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第20話 「1万円」を稼ぐ仕事の時間
仕事にかかる時間を見積もる。
ケンタは模擬試験の回答時間を見積もるのと同じようなものだ、と考えた。
模擬試験でケンタは、効率よく点数を稼ぐために全体を見渡して回答が容易な問題から埋めて行き、残った時間で考えることが必要な問題を解くようにしている。
住所と名前を1人分入力するのにどのくらいかかるのか。
入力に1分、見直しに20秒くらいか。余裕をもって2分ぐらい?
2分を200人分で400分。7時間弱ぐらいか。
それで「1万円」なら、時給は1400円以上になる、凄くいいんじゃないか?
それに7時間なら、1日で終わりそうだ。
ここまで考えて、「作業は2日、頑張れば1日で終わるから大丈夫。」とケンタは父に返答した。
できないことを、できると約束したら、しわ寄せは自分に来る。
ケンタの慎重な回答を聞いて父は考え込んだように見えた。
「ちょと母さんと相談してから決めるよ。変なバイトをするよりはいいかもいしれんな。」
そこまで言って、父は黙った。
ケンタは自室に戻りながら、これまでにない手応えを感じていた。