村の奥で
「なにか見つかるといいですね……」
少し息を切らしながらついてきているルレスを心配しつつ、先に進んでいる輝夜たち。あのあと考えてみるとルレスを連れていくのは危険だということになったのだが、意外と格闘技が強かった。そのためまあいいかとなり、連れてきたのだ。かなり村に近づいているのは輝夜たちにもわかる。血の臭いが漂ってきているのだから、当然といえば当然だが。そしてすぐに森が開けた。
「……これは、なにかの狩りでも始めようとしていたのでしょうか……」
その服装や辺りに散らばっている武器などを見てルレスが呟く。なにかを祓おうとしているかのような姿の人間もいれば、槍を持ったり、鍬などを持ってなにかを殺そうとしている人間もいる。その「なにか」がこの村の人間を襲ったと断定していいだろう。
「……この中で笑って死んでいた人間がいると言ったね、行ってみよう。」
輝夜とスナイパーの後ろをそろそろとついていく忍び影、レヴィナ、ルレス。なんだかんだ言ってこの三人もこれだけの虐殺を見るのは初めてなのだ、怖い気持ちもあるのだろう。
その死体は、村の一番奥の屋敷のような場所の庭にあった。出掛けるのがかなり遅れただけに、ここについた時には既に月が出ていた。その人間はレヴィナの言った通り安らかな顔をして死んでいた。左肩から右足にかけて傷があり、刃物で斬られたということも間違いなさそうだった。傍にあった鬼ユリはすでに枯れていた。収穫はなしか、と去ろうとしたとき。
「お、お母さん!?」
驚いたような少女の声が耳に響く。
その声に反応したのは、ルレスだった。
「!」
輝夜たちも後ろを振り向いて、声の主を見た。黄色い髪の幼い少女だった。その隣には、紫の髪の幼い少女もいた。二人ともコウモリの翼が生えていたので、教会の時の犯人と結びついた。ルレスが説明する。
「私は、彼女らに親しみをこめて、ということでお母さんと呼ばれていたんです。」
だが明らかにこちらを警戒している様子の二人。その後ろからさらに現れたのは、二人の鬼。鬼といっても人間の世界で美人に入る部類の女だ。その女は額に一本角がついている以外は普通の女性で、もう一人も少女だが、頭の左右に角が生えていた。忍び影たちはその四人を警戒する程度だったが、輝夜は少し辺りを見回す。そして、見つけた。夜に光る、懐中電灯の光を。
「やばいな、そろそろ警察が来る。」
輝夜らしくない少し焦った態度で懐中電灯の光を追う。それは確実にこちらに向かっていた。
「話は後にしよう。私たちは敵じゃない。信じないと思うが警察たちは絶対に敵だ。一度私たちの家に来てくれないかい、レヴィナとルレスに案内させる。私たちは最後に行く、警察たちに顔を知られているから私たちが最後にいったほうがいい。ほら早く。」
一気にまくしたてて木々の間を指す。警察たちの来るだろう方角と輝夜たちの通った道は真反対だった。レヴィナが渋っていた鬼たちを力づくで引っ張る。さすがに鬼なので動くはずもないが、レヴィナの根気に負けたのか、大人しく走っていった。
「はぁ!?何でお前らがいんだよ!?」
「あははーオワター(棒)」
警察たちはまあ50人ほどいたわけで。妖怪たちをいれて80人程度だ。これでは戦っても体力が無駄になるだけだろう。
「いきなさい、私のコウモリたち!」
後ろから誰かの声が聞こえた。次の瞬間。
バサバサバサッ!
ものすごい数のコウモリたちがその場にいた全員の視界を塞いだ。もちろん輝夜たちにも見えるはずがない。
「お姉ちゃん!こっち!」
ぐいっと腕が引っ張られ、輝夜はすべての状況を理解し、腕を引っ張られているその方向に走り出す。森の中でもコウモリたちが渦巻いていて、完全に見えない状態だったが、腕を引っ張っている本人は見えているようだ。そして光が見えた。
パッと森を抜けた先にはレヴィナとルレスが待っていた。うしろを振り向くと、忍び影が二本の角の鬼に、スナイパーが一本の角の鬼に腕を引っ張られて出てきた。輝夜の腕を引っ張っていたのは黄色い髪の少女だった。そして一番最後に一人で紫の髪の少女が出てきた。
「……えーと?」
忍び影が困惑したように尋ねる。するとレヴィナが、「こちらに来るときに、警察たちがちらりと見えたんです。そしたらこの人たちがあの人数相手に三人で戦えるわけがないと戻ると言って聞かなかったんです。だから結局……」
「そのあとコウモリをたくさん集めて大洪水みたいにしたのがお姉さま。私たちの仲間のコウモリたちだから私たちには見えたってわけ。」
「なぜ助けてくれたんだい?」
「お母さんを助けてくれたし、私たちのために戦おうとしてくれたからだよ。」
「そうか、ありがとう。」
姉妹の頭をなでなでした輝夜。ふたりは心なしか気持ち良さそうだ。それを微笑ましそうに見ている二人の鬼。とりあえずその四人を連れて家に帰ることにした。




