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第22話 「1万円」の仕事をはじめてみたら
ケンタは仕事を始めようとして、初手からつまずいていた。
ハガキ住所の入力をしようとして、自分がキーボード入力に不慣れなことに気が付いたのだ。1人や2人なら問題ないが、100人以上の情報を入力しようと思ったら指がつりそうだ。
普段はスマフォでフリック入力をしていたので気がつかなかった。
つまらないミスだが、効率には大きく響く。
結局、全てをフリック入力することを選んだ。
データはあとでメールで転送してエクセルにコピーすればいい。
名前の漢字変換にも手こずった。変わった名前や旧字体など、普通に入力しただけでは出てこない漢字が多く、作業のストレスになった。
最初の見積もりでは1人あたり1分というところだったが、実際には2分近くかかっている。
1日でやる、と答えなくてよかった。
作業手順の細かな見込み違い、時間の見積もりミス、細かなミスが仕事では積もり積もって大変なことになる。
ケンタは、ものすごく長い数式の足し算をしている気分になった。