魔法少女でイイノ!! 2話 再召喚
再召喚
「間一髪だったな。さて、神奈、代美は再召喚を始めているか?」
とサターンが閉まる寸前のワームホールから飛んできたナイフを、砂の壁で防御しながら私に聞く。周りに人がいないようだ。
確かに二人は何やらウインドウを開いて、何か呪文を唱えている。
「うん、何やら唱えているから大丈夫だと思うよ」
「それもそうだな。そうだ、汝に渡しておくものがある。サモンエッグと、召喚用のスタンガンなどの道具だ」
サモンエッグ各11個(金は9個、時は1個)と、前まで変身した時に持っていた道具たちと似たような物をもらい、
「ありがとう! 私こっちの世界じゃコレがないと戦えないんだ」
「ほう、ならば向こうの世界では、魔術を使えたんだな」
「うん」
「そうなると、やはりその体内魔法しか使えないのはデメリット特性か」
「三人とも~終わったよ~」
そう言う二人の後ろには超弩級戦艦が現れていた。
「……さあ、乗り込め。行く当てもないが、逃げよう」
「いや行く当てならある。沈んでいた大陸だ。あやつのことだから何か隠し玉でも用意しているだろう」
皆が船に乗り込もうとして動き出したが、しかし、神奈ちゃんが動かず少しの沈黙、何かを考えているのかな?
「神奈ちゃん~大丈夫~?」
「……ああ、理解した。沈んでいた大陸に向かう」
皆が乗り込み、すぐに神奈ちゃんの号令が掛かる。それと共に船は動き出した。
「行かせませんよ、行かせたら何をするか分かりませんからね」
『その通りね。今のうちに消去してしまいましょう』
「ああ、行くぞ」
そんな言葉が聞こえてきた次の瞬間、船は真っ二つに割れた。と言うより多分、
「くっ、詩織の一線両断だね。あの技いつの間に手に入れたんだろう? 多分、珠樹と出会ってからだよね」
斬られたのだ、槍の一突きで。急いでジャンプして陸地に跳ぶ、しかしサターンさんが、
「待て! あいつは消去の魔術を使う。それには普通、魔法陣が必要なんだが、あの男、陣無しで発動させているようだ。気を付けろ、接近はするな」
その言葉を聞いた代美ちゃんが、皐文ちゃんを捕まえ、
「じゃあ~、地面に下りなければいいんだよ~。お兄さんは探知できない魔術を使うからね~」
私は空中で戦うことを決め、サターンさんも空中に留まり、
「成程そういう事か。成程、だからひで……いや、ヴィーナスと同じだな」
と何か納得している。私にはわからないが、お兄ちゃんと同じような力を持った人がいることは解った。ってこんなこと気にしている場合じゃない! 私はまだ昼なので、闇のサモンエッグは使えない。なら、船の破片の鉄をサモンエッグで吸収させ、ハンマーを召喚。塊が大きかったため、かなり大きなハンマーが召喚された。私はそれを振り上げ、
「潰すよ!」
思いっきり振り下ろす地面がへこみ、少し割れる。私達はそこに降り立った。
「成程考えたな。これなら自分も魔法陣が発動できないな」
お兄ちゃんに褒められて、少し照れてしまったが、今は戦闘中、すぐ気を取り直し、ハンマーに念じて小さくなってもらった。しかし重さは変わらない。詩織ちゃんも砕けた地面に立ち、
「さあ始めましょうか!」
その掛け声と共に、風が吹き始めた。その風はとても強く、そして、
「……渦巻いているな。詩織を中心にしてな。そう言えば、そんな能力を持っていたな」
石が舞う、砂が舞う。それらが私達に傷をつける。
「さ、皐文ちゃんの元に移動だよ~!」
その代美ちゃんの声と共に皐文ちゃんに近づく。すると風は少し弱く、しかし、
「これどうするんだ?我らも魔法を使えないんだが……」
皆が口を開かない。つまり……、
「考えなしか……」
「そんなこと言わないで~、皆ボロボロになる前に~、避難できたんだから~」
「まあ仕方なしか。ならば、我が話し終わった3秒後に、魔力吸収を解除しろ。では、いくぞ!」
一秒、詩織ちゃんがこちらに向かい、歩いてきている。二秒、サターンさんが地面を触り、何かを埋めた。三秒、風が吹き始める。とても痛い! しかしすぐに、土が私達を囲むようにドーム状に形成されていく。
「投げろゴーレム!」
その言葉と共に。私達は浮遊感に襲われる。そのさなか、上方にワームホールが現れて、
「此処から逃げるぞ! 代美、転移の魔法陣の準備をしていてくれ。行先は、魔法と科学技術が最高まで育った世界だ。文様はこれ、我が合図したら書いてくれ」
「解ったよ~」
そのワームホールに皆放りこまれ、出たのは、街中だった。




