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第28話 「1万円」を稼いだよ
「はい、1万円。ご苦労さま。」
年賀ハガキの仕事を終えたケンタは、母から1万円を受け取った。
かかった時間は土曜日と日曜日を合わせて12時間を超えた。
時給に直すと800円強。
バイトとして考えると、割の良いものではなかったかもしれない。
しかしケンタは、たった2日間の仕事で多くのことを学べた気がした。
仕事を作った。スキルで稼いだ。お客が満足した。
そして、たくさんの失敗をした。
要領の良かったケンタは、これほど多くの失敗をしたことがなかったし、
失敗から学んで成長の実感を得たこともなかった。
小さいけれども、これが仕事か、とケンタは思った。
とにかく、仕事は終わった。
冬期講習の準備もある。
でかける準備をしながらケンタは考える。
この1万円を何に使うかな。
課金ガチャや外食に使うのは嫌だな。
何か、将来のためになることに使いたい。
しごく自然に考えた自分は、少し変わったのかもしれない。
ケンタは、稼いだ1万円を、封筒に入れて机の引き出しの奥に
そっとしまい込むと、予備校に行くことにした。