第06話 「1万円」を払う人は誰か
自分の何かに「1万円」を払う人はいるのか。
女子高生なら、まあイロイロとあるのかも知れないが、
容貌がいたって普通である男子高校生ケンタには
性的な意味で価値はなさそうである。
「1万円」稼がせてくれそうな人リストを見ながら、どうすればいいか考えてみる。
金持ちそうな予備校の友人にモノを売ることを考えた。
・・・ダメだ、自分の持ってそうなものは全部、相手が持っている。
モノを売る方向はありえない。
人の紹介、例えば女子の紹介はどうか。
無理だ。相手の方がモテる。
進学校に美人がいないとは言わないが、県立高校よりも私立高校の女子の方がお洒落に映る。
そもそも女子の紹介でお金がもらえるとしたら、よほどの美人を紹介しなければならない。
そして庶民の自分には、そんな知り合いはいない。
予備校の金持ちそうな先生から「1万円」稼がせてもらう方法はないか。
テストの採点とか、こっそり補助をするのはいいかもしれない。
ただ、授業の補助は専門の事務の人がいるし、採点業務は大学生のアルバイトがやっていると聞いたことがある。
高校生の自分が食い込むことは難しいかもしれない。
小さな予備校なら融通は効いたかもしれないが、大きな予備校では難しく見える。
それにプライバシーや個人情報が厳しく言われているとTVでも言っている。
自分のような高校生に、仕事を回すのはためらいがあるだろう。
庶民で高校生であるということは、こんなに無力なのか。
大人しく勉強してようかな、とケンタはまた哀しくなった。
ケンタはそこそこ賢いが、頭でっかちなので失敗イメージが先走り過ぎるのが玉に傷なところがある。