第24話 「1万円」の仕事の質2
ケンタは、120件の出来上がったリストを印刷した。
紙に印刷することで、画面では気が付かなかったミスが見つかるかもしれないからだ。
結局、もう2件のミスを見つけた。
父の分の住所録は印刷を含めてチェックが終わったので、途中報告に行くことにした。
合わせて、最終チェックをしてもらうつもりだ。
テストが終わったら先生に採点してもらうのと同じだ。
仕事も、お客に採点してもらう必要がある。
ケンタは仕事を分けて考えるようにしていた。
ケンタは200人分の年賀状作成を依頼されたのではなく、
120人分の父の住所入力と、80人分の母の住所入力、それに1つの図柄を作成すること、200人分の住所を印刷すること、200人分の図柄を印刷することの計5つの仕事として考えたのだ。
つまり5教科のテストだ。1教科終えるごとに採点してもらった方が、そのあとの対策もしやすい。テストを出題する先生には癖がある。その癖を掴むことがテストで高得点をとるコツだ。
仕事も、おそらく似たような傾向があるだろう、とケンタは考えていた。
結局、父に確認してもらった120人分のデータにはミスがなく
父からは「よし。」と短い言葉で褒めてもらった。
高校受験に受かって以来、なかったことだ。
小さな成功だが、ケンタにはささやかな自信が生まれていた。