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第五話 奈穂の告白

とりあえず場所を変えるために竜二さんはあたしの腕を引いて歩いて行った。

少し歩くとさっきまでとは違い人気のない場所に出た。


「何をでしょうか?」


周りに人がいなくなったことを確認すると、竜二さんはこちらを振り返った。


「え?」


「先程教えたいとおっしゃっていましたよね?」


そうだった。

竜二さんの無表情から、感情を教えてあげたいと思っていたら、つい声に出てたんだった。

あんな公衆の面前で声を上げたりして、何やってるんだろう。


「竜二さん、どうしてなんの感情もなく、女の人につくせるんですか?」


改めて問いかけるには酷く喉が渇いて、掠れたような声しか出せなかった。


「執事ですから。それよりも、どうして奈穂お嬢様はそんなことばかり気になされるのですか?」


竜二さんは心底不思議そうに尋ねた。


「だって!」


竜二さんのやっていることは間違っている。

そんなことをしたって自分が傷つくだけ。

そう言いたかった。

だけど竜二さんの目があまりにも不思議そうで、本当に理解できないようで、何も言えなくなってしまった。


たぶん何を言っても竜二さんには届かない。

何があったのか知りたい。

竜二さんに本当に笑って、誰かを好きになって、そうしてほしいだけなのに。



誰か?


違う。



誰かを好きになってほしいんじゃない。


「だって、あたし竜二さんのこと好きだから! だから、誰にでもあんなことしてほしくないんです!」



自分で言って驚いた。

さっきまでの自分が自分じゃないようで、自分そのものが止まってしまったように固まってしまった。



あたしがあんなことを言うはずがない。



固まって目を見開かせた先では、竜二さんの姿が命一杯に見える。

驚くわけでも、困った顔をするわけでもなく、何かを真剣に考えている。



「奈穂お嬢様、もしややきもちを焼かれているのですか?

そうですね。今までそのようなことを言われたことがないものですから、どのように対応すればいいのかわかりません。

奈穂お嬢様のご命令を聞いてあげたいのですが、そうすれば他のお嬢様のご要望を聞くことができなくなってしまいます。

少し検討させていただけますか? 奈穂お嬢様の満足する答えを見つけてまいります」



あたしは竜二さんが語るのをまだ見開いたままの目でただただぼんやりと見つめていた。

竜二さんが何を言っているのか、何もわからなくて、


頭が働かなくて、竜二さんが去ろうとしていてももう引き止めることもできなかった。




「敵は思った以上に手ごわいな」


誰もいない場所では溜息でさえも大きく聞こえた。

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