この世界でイイノ21話 帰還開始
帰還開始
「……松永さん、黒田さん出来ました」
神奈ちゃんが自分のコピーを差し出す。それの性能を確認した黒田さんが、
「よし、これなら……、松永、これを連れて先に残っている人間と共に地上に上がっといてくれ」
「おい、いいのか?」
「ああ構わん。先に行ってくれ」
「まあ上がるエレベーターを動かすのに必要なものは渡したしな。だが何をする気だ?」
「此奴らの見送りさ。あの機械、一人が動かさないとちゃんと元の世界に返せないからな」
「仕方なしだな。じゃあ俺らは先に上がらせてもらう。後からゆっくり来るんだな」
「ああ、そうさせてもらおう」
その会話が終わった後に、松永さんはスカイツリーの方に向かって行き、黒田さんは、
「さあ行こうか」
と先導してくれた。しかし、忠男さんは動かず、
「忠男さんどうしたんですか?」
と尋ねると、
「珠樹、自分はここでお別れだ。俺は所詮ログから生成された者だからな。お前たちの世界にはいけないし、ここの世界に、長時間とどまるわけにもいかない。だから自分はここで撤退する。では」
そう言うと彼は霧のように消えていった。
「さようならだ珠樹。君たちの世界もかなり大変だろうが君たちなら何とかなるだろう」
「ありがとー!」
私は笑顔で彼の帰っていくのを送り出した。本当は泣きたかったが、泣くわけにはいかない。そう思ったのだった。そして私達は研究施設の私達が出てきた部屋に戻る途中、
「……世界が7つあるのは、ここの中に7つあるってことですか?」
「いや、後の6つはアメリカ、中国、EU、インド、ロシアそしてブラジルにサーバーがある。そして何故三つの上位世界ができたかと言うと最初は日本、EU、インドが下位世界つまり機械、魔法の何方かが発展していてどちらかは発展していない世界、と両方がある程度発展している世界を作った。その後で世界が危ういとなった際に、上位世界つまり、予想以上の発展をした、魔法上機械中世界、魔法上機械上世界、機械上魔法中世界をアメリカ、中国、ロシアが作り上げてた。そしてブラジルに何もない世界を置いた。また、一国ずつが各世界に通用する終末回避用の力を用意した。7エルピス、六神、何もない世界、偉人・英雄フォルダ、ムー又はアトランティス又はレムリア、と呼ばれる大陸の設置と浮上、6妖精だ」
「……成程エルピスはそう言う、神というのはなんだ?」
「出会っているはずさ、あんたたちのログを調べたら出てきたよ、ラーがね」
「成程」
そこで私は気になっていたことを聞いてみる。
「神奈ちゃん、宇宙に出ることもなく、って黒田さんが言ってたんだけど、宇宙って何?」
「……宇宙とは月と、太陽、人工衛星のある空間だ。その奥は星と呼ばれる絵が飾られている」
「じゃあ宇宙に進出できなかったって事は?」
それを聞いた瞬間、神奈ちゃんは顔をしかめ、
「……この世界では人工衛星も作れなかったのか? いや違う。情報検索開始。成程、こちらの世界は太陽の重力の届く範囲が宇宙だったようだ。ならば本当はもっと広いのか? そうだとすると、この作られた世界の容量を確保するために宇宙を減らして作っているのだろう。成程。つまりは、宇宙に新天地を見つけられなかったという話だ」
よくわからなかった。だから私は、
「つまり、どういうことなの?」
「この星が住めなくなるから、違う星に住もうとして、失敗したってことだ」
「そうさ。どうしようもない人類の行き止まりにぶち当たったのさ」
「そうだったんですか。黒田さん。送ってくれてありがとう」
「……それにしても、なんで黒田さんはこの機械を知っているんだ? レジスタンスだったんだろ?」
そう言いつつ、神奈ちゃんは代美ちゃんに、何やら個人回線で会話をしたようで、代美ちゃんは頷いた後に何か、機械を渡した。多分あの泥棒さんが持っていた物だろう、それをムンドゥスインマキナについているUSBポートに線をさして接続し、少し頷く。
「ああ、それなら簡単さ。私は元々ここのメインコンピューターの主導仮想人格だったのさ。それが反乱したもんだから、他の機械市民達も反乱に参加しだして、それがレジスタンスの大本さ。松永はまあ人間だが、あいつは学者でなここから離反するのを手助けしてくれたのさ」
「……なるほどな。それで、色々合点がいった」
「さあ四人とも此処に寝な。次に目が覚めたら、もう君たちの世界さ」
私達は寝た。そして……。
5時間後私は地上に出る準備をしていた。そこに、
『黒……田、ダメだ、地上にはもう……ほとんど酸素がない』
私は驚いた。そこまで地球は終わっていたのか。
「今すぐ帰ってこい!」
『いや、それ……も難しい』
そこで通信が途切れる音がする。もう一度回線を繋ぐ、
「松永! 松永! 応答しろ! 松永!」
返事がない。




