぬのは嫌だが、お前の覚悟が気に食わなくてな。やる覚悟がないと此処の屋敷から友達は救えない。なんせ此処の主は荒くれ者や、傭兵会社から傭兵も雇っている。そんな甘いとお前が殺されるぞ」
「じゃあ~おじさんやっちゃうね~」
「嬢ちゃんは容赦ないな。さすがにそうなると俺は抵抗するがな」
「だから二人とも待ってよ! なんで殺さなきゃいけないんだよ! もっと平和的な解決方法があるだろ!」
「けどね~、皐文ちゃん~。このまま捨て置くと~後で復讐にあったり~、背後を狙われたりするかもよ~」
「それでも、代美が人を殺すよりかは良いよ」
「それなら~……」
「はっはっはっはっはっ、嬢ちゃん、お前は自分の心配より、友達の心配できるほど強いのか?」
「解らないよ。……でも! 僕は友達の心配をしたいんだ」
「成程な、ならば俺は痛みも引いてきたから、逃げさしてもらうか」
その言葉と共に男は立ち上がり、此方に背中を向けて階段に向かって歩き出した。代美が弓を構えるが、僕が前に出たことによって弓を下し、僕たちは屋敷の奥に、さっきの男と違う扉、一階の大きい扉に向かって歩き出した。
傭兵召喚
「くっ、突破されたか。ならば、防衛の人員を追加するか。おい、メイド。金額は安めで、良い傭兵を雇え、今すぐ来れるものだけだ! くそ! 何故今日に限って侵入者が来るんだ!」
博士は眼鏡に映る玄関ホールの映像を見ながらも、機械を弄るのをやめないで、私に命令する。私としてはお嬢様を逃がしたい。だが殺されたくはない。そう考え、
「仰せのままに博士」
と返事をして、パソコンの前に立ち、操作を開始する。稀に使う傭兵会社のページに行き、即配置可能で検索すると、すぐにいい傭兵を発見。しかし、敵が魔術師のみであることと書いているが、あの二人はあの幼さでここに乗り込んでくることを考えると、おそらく魔術師だろう。
「成水詩織……おめでとうございます。この方と契約です」
決定を押して、画面に何か円が出る。その上には離れてくださいと書いているので、何だろう? と疑問を抱きながらも、画面から離れる。すると、画面から光の粉が現れて人の形を成し、それはさっき見た、傭兵、成水詩織になっていた。
「あなたが今回の雇い主ですか?」
「いいえ、あちらの博士です」
「成程、分かりました」
そう言うと、博士の元に行って、
「この度は傭兵派遣サービスをご利用いただきありがとうございます。で、仕事は何でしょうか?」
「お前が傭兵? 子供にしか見えんが……成程、魔術師か。ならば、この画面に映っている小娘を殺してこい」
と私の見ていた、カメラ映像を顎で指示して、しかし、機械からは手を離さずに
「解りました、では道案内を付けていただけませんか?」
「おい、メイド、連れて行け」
「は、はい」
そう返事をして、私はこの子を利用出来たら。と考えながら、彼女の道案内を開始した。
戦い
僕たちはあの怖い人に追いかけられないように焦りながら、片っ端からドアを開けつつ、
「神成! 居るかい?」
と声を上げつつ探して回った。そして最後の部屋に入ると、
「え、皐文に、代美? なんでここに?」
「助けに来たよ! 早く逃げるよ!」
「ありがとう」
僕たちは来た廊下を走って戻る。しかし、
「そこまでです」
最初に黒い服の男と戦った、玄関ホールに出てきた所で、同い年ぐらいの少女に呼び止められた。
「誰だい?」
敵だという事は分かる。そこ子は二階からこちらを見下ろしている。僕は敵意を持って、その少女を睨みつける。すでに槍を構えているからだ。
「あなた達がしている事は、住居不法侵入、誘拐、器物破損などにあたります。ですから、即刻その子の手を離し、この屋敷から立ち去りなさい」
「「「いやだ」」」
「どうしてですか?」
「あたしたちは~神成ちゃんを助けに来たんだよ~」
そこに二階から、白衣を着た男が現れて、
「何故だ。なぜこの父を嫌う……。神成」
「父さん、だが、あんなことをする人を親だとは思えないよ」
「だが、母さんも死んで、どうしようもないのだよ」
と白衣の男性は泣いている。しかし神奈は申し訳なさそうにしているが、それでも意思は変わらず、硬い意志で、
「それは関係ない筈だ。何故なら……」
しかしその先は聞き取れなかった。神成がいきなり動きを止めたからだ。
「おめでとうございます。あなた達はここでストップです」
そんな声が後ろから聞こえてきた。そちらを見ると、4枚、布を持ったメイドが立っていた。それを目で追うと、僕たちの手に巻き付いている。一つは僕に、一つは代美に、一つは神成に最後の一つは、上の階にいる女の子に、何だろう? この布は、そうは思うが、動いてはいけない。そう頭の中に浮かぶ。
「ふん! これだからガキは……。おい、安藤、神成を部屋に、後のガキ二人は殺しておけ。分かったな?」
「……はい」
そう言うと、白衣の男は部屋に帰っていった。追いかけないと! 僕は少し動こうとしたが、肩に手を置かれ、動きを止める。
「で、あなたはどうして止まっていないの」
とメイドさんが僕に目を向ける。やっぱり頭を動かしたのはバレてたか。
「知らない、でもあの男が悪いやつだと分かったよ」
「おめでとうございます。当たりです。が、あなた達にはどうしようもありません。だから、帰りなさい」
「そんな事出来ないよ。僕たちは神成を助けに来たんだ」
「ならば、交渉決裂です。詩織様」
いつの間にか拘束を解かれていた、詩織と呼ばれた少女はこちらをにらみ、
「解りました。では」
そう言って、此方に跳んでくる。僕は代美を引っ張りながら柱の後ろに逃げた。
「ど、どうしたの~皐文ちゃん~。神成ちゃんもいないし~」
「あのおじさんと、後ろにいたメイドさんに、連れていかれたよ」
「え、あたし、どうしてその記憶無いの~?」
代美がおかしなことを言っている。止まっていたけど、記憶もない、どういう事なのかな? でも記憶が無いなら、詩織と呼ばれた女の子も記憶がない? けど、今は、詩織が突撃してきているので、忍び刀を取り出して応戦、刃と刃がぶつかる。しかし止められず、飛ばされた。
「おしゃべりしている暇はありません」
「うううっイタイよ! 三人とも動けないだけじゃなかったんだね。三人共さっきまで動かなかったんだよ。まるで時間が止まってたみたいに」
「成程~? って三人ってあたしと~神成ちゃんと~この人~?」
「そうだよ」
「私もですか。何故でしょう?」
と詩織も攻撃の手が止まっている。何とか説得できないかと思い、
「それに、あの白衣の人悪人だよ! だって……」
「いえ、それは私が決めることです。刀を構えなさい、次こそ切り伏せます」
その言葉と共に槍は消えた。
「なっ、どうしてですか? まだ五分もたってないですし、あなた達は魔術師のはずですよね」
「まじゅつしって何?」
解らないことを言われた。魔術師? って言うと、ゲームとかでよくあるジョブのことかな? 詩織は槍が消えてしまい、困惑しているようだが、それでも拳を構えている。しかし、その手も下して、
「魔術師を知らないのですか? ではあなたと戦う理由はありません、それ以前に契約違反なので私は撤退します」
そしてどこかに電話を掛けだした。内容は聞こえない。何話しているんだろう? それが終わり、空中に端末を消した後に、ってどこに消えたんだろう? あの端末。
「あたしは魔術も知ってるし~、魔術も使えるよ~」
代美? 何言ってるんだい! と言おうとすると、
「ですが、契約は相手が魔術師のみである事なので、そこの子が魔術を知らない子なので、関係なく私は帰らせてもらいます」
「そうだ~、あなたも一緒に神成ちゃんを助けよ~」
本当に代美は何を言い出すんだい?
「いえ、それはあり得ません。何故なら……、っとちょっと待ってください。会社から連絡が」
そう言うと、詩織は端末を取り出し、何かを確認しだした。謎だ。何処から出てきたんだろう? そして、
「新しい依頼が届きました。あなた達の護衛です」
「「へ?」」
「ですから、あなた達の護衛をします。よろしいですか?」
「うん! 歓迎だよ~」
「代美、ちょっと待ってよ! 僕らはこの子に一度殺されかけてるんだよ! なのに……!」
「それでも~今のあたしたちじゃあ勝てないよ~。あの中には魔術師が絶対いるし~、神成ちゃんを助ける戦力の増強だと思って、我慢して~」
確かにそうだけど、でもやっぱり後ろから刺されるんじゃ? と言う懸念もある。でも……、
「そうだね、なら一緒に行こう!」
そう言って、僕たちはさっき来た道を戻りだした。しかし扉を少し過ぎたところで、僕は代美に気になったことを話し出した。
「僕たちの護衛ってことは、僕たちがここにいることを、知っている人に頼まれたってことだよね?」
しかし、代美は首を傾げ、
「どうして~?」
「だって、僕たちはこんな危ない事をしているとは言ってないよ。それに、そんなお金を払える人を知らない。その上詩織がここにいることを知っている人物なんだよね。だから誰かな? と思って」
しかし、代美ちゃんは何か知っていたようで、少し困り顔で、
「えっとね~、あたしの憶測なんだけど~、多分珠樹ちゃんのお兄さんだよ~。あたし~、何でも知っているお兄さんのことが気になって~、一回魔力検査にかけたんだけど~、魔力反応が出なかったんだ~、それどころか奇力も~」
「どういうことだい? まず魔力と奇力ってのは何なんだい?」
「え~っと、体内で魔力に変換される大気中のエネルギーだよ~これが無いと~、奇跡が起きないんだ~。で、魔力は体内で奇力を元に生成されて~、魔術を使うのに必要なんだ~」
「でも奇跡なんて基本起きないよ?」
「でもね~例えば~、病気にならなかったとか~、交通事故に遭わなかったとかでも、奇力は使うんだ~。つまりそれが感じられないってことは、~何かあるな~っと思って、今度は神力があるか調べたんだけど~神力も無いんだよ~。けど~、お兄さんの体に神力が入り込まないから~、魔力に近しいものを持っていて~、それで~、色んな所に監視の目を光らせているんじゃないかな~って思うんだ~」
「成程、解らないけど分かったよ」
今の僕には理解出来なさそうだった。
精霊
僕たちは行き詰っていた。布を辿って追って来ていたが、壁に挟まっているのだ。そしてそこには妖精? がいた。
「やっぱりいたわね」
僕たちは武器を構える。しかし、彼女は焦ったように、
「私はあなた達の敵じゃないわ。私は箱に封印されていた妖精、つまり、救世の可能性のあるものによって遣わされた使者。まあ、その箱を開けた人の行方は知れないんだけど私はウィンディーネのウィンデよろしく」
彼女は僕の方を見て言う。だから僕は手を出して握手しようと、
「皐文だよ、こっちは代美、あと詩織よろしくね」
しかし握手はされず、と言うか逃げられた。すごく落ち込むんだけど。代美の方を見る、代美もこっちを見ていて、目をキラキラさせながら、
「皐文ちゃん、すごいよ~! ウィンディーネって言うと~、水の精霊だよ~」
「……ん? という事は、皐文は魔術師なのですか?」
とカード真顔で構える。
「だから違うって! なんでそうなるの?」
「そうね、魔力孔は開いてないわよ」
その言葉に詩織はカードを収めた。しかし
「では何故精霊が付くのですか?」
「それはね、可能性の話なのよ。この子は水に関する才能があるからね。そして、皐文に近づいて気が付いたのだけど、魔力遮断者よ。下手したら……いいえ何でもないわ」
「成程、魔力遮断者、魔力で作られた物に触れると、分解できる者なのですね。理解しました。で、この先に行く方法はありませんか? この布を頼りに来たのですが、ここで途切れていて、どこに行ったのか分からないのです」
僕は才能があるのか、嬉しいな! にやけていると、壁に違和感を感じた。ここ、本当に壁紙の継ぎ目なのかな?
「ねえこれ、隠し扉なのかな?」
と僕は声に出す。すると、ウィンデは、
「目がいいわね。その通りよ。ただし、この隠し扉は魔力によって、強固に閉じられている。つまり、皐文、貴女の手で開ける必要があるわ」
「分かったよ、やってみる」
先ず奥に押す。すると、扉は奥にへこみ、次に、持ってきた、忍び刀を刺し、こじ開けた。すると扉は横にスライドし、下に向かう階段が現れた。
「行きましょう」
詩織の掛け声に皆頷き、階段を下って行った。
メイドの願い
階段を降りていると、布がそこで終わっていた。というより、先ほどのメイドがいた。
「あのメイドの布に絡まれれてから、皆止まってたんだ」
「つまり~、時間系の能力を使うのかな~?」
「多分そうだと思うよ、布を絡ませてきてたから多分間接的にでも触れたらいいんだと思う。だから布に当たらなきゃ多分大丈夫じゃないかな?」
布をひらひらとこちらに向かい飛ばしてくる。しかし端はちゃんと持っているので、おそらく、触れば僕たちの動きが止まるだろう。けど僕は、忍び刀を振った。しかし僕は止まる事のなく布を斬り続けられた。
「やっぱり、皐文ちゃんは魔力遮断できるんだね~」
「ここは貴女にお任せします。私達は先に進みましょう」
「ってちょっとお待ちください。何故詩織様がそちら側に?」
「会社からの命令です」
「っ! 分かりましたでは、私を連れて行ってください。あの子を! 神成様を救いたいのです!」
「へ?」
「え~?」
「……はい?」
僕たちはキョトンとした。そして、
「君は、この家のメイドだよね? それなのになぜ僕たちにそれを言うの? 君なら神成を助けられたんじゃ……」
「不可能でした。私達が意見すると、博士に、実験台にされたからです、とりあえず歩きながら話しましょう」
その言葉と共にメイドさんは階段を降り始めた。僕たちは少し戸惑いながら、それでも進まないと神成ちゃんを助けられないから、進む。
「博士の研究は、人間と機械の融合です。その融合に相性の良い、神成様を今日融合させるつもりなのです」
「それってサイボーグみたいなものなのかな?」
「いいえ、詳しくは知りませんが、脳と機械をつなげ、意思を消したうえで、機械として扱う。そんな感じだと思います」
とメイドさんは言う。機械が主体になるのかな? それって、死んでいるのと同じじゃないかな。僕はそう考えていると、代美も詩織も同じ気持ちらしく、二人とも気まずそうな顔をしていた。二人ともその顔からすぐ戻り、
「成程、では、早くたどり着かなくては!」
と言い速度を上げ階段を下り始めた。僕も速度を上げて進んでいくと、一番先に下に来た。そして、扉を開けて……、
「待ちなさい!」
負傷者
あたしはぽてぽてと階段を下る。そして下が見えてきたところで、
「皐文ちゃん!」
皐文ちゃんが横腹から血を流して倒れていた。そんな! 何とか助けないと! ええっとええっと!
「ううっイタイ!」
丸まっていて動けないようだった。それはそうだ、あの血の量は多すぎて、今にも危ない。何とかしないと! 詩織ちゃんは先に行って、博士を止めているだろう。だからあたしは、
「治療術式!」
そしてあたしと一緒に下りて来ていた、メイドさんは、
「私が彼女の時間を戻します!」
と二人で準備した。しかし、
「消えたよ~!」
「なっ!」
先行していた妖精が戻ってきて、
「この子魔力吸収者ね。早く吸収状態を停止させないとこの子死ぬわよ」
「ど、どうすればいいの~」
あたしはわたわたして、何も考えられなくなる。すると、スマホが鳴り、あたしは藁にも縋る気持ちで画面を見る。相手は珠樹ちゃんのお兄ちゃんだった。あれ? お兄ちゃんにあたしの電話番号教えたっけ~、ってそんな場合じゃないよ~。あたしは慌てて通話開始する。
「お兄さん~! 皐文ちゃんが!」
『ああ、解っている。君たちが死んだら珠樹が悲しむからな。唯一自分の名前を憶えているあの子の為にも、助言させてもらう。皐文ちゃん自体も気づいていないようだが、あの子の持っている、忍び刀には切り替え装置が付いていて、柄の先端、柄頭に切り替え用の出っ張りがあるからそれを押すんだ。そしたら、魔術が通じるようになる」
「わ、分かったよ~」
あたしはそう言って、ボタンを探して、それを押す、そして、
「メイドさん~、お願い~」
「了解しました」
とメイドさんが時間を戻して、傷口塞がったが、
「くっ」
メイドさんが痛そうな顔をして、崩れ落ちた。
「ど、どうしたの~」
「いえ、やはりこの力で回復させると、半分ぐらいが私に反動が来るのですが、とても痛いです。さっきの治癒術式こちらに回せますか?」
「うん、わかったよ~」
と治癒術式を掛ける。その間にも皐文ちゃんは起き上がらない。すると、さっきのウィンデが、切り替えボタン押して、吸収を開始させる。
「ちょっと待って~、妖精って~、魔力生物だから~いま近づいたら~!」
「良いのよ、私はこの子をサポートするために来たのだから、この子、自動で魔力が回復に回った結果、回復が追い付かず、魔力切れを起こしている。そして、魔力吸収者は魔力が少なすぎても、多すぎても死んでしまうわ。先ずこの子が何歳かは知らないけど、魔力吸収者は、15歳までに魔力の貯め過ぎで、死ぬのが普通なのよ。そして今は、魔力切れで死んでしまうわ。だから、私がこの子を回復させる。あなたは今そこのメイドを回復させるのに大変でしょう。だからさよならよ」
「……分かったよ~」
あたしは妖精さんの言葉を理解し、でも納得はしないまま、彼女の行動を黙認した。そして、あたしは回復に専念した。
戦闘と復活
「機械兵共行け! 行け!!」
私はその機械兵たちをすべて撃破していった。しかしそうしているうちにも、作業が進んでいく。しかし、あの三人に力は借りられない。皐文が倒れているから、二人で治療しているのだろう。そう考え、少しずつ進んでいく。
「ありがとう! 二人とも」
と声が後ろから聞こえ、皐文が跳躍し、私の前に現れた。
「ごめん! 怪我しちゃった! でももう大丈夫だよ」
「ええ、無事で何よりです」
私がそう短く返すと、その会話を聞いていたようで、博士が、
「くそ! 増員だ! おい、お前らもだ」
「へいへい」
「わかった」
「よいしょっと」
と、黒い男達が現れた。
「さっきの人達だね……」
と皐文が言っているので、どうやら、先ほど戦ったようだ。しかしそうなると、
「私は機械兵をやります。あなたはあの黒い人たちを相手してください」
「へ?」
新しい力
新しい力が僕の中にあるのが解る。僕は忍び刀の柄の先、柄頭を僕が倒れているときに代美がやっていた通り押す。そして先ほどの黒服たちに向かって手をかざし、波をイメージする。すると、目の前に何処からともなく、水が溢れだし、それが波となり、彼らを奥へと飛ばした。
「これが……魔法? でもなんで?」
しかし悩んでいる暇はない。その力で出来るだけ黒服たちが近づかないようにする。しかし詩織の方も機械兵たちを撃破するのが精一杯のようで、どちらも神成に近づけない。どうすれば……、
「皐文ちゃん~、黒服たちはあたしに任せて~」
「へ、でも……」
「いいから~」
天秤にもかけられない。代美に任せれば、黒服たちが何人かは死ぬだろう。けど僕が神成を助けれる。しかし逆の場合は失われる命は神成だけだ。けど友達だ。どうすれば……。
「はっはっはっはっ、これで機械に愛される能力、機械の姫が、機械を支配する機械の女王へと昇華された! すべての機械が、いや、人間すら従うメインコンピューターの完成だ! まずはここにいる僕以外の人間の息の根を止めろ!」
『体内機械へのアクセスを開始します。進行度5%』
何が起きているのか解らなかった。ただ、絶望的なことに、もう手遅れだという事は分かってしまった。
「おい! 紀光博士! 話が違うじゃねえか! 俺たちもろとも殺す気か!」
「……」
博士は何も答えない。
「これって~多分、あたし達の体に埋め込まれている機械も操れるってこと~? それじゃあアレ、壊さないと~!」
「そうですね、医療上、会話上、娯楽、防犯の為などに、体の中には少ないですが、機械が埋め込まれています。中には脳につながっている物もあるそうです。それらが暴走すると、脳を焼き切ったり、破壊することは可能でしょう」
そんな言葉を聞きながら、僕はやっと自体が解る。
「と、とりあえず、博士を倒せばいいんだね!」
と博士に突撃しようと走り出す。
「機械兵、僕を守れ!」
その命令に従い、機械兵たちが立ちはだかるように、博士の壁になった。しかし、
「おい! 黒服、お前たちもだ!」
と黒服たちに、博士が声を荒げる。
「島津」
「ええ兄貴」
「お前ら! あの嬢ちゃんたちを全力で守れ!」
「なっ! なぜ裏切る! 報酬は前払いで渡したはずだぞ……、そうか、ならば機械の女王、黒服たちを例外に……」
「そんなことはどうでもいいんだ。お前さんのやっていることが、気に喰わなくなっただけだからな!」
黒服のオジサンたちと、機械兵がぶつかる、そこに詩織が、
「私と代美が道を作ります。ですので、あなたは速攻で、あの博士をどうにかしてください」
「わかった」
僕は博士に向かって走る。僕に向かってくる敵はすべて、代美の矢と、詩織の何処から出したか解らない(恐らく持っていたカードの力だろう)が、持っている火縄銃の弾によって、破壊された。そして、博士の前に立つと僕は、
「神成を元に戻して!」
「無理な相談だ、脳だけ取り出して、後はもう廃棄した。というのもあるが、意識も封印して、もうあの子はすでに機械なんだ」
僕の体を怒りが支配した。迷わずに首を狙い斬り落とす。しかし、機械兵たちは、止まる事なく、進行度も、
『90%』
と進んでいる。
「ど、どうしよう」
僕は我に返る。パソコンの操作方法は分かるが、どう停止させればいいのか解らない。
「皐文、電源ボタンを長押しか、線を切断しなさい。脳が入っているからと言って電源ボタンが無いわけがありません」
「う、うん」
それっぽいボタンを見つけ、長押しする。頼む止まって!
機械兵たちが動かなくなる。そして進行度の表示が消え、アナウンスも消えた。僕は腰を抜かし、
「何とかなったのかな……?」
「ええ、その様ですね。お疲れ様です」
「けど、神成ちゃん、救えなかったね~」
僕と代美は顔を暗くする。せっかく助けに来たのに、僕たちはどうすれば神成を助けられたのだろう。思わず地面を殴りつける。
「なんで僕はこんなにも無力なんだ!」
思わず涙する。何故助けられなかったんだ。そんな風に自分を責めてしまう。詩織も言葉を発さない。代美が泣いている声がする。
数分後
何とか僕たちは周りを見れるようになり、黒服のオジサンたちも、ボロボロながら全員生きているようで、倒れている人を治療していたりする。僕はやっと立ち上がり、パソコンの電源を入れようと近寄ると、
「何をするつもりですか? 皐文」
「え、電源入れたら、もしかすると、神成を助けれるかなと思ったんだけど」
「それはダメですね。私としてはこのまま電源を落としたままの方が望ましいですね」
「なんで! 僕たちは神成を助けに来たんだよ! それをあきらめるわけにはいかないよ!」
「ですが、あなたはこのパソコンが安全だと言えますか? さっき進行中のアプリケーションがまた動き出さないとも限りません。また、勝手に動き出す可能性もある。ですから」
「でも何とかしたんだよ……」
「諦めてください」
「……でも!」
僕が一歩前に出て、虚勢を張るが、詩織はいつの間にか持っていた槍の先、穂が僕の首に当てられる。
「私の目が光っているうちはその様なことはさせません。解りなさい」
「……うん」
僕はとぼとぼと階段に向かって歩き出した。そこにいたメイドさんも、
「私も助けたかったのですが、もう如何しようもありません。神成様の事はお忘れください」
と言われた。僕は一人で階段を一歩一歩を重く上がっていった。
契約
「そう言えば、あなたは此処に仕えていたのでしたね。どうします? この後の働き口は見つかりそうですか?」
「……分かりません。ですが、何とかお金を稼がないと、弟たちを食べさせられません」
「なら、私と一緒に来ませんか?」
「……良いんですか? 私何の役にも立ちませんよ」
「いいえ、私は気に入ったのです。それにあなたには時間操作の能力はとても強い。だから一緒に来てほしい。そう思っているのです」
「なら、一緒に参りましょう」
「ええ」
そう言いながら私達は階段を上がりだした。、後ろでパソコンを弄っている代美を無視して。
「とりあえず~電源入れるね~」
とあたしは神成に声をかける。もう聞こえてはいないだろう。けど、あたしは声をかける。
「あたしは~学校で習った、タブレットの使い方しかわからないから~、ここまでしか出来ないんだ~ごめんね~」
あたしは、あたしに出来ることはした。そう思っていたが、もう一つある事に気が付いた。だから、やってみる。
「神成ちゃん~答えて~神成ちゃん~」
神成ちゃんの魂を探す。するとやっぱりいた。ただ、
「あれ、神成ちゃん死んで無い~?」
こくりと頷く。なら、自意識の覚醒をさせるために少し魔力を送る。すると機械が自動的に動き出した。それを見てあたしは階段に向かって歩き出した。そして、階段の前で振り返り、
「学校で会おうね~」
と嬉しくなり、手を振った。
学校にて
朝、憂鬱な気分で僕は学校に向かう。助けれなかった。その後悔が僕を蝕んでいた。
「おはよ~。皐文ちゃん~」
「おはよ、皐文ちゃん」
と代美と珠樹が此方に来る。
「皐文ちゃん、どうしたの?」
「ううん、何でもないよ」
僕は気丈に振舞う。代美も心配そうな顔でこちらを見ている。
「なんかお兄ちゃんが、皐文ちゃんに伝言で、心配するなって言っといてって。なんなんだろう?」
僕は何が心配するなだよ! って怒りそうになるのを必死に我慢して、世間話を開始する。
「そう言えば、昨日、どんな配信やってたんだい? 昨日色々あって生配信見れなかったんだ」
「へ? あ、え~っとね、私が見たのは、『素材必要数集めるまで帰れません。獣タイプキャラ縛り』見てたよ。これ続きものなんだけど、今回で101回目で、今回集めたのは、鎖なんだけどね」
「それ帰ってるよね! 帰れませんなのに!」
「だよね」
三人で笑いだす。そんな会話をしていると学校に着いた。少し、気が晴れてきて、チャイムが鳴る前のおしゃべりをしようとしたら、先生が入ってきた。
「ごめんねー、ちょっと前倒しで朝礼するわよ。いきなりの転校生でね、じゃあ皆席についてー」
登校時間は確かに終わっていて、少しの休憩時間の間だったので、皆ブーブーいいながら席に着く。そして、
「席に着いたね、じゃあ転校生を紹介するわよ、入ってきて」
入ってきたのは神成っぽい人物だった。だけど、彼女は死んだはず、僕達が救えずに。そう考えていると、
「……紀光神奈です。昨日この町に来ました。その際に道に迷って、皐文、代美に助けてもらいました。好きなことはパソコン弄りです。よろしく」
神成だ……本当に神成だ! そう感じた僕は自然と涙が出てきて、けど、涙をぬぐい、にこりと笑い、
「よろしくね!」
と席から立ち、皆に少しびっくりされたが、そんな事気にもならなかった。名前が神奈になった理由は、あの父親との決別の為らしい。だから、僕たちも神奈と呼ぶことにした。
この後から僕は、我が家の忍術を学んでいく。もう悲しい目に合わないために。
これで、自分の書きたかった外伝も終わりです。ここまで読んで下さりありがとうございました。
後、新作も作っていますのでそちらもよろしくお願いします。多分来週、出来なくても、再来週までには投稿します。




