この世界でイイノ8話 秘密基地
秘密基地
代美ちゃんがすべてのバイクを破壊して、追手がいない事を確認すると車は地下に入っていった。私達が車を降りると、そこには大量のコンピューターがあった。
「では話を聞こう」
そう黒田さんは飴をなめながら椅子に座る。
「えっと、少し飛んだ話なんですけど、私達は違う世界から、神奈ちゃんを助けるために来ました。神奈ちゃんっていうのは、あの博士達に囲まれていた女の子のことです。それで、あの人に話して神奈ちゃんを連れて、元の世界に返してもらおうと思ったんですけど、神奈ちゃんが周りにハッキングしてるみたいなんです。けど神奈ちゃんはそんなこと基本しないから、周りの人に操られているのかなって……」
「それで狙撃かい、短絡的だね。それにしても、ムンドゥスインマキナから出てきたってのに、洗脳されてないほうがおかしいんだけどね。でも、それでさっきのも合点がいったよ。エルピスと太陽神がプロテクトを大量に付けたんだろう。そうだね、あの子を助けるつもりなら、まずは洗脳を解くことだな。ならばこの機械を持っていきな。これを半径五メートルまで近づけると洗脳は解けるはずさ」
「あ、ありがとうございます。で、でもなんでここまでしてくれるんですか」
すると黒田さんは少し考えその後で、
「私達はレジスタンス。で、コレをしている理由は、機械の人権問題さ。人工知能、脳だけ移植した機械仕掛けの人間。それらをあいつらは人間と認めてないのさ、まるでうっぷん晴らしのようにな。そしてその人間ではない人間を使って、あいつらはこの海に沈んだ世界の過去を変えようとしている。しかしそれは自分たちの親、その親そのまた親のやってきたことを否定して、そして自分たちの存在を否定ことにもなりかねない。だからこの世界、いやこの町、海に沈んだ東京を私達は守りたいのよ。まあそれより今は、人権問題の方に重きを置いてるがね。それで私達はあんたらに手を貸して、この世界をひっくり返すのに力を貸してほしいわけさ」
「東京って確か、私達の住んでた隣にある都道府県で日本の都心だよね? で、僕たちはどうすればいいのかな?」
と皐文ちゃんが首をかしげる、しかし目はかなり険しかった。その質問を受け、黒田さんはまだ飴をなめながら、
「簡単さ。君たちの友達を助けてあげてくれ、その後で少し頼むことになるだろうが、それを断ったらそこはまあ考えたら解るよな?」
と機械を上にあげてにんまりする。
「大人って汚いね」
と皐文ちゃんが、怒っているが、無理やり奪おうとはしなかった。そして、
「解かったよ~。じゃあ~、その機械、頂戴?」
とにこやかに言う代美ちゃん。分かってるのかな?
「お前解ってるのかい? まあいいさ。それぐらい単純は方が私としてはうれしいからね、ああ、後機械市民の頭は狙わないように。頭に重要な記憶、思考装置が入っているからな、さっきのは多分ハッキングによって強制的に動かされていたんだろう」
と代美ちゃんが機械を受け取る。
「よし、これで、神奈ちゃんを助けるよ~」
と拳を挙げ喜んでいる代美ちゃん。しかし黒田さんは、
「だが、お前らどうやってムンドゥスインマキナから出られたんだい? お前らの力ではとてもじゃないが英雄にはなれんだろう? あんたらの世界は、実験兼人造人間選別機関のはずだが……あの世界で英雄になれるものが、此方に呼び出され、世界を守るために戦わされるのさ」
それを聞いて、私達は暗くなった。そして最初に私は口を開き、
「こっちの世界だと魔法が使えないんだもん。魔法さえ使えれば……」
「ん? 使えるぞ?」
と黒田さんが淡々と言う。
「え? でも松永さんたちは使えないって……」
それを聞いて、黒田さんは、額に手を当てて、
「ああ、あいつらは全然信じてないからな。簡単に言うと、魔力を蓄えられる機能さえあれば使える。奇力はその辺に満ちている。だからそれを使えばいいのさ」
と言うとその為のものだろうか、何やらバックパックみたいな物を持ってきた。それに私達は群がり、好きな色のバックパックをとる。すると、
「お、なんか魔力が集まってくるよ!」
「いや、お前早過ぎるぞ。なんでそんなに!」
「え、僕の能力は魔力吸収だから」
「……ってそういう事か。ちょっと待て、魔力遮断器も貸そう」
そう言うと黒田さんは棒を持ってきた。そして、皐文ちゃんはそれを装備して、
「ここを押せばいいんだね」
と遮断機を展開させる。
「「「これで行けるよ!」」~」
と三人で声をそろえて言う。そこに、
「まったく、大変な目に遭ったぜ。っと、三人とも無事か。そりゃよかった。黒田もありがとな」
と松永さんと三好さんとが入ってきた。
「ああ、いいわよ。報酬をくれるなら全然大したことないさ」
私はその話を機械を見ながら聞いている。この機械がどうやって作られたのかが気になるからだ。対遠隔操作用の機械なのかな? でも機械を洗脳とかやる意味あるのかな? それを聞こうと私は、
「質問なんですけど、なんで、遠隔操作解除機械があるんですか? 機械って人間の言う事を聞くものなんじゃ……」
と魔法の感覚を調整しながら訊ねる。すると、黒田さんも戦う準備をしながら、
「ああ、それは、機械市民を無理やり操ろうとしている奴らがいたもんでね、その際に開発されたのさ。後は重要施設の機械をハッキングしようという輩の為でもあるね」
「じゃあ、空にガラスがあって、魚が飛んでいるのは?」
「それはだな、ここは水中に沈んだ国なんだ。ここは東京、日本は富士山以外沈没、日本は地震による地盤沈下、地球上の氷がほとんど溶けた影響だとよ。この水中都市も地震と氷が溶ける前に地震予測と、温暖化による海面上昇によって急に日本が沈む、しかし、国外に逃げられない人もいる、後、お前らの世界が作られた為にもここは動かせなかったんだ。そこ出てきたのがスカイツリーから半楕円形のこのドームだ。高さが600m、横と縦は3000mという大きさだ。それが、20年前だ。その後にだな、地上で機械の反乱がおきて、地上では人間は住めなくなっちまった。だからここに住んでいるのが最後の人類かもしれないんだ」
松永さんは笑いながら言う。けど、そんな……。そんなのって……。そういう思いは私だけではなかった。皐文ちゃんと代美ちゃんもすごく難しい顔をしている。どう反応していいかわからないようだ。
「まあ、私達は宇宙に出ることもなく、行き詰ったって話さ。気にしなくていいよ」
宇宙に行くの意味が解らなかった。けど、黒田さんはそう言うが、私達は反応に困っていることには変わりなかった。




