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第19話 「1万円」を稼ぐ交渉の行方

「今さ、実験をしてるんだ。」とケンタは切り出した。


「実験?」父は興味を引かれたように聞き返した。

ケンタと話すのは、成績や進路のことぐらいで、他の話はあまりしていなかったからだ。


「年賀状の住所入力を、郵便局とか会社にお願いするといくらぐらいかかるかな?」


ケンタは直接に回答せず、話題を切り替えた。

交渉を始めたからには、イニシアティブを握り続けないといけない。

相手の興味を引き、情報を与え、引き出し、ゴールへと誘導し続ける必要がある。


「大体、1万円、2万円ぐらいかなあ。」

家計を預からず会社で大きな金額を扱っている父の金銭感覚は大ざっぱだった。

この際は、それがつけ目になる。

ケンタにとって「1万円」は大きな金額だが、父にとってはそうではない。


「裏の絵も印刷してくれるの?」ケンタは続ける。


「絵も印刷してもらったら2万円以上かかるな。」と父は答えた。


これは明らかなビジネス機会だった。


「さっきの実験だけどさ」とケンタは話を元に戻した。


「今、仕事をつくる実験をしてるんだ。年賀状の住所入力、僕なら1万円でできるよ。」


「実験か・・・。」と父は少し考え込んだように見えた。

確かに職業体験や将来のキャリアプランが、とかお金を子供のうちから稼ぐための教育が、などと世間では言われている。


家族からお金を稼ぐ、という点で少し引っかかる点はあるが住所入力を自分でやるのは面倒だった。


「何なら、裏の絵柄もサービスで作るよ。」とケンタは付け加えた。

悩んでいる相手に追加で情報を与える。

これでうまく行くはずだ。


だが、父親の考えこんでいたポイントは別だった。

「それで、勉強に支障はないのか?」


ケンタは「問題ない」と反射的に答えようとして少し考えた。

200件の住所を入力すると、どのくらい時間がかかるんだろう。


ケンタは、自分が仕事時間の見積もりを全くしていなかったことに気が付いた。

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