第14話 「1万円」を稼げたはずなのに
細かく、見ようによってはセコい家庭内広報活動の結果、
ケンタの母はインターネットへの拒否反応は、ずいぶんと減った。
ように、ケンタには見えた。
機は熟したと見たケンタは、母に化粧品の通販サイトでの購入を持ちかけてみた。
店頭価格3700円のシセイドーの基礎化粧品が、アマゾンでは3240円なのだ。
その差、460円。年間に10本は使用するという話なので4600円の節約になる。
とはいえ、新規に10本購入は怖いので、まずは1本購入することにした。
これまで持っていなかったアカウント開設、クレジットカード登録、送付先の住所選択等の入力を終えて、作戦の成功を確信したケンタ。
この方法で沢山の購入をすれば、差額で1万円を稼ぐのなんてすぐだ、と感じた。
そのケンタに対して、母の一言「ありがと。助かったわあ。」
ケンタはイヤな予感がした。
母はケンタの一連の行動を、母の節約のお手伝いとして捉えている。
決して、ケンタの家計に対する貢献とは見ていない。
慌てて交渉を始めるケンタ。
だが、母から返ってくる返答はつれなかった。
通販が便利そうで安いことはわかった。
でも、手に取れない不安はあるし、自分で注文できないのは不便である。
だから、全てを通販に切り替える気はない、と。
つまり、ケンタの作戦は最後のところで失敗したのだ。
ケンタの、家族だからわかってもらえるだろう、という甘い期待は
家計の苦しさを、おもんばかれと言う家庭の空気に敗れた。
価値を出したからといって金銭に直ちに結びつくとは限らない。
ケンタの得た教訓は苦かった。