表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女でイイノ?  作者: 月読雨月
九章 魔法少女でイイノ!!
203/207

魔法少女でイイノ!! 18話 飯野の戦い

飯野の戦い


「此処には居ない。ってことは上だよね? 先に行った神奈ちゃんは大丈夫かな?」

サターンさんのエレベーターから解放された階より上に行く。そこは狭い部屋、そして、周りをよく見渡せる、天守閣だった。他の神奈ちゃんが空中で戦闘している音がする。しかし天守閣内での戦闘音はない。神奈ちゃんが先に上がって行ったはずだが、暗くて姿は見えない。

「来たか。いきなり要塞内部が日本の城になって驚いたが、面白いとも思い、天守閣に登ってしまった。で、君がこの城を出したのかい?」

やっと目が慣れてきた。月を見て、此方を見ないで正座して手を合わせている男は、そう訊いてきた。神奈ちゃんがいない。私は闇のサモンエッグを使い、刀を召喚して、構えながら、

「違うよ。これは私の仲間がやってくれたんだ。仲間が切り開いてくれた道なんだ。だから皆の為に、あなたを倒すよ! ところで、ここに来た女の子がもう一人いたと思うのだけど、どこ?」

「ああ、あの機械の少女か、あの子は手足を破壊したのち、まだ動いていたから、そこから投げ捨てた」

「私はあなたを許さない!」

「そうか……なら戦うしかないな。殺されるわけにもいかないしな」

そう言いながら男は立ち上がり、

「僕の名はバーブン。将軍バーブンだ」

「私は飯野珠樹! 魔法少女だよ!」

「君は魔法少女か……魔力はかなりあるが、体外放出魔力量は少しか。君は皆に夢や希望をふりまけたか?」

「そうだね、私は体外魔法も使えないし、皆に夢や希望をふりまけた気もしないけど……でも魔法使う少女、魔法少女だよ。私はあなたを倒す。私利私欲の為に! それでも魔法少女で良いの!」

「そうか、では戦うか!」

と虚空から剣を出した。私は、敵が構えるのを待たずに攻撃を仕掛けた。しかし、

「おおっと、さすがにそれでやられはしない」

と刀と剣がぶつかる。剣に触れずに、浮遊魔法で剣を飛ばして防御された。私は後ろに飛び退き、風のサモンエッグをばらまく。相手はその隙に、七人に増えていた。

「へ? どうなっているの」

「僕は昔から集団戦が得意でね、こんな魔法で、自分を増やし、集団戦に持ち込み、勝ってきた。そして気が付いたら、この地位になっていた。この分身たちは一撃で消えるが、君を倒すのに、分身全員は消えないだろう。さあどうする?」

私は一人に狙いを定め、攻撃しようとしたが、私から見て右隣の分身に防がれ、周り四方向を囲まれた。けど、

「今だよ!」

私の掛け声で、天守閣の周りをまわっていた、風鳥達が、一斉に私の周りの分身に体当たり、4人とも消えた。しかし、それを計算していたかのように。前と右から銃を構えている分身がいた。

「くっ!」

左前にとっさに左後ろへと動いたが、前からの弾に当たってしまい、右腕を負傷した。とても痛い! けど、神経系に魔力を回し、痛みを軽減する。

そこに今一番聞きたくない声が聞こえてくる。

「珠樹、悪いが消えてもらう」

お兄ちゃんの声だ。何とか前に走りだす。その間に毒のサモンエッグに薬を付け、蠍を召喚、そして、一か八かで、時のサモンエッグを掲げる。やはり時間が止まる。その隙に、分身に蠍を投げつけ、一体撃破。次を斬ろうという時間で、時が動き出した。

「あと一人か……成程なかなかやるようだね。しかし、飯野くん、来たからには働いてもらうよ」

「ああ、もう少しで、もう一人来る。それまで、自分が珠樹を抑えよう」

そう言って、瞬間移動でもしてきたかのように、目の前に現れたお兄ちゃんが、私の肩に触れる。すると、

「風圧? なんだこれは!」

とお兄ちゃんは一瞬で飛び退いた。そしてお兄ちゃんの後ろにいた分身も消えた。

「おい、バーブン殿、自分ごと斬るつもりだったのか?」

「ああ、隠しきれんから言うが僕は君を信用していないからね」

「……まあいい、それにしても、代美のやつ厄介な呪いをかけてくれたな」

確かにさっきのは矢だった。柱に刺さっているから断定もできる。私は何とか立ち上がり、反撃を考える。そして思いついたが、

「もう無駄です。珠樹、これは取り上げさせていただきます」

「詩織ちゃん! 離して! サモンエッグ返して!」

後ろから詩織ちゃんに地に組み伏せるように捕まり、サモンエッグの入ったウエストポーチを奪われた。そのサモンエッグの入ったウエストポーチはお兄ちゃんに投げ渡された。そして床が光りだす。どうやらもう、魔法陣は完成させていたようだ。なら私のとるべき行動は一つ。

「毒の手、砂の腕、発動」

小声でつぶやく。そして、腕が砂に、手が毒手になり、それは蛇のように、グネグネとバーブンの元へと向かって行く。

「何をする気か知らないが、その手に捕まらなければどうと言う事はない」

 しかし、バーブンは足を使わず、上半身だけで回避しようとした。その手は上半身を狙っていたが急遽足を狙う。当たれば、いや、かすればいい。バーブンに少し当たる。するとバーブンは、苦しみだし、

「ぐあぁあぁあっぁぁあぁ、なんだこれは! 毒? 図ったな飯野!」

と言って溶けるように倒れてしまった。

「珠樹! 今すぐ手を元に戻しなさい!」

「あ、うん」

思わず元に戻す。しかし、その言葉に従う必要がない事を思い出して、もう一度変化させようとしたが、消去の魔法により、

「もう腕が消えちゃったか……。お兄ちゃん」

「なんだ? 遺言ぐらい聞いてやる」

「大嫌い!」

ああ、視界が消えていく。もう私は……。

私達の戦いは終わった。なんの信念もなく、覚悟もなく、ただ振り回されただけの戦いだった。最初は蘇らせたい、その後からは守りたい一心で戦ってきた私だったけど、何も守り通せなかったな。まあ今更言ってもしょうがない。だから私はここで消えるのかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ