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第十七話 もう終わりにしましょう

「あんたバカだろ」

馬鹿だ。

せっかく上手くいきそうだったのに、竜二さんに迷惑かけた。


少しずつ本当の感情を見せてくれた竜二さん。

なのに、それなのに・・・。



竜二さんのベッドで眠れるわけもなく、とはいえ今部屋を出て行ったら竜二さんの怒りを助長させてしまう。


倒されたままの写真立て。

むすっとした女性と嬉しそうな竜二さんが写った写真が入れられている。

今は倒れていて見えないけれど、頭の中に鮮明に残っている。


竜二さんを変えてしまった女性。

今も竜二さんを苦しめ続けている女性。



あたしがどれだけ頑張っても越えることはできない。

やっぱり過去の人には勝てないんだ。



「竜二さん」


「寝てろって言っただろ! 体調悪いくせに笑顔浮かべやがって」


竜二さんはキッチンの椅子にじっと座っていた。

もう執事口調で話すつもりはないらしい。


「すみません。結局あたしは竜二さんの頼み一つ聞くことができなかった。馬鹿ですよね」



「どうして、どうしてそこまでして俺の気を引きたいんだよ!」


竜二さんは勢いよく椅子から立ち上がった。

椅子は反動で音を立てて倒れたけれど、竜二さんはそんなことなど気にかけず、声を荒げた。


こんなにも怒りを露にした竜二さん、初めて見た。


「ほらな、だから言っただろ。感情なんて醜いものなんだよ。

お前だって執事の俺を好きになったんだ。優しく奉仕してくれる男がいいんだろ。

こんなに声を荒げる男なんて、嫌いなんだろ。本当は引けなくなっただけでやめたかったんじゃないのか?

いい機会だったな」


竜二さんのテーブルを掴む手が震えている。




「あたしは、確かに執事の竜二さんしか知らなかった。

その時に竜二さんのことを好きになったのは確かです。

でも、竜二さんが感情を見せてくれるようになってすごく嬉しかったです。

もっと、もっと素直に感情を吐き出してください。

あたしは全部受け止めます」



「バカじゃねえの。もういい。もう飯なんて作ってくれなくていい。もう二度と来るな」


テーブルに手をついていた竜二さんは、ゆっくりと手を離してまっすぐ立った。

身長の高い竜二さんは必然的にあたしを見下ろす形になる。


その目が酷く冷たくて、胸が苦しくなった。



「とりあえずまた倒れられても面倒だから、今日は大人しく寝てろ。俺はソファで寝る」


竜二さんはそう言ってあたしを再び寝室に戻した。


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