第17話 「1万円」を稼ぐための優先度
ケンタは事前調査を、もう少し続けることにした。
ケンタの家には家庭用の大型ノートPCが置いてある。
父が数年前に買った古いものでカラープリンターがついている。
去年は、そのプリンターで絵を印刷して住所は手書きだったのを覚えている。
プリンター近くには白い年賀ハガキが置いてあり、特に絵柄印刷はされていないようだ。
ケンタはなるべく自然に聞こえるように、父に今年の年賀状について聞いてみた。
「130枚ぐらいだな。母さんは80枚ぐらいだから200枚強か。一応250枚買ってある。」
ここまでの質問で、絵柄の印刷の必要があること、枚数が250枚あることは判明した。
あとは住所が必ず手書きでないといけないのか。住所はデータで持っているか。
を聞きだせばいい。
ここでケンタは、母との交渉で得た教訓を元にテクニックを発揮した。
自分で聞き出すのではなく、相手に話させるのだ。
「年賀状、大変だよね。絵柄を考えるのも、住所を書くのも・・・。」
まず、相手に共感する。説得の基本的な技術だ。上から目線に人は敏感だ。
自分で思っていなくても必ず気が付く。
父はケンタに素直に答えた。
「まったくだ。親戚や重要じゃない取引先なんかはなくしたいところだけど、そうもいかんからな。」
父の回答には重要な情報が含まれている、とケンタは理解した。
年賀状の送り先には重要な相手と重要でない相手がいる。
だから重要でない相手なら、住所も印刷で済ませて良いと考えているかもしれない。
ケンタは「1万円」を稼ぐ商機が目前に転がっていることを理解した。
今度こそ、うまくやらなければならない。